「紺屋高尾」についての資料
- カテゴリ:日記
- 2013/11/17 18:08:19
それはまだ、日の本のこの国に、お侍さんが居た時代のこと。
江戸吉原には、皆から「高尾」と呼ばれる太夫がおりました。
太夫とは、遊女の最高の位。そうなるには、容姿の美しさはもちろん、言葉遣いや立ち居振る舞い、聡明で頭が良く、茶道や舞い、香道もこなし、囲碁やなども、客に求められれば相手にならなければなりません。
吉原には多くの遊女がいましたが、彼女たちは皆、小さい頃に身寄りがなかったり、親が貧乏だったなどの理由があって売られてきたのでした。
彼女たちの仕事はひとえに、お金で体を売り、男性の客の相手をすること。
高尾もそれは例外ではなく、いくら江戸の花ともてはやされ、男女ともから尊敬されようと、所詮はとらわれた籠の鳥。自由はありませんでした。
高尾は考えました。いつか、この籠の外へでて、たった一人、恋する男性と生涯を共にしたいと。
同じく江戸、神田の町には、着物を美しい紺色に染めることを仕事とする「紺屋」が多くありました。皆から藍染め川と呼ばれる川には、多くの着物がさらされています。
そんな紺屋の一件で仕事をする若い青年、「久蔵」。彼は、26となった今でも、遊び一つしない真面目一途な男でした。
その久蔵が3日も前から寝込んでしまっている。心配になった親方が訪ねてみると、返ってきた言葉に驚きました。
「お医者様でも、草津の湯でも…」
「恋煩いか!?」
詳しく話を聞くと、友達づきあいで行った吉原の町で、久蔵はそれはそれは美しい花魁に出会ったと知ります。通りを歩く凜とした姿。この世の物とは思えない高尾の美しさにいつしか久蔵は魂を抜かれたかのように見入っていたのでした。
あんな美人と、一度は語り明かしてみたいが、相手はあの太夫。嵌ってしまうと大名の城がひとつ傾くと言われるほど、会うことにすら莫大な金がかかるのです。
唖然とした親方でしたが「このまじめ一徹の男に、面と向かって『駄目だ』というとかえって変になってしまう。ここはひとつ、久蔵の願いをかなえてやろう」と思い直して、「いくら太夫でも売り物買い物だろ? 俺に任せておけば会わせてやる」。
高尾を買う為にはどう少なく見積もっても10両はかかりました。それは、久蔵の年収、3年分でありました。
しかし、それを聞いた久蔵は、僅かな希望を信じて一心不乱に働きました。入ってくるお金も一切無駄遣いはせず、貯金に回しました。
その結果、3年が経つ頃には目標の10両は通り越し、13両近くになっていた。このお金をもって遊びに行けばいい話ですが、何せ相手は最高位。突然乗り込んでいっても会えるわけがありません。そこで、親方の発案でお玉が池の竹内蘭石という医者を案内役に仕立てることにしました。
この先生、腕の方はアヤフヤだが、遊び込んでいる人物。
早速呼んで教えを請うと、予想通りいろいろとアドバイスをしてくれる。
「いくらお金を積んでも、紺屋職人では高尾が相手にしてくれません。そこで、久蔵さんをお大尽(金持ち)に仕立てて、私がその取り巻きということで一芝居打ちましょう。下手なことを口走ると紺屋がバレるから、何を言われても『あいよ、あいよ』で通してください」。
帯や羽織もみな親方にそろえてもらい、すっかりにわか大尽ができあがりました。
無事に吉原に到着し、高尾に会いたいと申し出るとなんと高尾はあいていました。
久蔵が高尾の部屋でドギマギしていると高尾太夫がしずしずと登場。
高尾は煙管で煙草を一服つけると「お大尽、一服のみなんし」。
吉原の決まりとして、初見の客とは枕を交わすことはできません。かえり支度をした久蔵に、高尾はといました。
「お大尽、次はいつお越しくださるのでありんしょう?」
久蔵は答えました。
「ここに来るのに三年、必死になってお金を貯めました。今度といったらまた三年後。その間に、あなたが身請けでもされたら二度と会うことができません。ですから、これが今生の別れです…」。
久蔵は、涙を流したあげく、自分の正体や、今までのいきさつを洗いざらい話してしまいました。
流石は最高位の花魁。高尾の方も、紺染めを毎日繰り返し、薄黒くなった久蔵の指をみて、お大尽でないことは気づいていました。怒られるかと思いきや、高尾はなぜか涙ぐみました。
「源・平・藤・橘の四姓の人と、お金で枕を交わす卑しい身を、三年も思い詰めてくれるとは、なんと情けのある人…」。
「わっち(私)はもうすぐ年季が明け、この吉原のそとに出られるのでありんす。3月15日。そのときには、わっちを女房として迎えておくんなまし。」
久蔵は、それを聞くと、感激で泣き出しました。
お金をそっくり返され、夢うつのまま神田に帰ってきた久蔵は、それから前にも増して物凄いペースで働き出しました。
「来年の三月十五日…あの高尾がお嫁さんにやってくる」、それだけを信じて。
「花魁の言葉なんか信じるな」なんていう仲間の苦言も何のその、執念で働き通していよいよ「来年の三月十五日」…。
漆黒の籠が、久蔵の働く紺屋の前へ止まります。それは、高尾の乗ったかごでした。
久蔵と高尾が親方の夫婦養子になって跡を継ぎ、夫婦そろって何とか店を繁盛させたいと、手拭いの早染め(駄染め)というのを考案しました。その速さと粋な色合いがブームとなり、通称「かめのぞき」と呼ばれるようになった久蔵の店は大繁盛することになりました。
これが、現在の落語「高尾太夫」として語り継がれる実在の人物「五代目高尾太夫」の逸話です。
先代から「高尾」の名を受け継いだ、見た目良し、教養よし、性格良しの彼女。
本来なら、ふさわしい大尽の家に囲われて不自由しない一生を暮らすことが予想される身分のお方なのですが、彼女の嫁ぎ先は一介の職人。
また、身分違いの相手と分かっていても、一途で真面目な努力で高尾をものにした久蔵。
落語では一番好きな作品です。
何がしたいかって?
そりゃ、黒バス辺りでパロ作品を…←





























