椿ちゃん、BL本を隠すのに難儀するの巻
- カテゴリ:自作小説
- 2013/11/28 19:54:14
神去家28代目当主、神去椿は真剣に悩んでいた。
母、父ともに一度に亡くし、紆余曲折あって神去家に養子と迎えられてから早二週間。
最近では、この神去家の広大な屋敷の中を見取り図なしに自分の部屋からトイレまで行けるようになった。
玄関から自分の部屋にまでたどり着けなかった初日からしてみれば絶大な進歩である。
使用人の方々にはとても良くして頂いているし、養父にもあまり会うことは無いが、とても大切にして貰っている事は口に出されなくても良く分かる。
此処は、優しい人が多い場所だ。
養子に入る際、叔母から言われた言葉を思い出す。
「神去家には絶対に養子に行ってはだめ、あそこは憑き物筋の家なの」
結局は、叔母も独り身であるし、経済事情によって私を引き取ることを役所から許可されず、財力、権力共に有り余る神去家に養子に行くことになってしまったのだけれど。
泣きながら私に謝ってくれた叔母にこちらが申し訳ない気持ちになってしまった事を今でも覚えている。
だが、聞かされていた噂や、想像していたよりも遥かに此処はいい場所だった。
憑き物筋がどういう物か良く分からなかったけれど、親類やこの町の人々に対する神去家への視線は確かに冷たい。
古い時代の確執がまだ残っているのだという。
畏怖のような感情を度々向けられるこの家は、過去にいったい何をしたというのだろう。
知ったとしてもそれは昔のこと。
憑き物筋だ、現当主である養父が実は化け物だ、など様々な噂はあるけれどどれもただの噂でしかないだろう。
憑き物筋など田舎社会でのスケープゴートのようなものであるし、養父が化け物であるはずも無い。
あのように優しい人が化け物であるのなら、世の中の人間はいったいなんなのか。
さわさわと梢が触れ合う音が障子を通して聞こえている。
障子を開ければ、紅葉の木が風に揺れているのが見えるかもしれない。
庭に面したこの部屋は、障子を開け放てば素晴らしい景色が見える。
春には桜が、夏には花菖蒲、秋には紅葉、そして冬には椿の花が咲くのだと庭師の方が自慢げに話していたのを聞いた。
障子を開け、庭を少し覗くとやはり紅葉の木が風に揺られていた。
少し前まで目に鮮やかだったはずの紅葉は赤茶けて葉を落とし始めている。
寂しげな光景に尚更心が沈んだ。
しかし、悩んでいる事はその様な家庭事情やら、新しい学校生活のような事ではない。
現状に不満などあるはずもない。
ただ、少し持て余しているものがある。
とある種類の本たちだ。
引越しをする際に数えただけでもおよそ200冊。
いくら薄い本だといえダンボール二個分であった。
普通の本棚にしまえばいいものではない。
見えてはならぬ類の本なのだ。
部屋にある押入れに押し込もうかとも考えたが、結局、寝具と今までの思い出の品やら勉強道具やらなんやらで入りきらなくなってしまった。
生憎この部屋は和室であり、押入れ以外の目立った収納スペースは無いのである。
引っ越す前は男子諸君がこっそりと隠すエロ本よろしくベッドの下に隠していたのだが、布団を敷くようになった今ではそれは望めない。
結局のところダンボールに入れて放置するしか無いのであるが、それはそれでお手伝いさんに見られてしまうというリスクがある。
......はて、どうしようか
神去椿は床に広げたたくさんのBL本を見下ろしながら、大きな大きなため息をついた。
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続きなど無い!!
この後はきっと黒埼さんかなんかに見つかってしまえばいいよ!
大丈夫、東雲様大好きな黒崎さんなら腐男子に目覚めてくれるかもよ!!ちなみに樹乃歌も和室だけどBL本は普通に放置してあるよ!