八ッ橋に名文アリ
- カテゴリ:日記
- 2013/12/06 12:27:43
このほど、父が聖護院八ッ橋をもらってきた。
小さいサイズのを二箱。
中身は、おなじみの薄茶色に抹茶のハーフと、栗餡のものだ。
子どものころは、八ッ橋のニッキの匂いが苦手だった。
シナモンを使っているのに、どうして「ニッキ」と呼ぶのかも不思議でならなかった。
あとで、ニッキは肉桂=つまりシナモンを指すのだと知ったが、ニッキという耳慣れない言葉に、まるで八ッ橋専用のエッセンスか何かだと信じていた。
大人になった今では、八ッ橋の独特な匂いも平気で食べられるようになった。
むしろその香りがあんこと絶妙だと感じるくらいだから、味覚というのは熟練するものである。
塩辛も好物になったし、レバーも食べられるようになった。だんだん好みが親と似てくる。
その事実に苦笑しつつも、もっと年を取ったら、何が好物として残るのか楽しみではある。
さっそく八ッ橋の箱を空けると、中に一枚の紙が入っていた。
どうせ聖護院の由来とか、お菓子へのこだわりとか、そんなものだろうと思って何気なく目を通したら、そこには短い小説がしたためられていた。
八ッ橋に小説とは。
ためしに読んでみた。
するとこれが、おもしろい。
内容は、京都に勉学に来たであろう男子学生が、下宿先の大家などを通じて京都の魅力に触れるものである。
通常と抹茶のハーフでの内容は、主人公の学生が、訪問先の山道で霧にまかれて道に迷うものの、通りがかりの木こりに助けられて、無事に目的地へ着くというもの。
京都といえば、観光名所のある市内を真っ先に思い浮かべるが、大都市であるにもかかわらず、この土地は自然も豊かである。
この話はその自然にスポットを当て、京の四季折々を優しい文章でつづっているのである。
もちろん、菓子の箱に入れるくらいだから、八ッ橋がキーとして登場する。
この青年も、道に迷った時に道端で硬い方の八ッ橋を食べてひと休みしていた。そこへ木こりがやってきて、彼は八ッ橋をおすそわけするのである。
八ッ橋登場までのくだりと演出のさりげなさが、実に心憎い。
一方栗餡のほうは、タイトルからして栗鼠(リス)である。
下宿先へ帰る途中、主人公は通りがかりの道で栗の実が落ちてくるのを見つける。
見上げれば大きな栗の木があり、枝には一匹の栗鼠がいた。
逃げる気配もなく、栗鼠はいくつもの栗を青年へ落としてくる。これは栗鼠の心意気だろうと、おみやげにその毬栗を拾って帰るのである。
玄関先には大家のおばさんがたき火をしていた。青年の持った栗を見て、さっそく焼いて食べようと言う。
でも栗のイガが痛くて、青年にはなかなか剥けない。するとあの栗鼠がやってきて、代わりに剥いてくれたのである。なんというメルヘン。
両方とも、読み終わった後は気持ちがほんわかして、何やら自分も京都へ旅したくなってくる。
これを書いた人はどんな作家なのだろう。興味が湧いて検索してみたが、作者の名前は出て来なかった。
筆致から、おそらく男性と見受けるが、プロ級の腕前なのに名前を出していない。
プロ作家なら、必ず名乗りを上げるであろうと思った。
しかし真のプロなら、きっと匿名を守ったに違いない、とも思うのである。
お土産を買った人や、それを受け取った人が箱を空けて、作品を読んで。そして良い思い出を残せるように。
長年多くの人々をおもてなしをしている、京都人の粋と心づかいを見た気がした。
おぉお~、わざわざ覚えておいてくださったとは。消さないで良かったですw
聖護院間違いなく買ってきてもらえてよかったですね!というか、今もまだ小説が続いているとは驚きました。
案外、隠れて人気なのかもしれません。
なるほど、やはり味で作品のテーマを書いているんですね。四神とは!
私が読んだものは、語り手が男子学生なんですが、店員さんになったのか。それともバイトかな。
時の流れを感じます。
登場した四神って人間じゃないのかな?栗鼠のテーマも、ちょっとあり得ないメルヘンでしたし。
京都は風水都市ですから、四神相応になってるんですよね。ここは有名な話です。昔からお化けや不思議な話に事欠かない場所ですよね。
街の守り神である四神が、ひょいと街に遊びに来てるって、なんか面白いですねぇ^^
ちなみに、四神は男女でしたか?
やっぱり朱雀は女性でしたでしょうか。気になりますww
ねえ、名文でしょう。ちょっと古風だけど嫌味じゃなくて、とても読みやすいんです。
内容もうまくまとまってますし。今までの作品まとめて本にしてくれないかな(笑)
ニッキって不思議な響きですよね。私的には不思議でしたw
なるほどね、シナモンとはね。肉桂をニッキと呼ばわる昔の人のセンスというか、略し方に時代を感じてみたり。
ああ、八ッ橋四神相応はちょっと無理があるのかな^^;
素直に、小豆=朱雀、白あん=白虎ならわかりやすかったですよねぇ。
ニッキが朱雀、栗が白虎って、ちょっと難しいなぞときですねww
お餅の色がそのまま、赤と白ならもっとわかりやすかったかもw
実は先日家族が京都へ行きまして、お土産に「聖護院! 聖護院! 生のほう!」とリクエストしました。
アップされたときに読んでから、ずっと気になっていたんです。これは良いことを教えていただいた、名文八ッ橋わたしも読みたいなぁ、とw
買ってきてくれたのはニッキ、抹茶、栗、黒胡麻の四つの味が詰められたもの。中にはやはりありました。
店の掃除をしていた語り手が見かけた四人は蝶と見紛う色鮮やかさ。ついかれらの話し声に聞き耳を立てていたのが露呈して、申し訳なさに店の品を差し出すんですね。それが八ッ橋。
そのことがきっかけとなって、四人は毎朝語り手の店で待合せ、店主と世間話などしていく仲になるんです。そんな店主と四人を不思議に思った大学生が尋ねると、店主がさらりと四人の正体を告げるというお話でした。
題は『四神』。
……本当に名文でした。八の目が都を見守っているという結びもあったかくて、なんだろう、王道の日本語というのかふわっと書いた雰囲気がありながら心に響きます。現代よりむかしの作家さんが書いた文章みたい。こんな掌編書けたらいいなぁ。
この紙、わたしもとっておきます! 教えてくださってありがとうございました。
ニッキがシナモンだと知ったのはけっこう最近の話で、八ッ橋に使われる何か特別な食材だと思っていた仲間のトゥでした。
ところで抹茶が青龍、黒胡麻が玄武はわかるとして、朱雀と白虎の隠喩先に少し頭を悩ませました。食べながらw
小豆色は赤系統ですし、やはりニッキが朱雀、餡の白い栗が白虎でしょうか。
ニッキ飴はシナモン使用してるんでしょうね。ドロップの白いのは薄荷、つまりミントです。
ミントも子どものときは苦手極まりなかったです。飴だけじゃなくアイスなんぞに混ぜて、甘いのか辛いのか分からない味で。どこがおいしいんだろうと思ってましたw
でも年齢を重ねると、ハッカの爽やかさとチョコレートの甘さが良い相性だなとわかりました。
チョコミントアイス、今では好きです^^
私は、口上めいた食品の説明書き読むの、好きですね。
どれだけこだわって作ったか書いてあって、読めばさらにおいしくなりそうですし。
ハルさんの行きつけのうどん屋さんのレシートにも物語が!(笑)
何気なく捨ててしまうものだから、その前にもう少しもったいながって手元に置いてくれという、店主のこだわりなんでしょうかねw
それだけ、自分の店に愛着あるんでしょうね。チェーン店なら、その主が。
ニッキ飴とドロップスの白いのと、混同してたようです
(笑)
お菓子のなかの小説って、いいですね♬
情緒があります^^
物語があると、お菓子のイメージも広がっていいですな♬
もぐもぐしながら、もぐもぐしてるものの登場する物語を読むなんて、意外とないですもんね♬
そういえば、ハル地方で有名なうどん屋さんのレシート裏(笑)にも、うどんにまつわる物語をかいてありましたよ♬
内容は忘れちゃったけど^^;
結構おもしろかったので、そのうち行ったらちゃんとメモしてきますね♬(笑)
そうなんですよ~。お菓子の説明じゃなくて小説、しかも出来が良いとは。
お菓子の説明も読んでて楽しいですが、小説はなかなか無いですよね。ナイスアイデア。
心優しい人が書いたんだろうなぁ、と勝手に想像しています(笑)
ですねぇ、アップルパイのシナモンは良いアクセントです。上品に仕上がりますよね。
かぼちゃ+ナツメグの組み合わせは、未だにちょっと苦手ですが、食べているうちに気にならなくなります。
でも要らないと思う(笑)
ピーマンは、私は逆に年取ってから苦手になってきました。食べられはするんですが^^;
あの苦味がどうも舌にひっかかって…。うちの親父は小骨のある魚が苦手になったし、味や食べ方も新旧交代するようですねw
八橋……お菓子の由来とかじゃなくって小説とは、ほんっと、粋っすねー!
俺も八橋食べたくなったっすよ^^
出来たら、その小説読みながらのんびりお茶と一緒につまみたいっす。
それにしても、作家が誰なのか気になる…。蒼雪さんがそれだけほめるってことは、かなりの書き手と見た!
苦みとかは味覚が成長しないと美味しさがわからないらしいっすけど、ニッキの匂いも成長しないと分からないもんのひとつかもしれねぇっすね^^
俺はいまだにニッキは得意じゃねぇけど、アップルパイにはやっぱりシナモンがないと美味くねぇ気がします。
ピーマンとかも昔は嫌いだったのに、今は美味しいもんなー。
そこで初めて、彼は自分が鮮やかな紅葉の中を歩いていたことに気がつく。
霧と真っ赤であろう紅葉の景色の対比がなんとも良かったです。まるで人生すら感じさせるよう。
褒めすぎですかね?(笑)
そうなんですよ。あまりにすらすら読めて、わかりやすい話で、しかも読後感も良いという。
すっかり気に入ってしまって、実は2枚とも取って置いてます(笑)
で、書く気力を起こしたいときに読むというw
それくらい上手いんですが、書いた人の名前がどこにも載ってないんです。
プロに頼んで書いてもらったんじゃなく、八ッ橋の社員とか関係者が寄稿したのかとも考えられますが。
短いのにまとまってて、良い作品なんですよ。
ここ数日文章の神が降りてこないようで…今日アップした小説も、このブログも、ぼんやりした頭でうんせうんせと書いていました。文章のリズムがつかめなくて、時々音読しながら書くありさまです。
練習のために書いたブログですが、いろいろ伝わってよかったw
浅田飴、もちろん知ってますよ!
竜拡散と双璧ですが、ヴィックス咳止めドロップも我が家ではセンターを張っていたような。
そうか、あの飴もニッキ使ってるんですね。そういえばそんな香りがしてました。
シナモンは神秘的な味と香りがしますよね。口に入れるとスーとする、それでいてざらっとした芳香の粉がまき散らかされるような…癒しというより、どこか攻撃的な気もしてました。つまり不味かった(笑)
浅田飴にまつわる小鳥遊さんのおじい様との思い出、素敵ですねぇ^^
ああ、私も「子供だから一個だけ」と、あまりたくさんはもらえなかった気がします。
私もいろいろ思い出してしまいました。
咳が止まらなかった時に、焼きねぎをさらしの手拭いにくるんで、のどに巻き付けさせられたこととか。
胸に塗るベポラップ軟膏のハッカくささとか。
風邪を引いたときの思い出は、症状のつらさよりも家族のあたたかさを思い出させてくれますね^^
蒼雪さんの記事の前半部分を読んでいるときには、むしょうに八つ橋が食べたくなり、後半部分を読んでいるときには、京都に行って八つ橋をお土産に買いたくなりました。
箱をあけたときに真っ先に視界に入る栞。
たいていは、宣伝を目的とした文章が書かれているのですが(それでも、活字の羅列をみると読んでしまうクセがw)、ほっとする小説をのせてあるなんて、素敵ですね~。
さらっと読める短さと軽さでありながらも、心にほっとする何かをもたらす。絶妙な文章なんでしょうね^^
「せき・こえ・のどに浅田飴」ってご存知ですか?^^
たしか「クール」と「ニッキ」という味があったと思うのですが、私は子供の頃から、のどが弱くて><
田舎に行くと、祖父が机の引き出しから浅田飴の「ニッキ」を取りだして、かならず一日一個くれていたんです。
幼い私には、ちょっとニガテな匂いだったけれど「おじいちゃんがくれる特別な飴で、のどのお薬なんだ」って思っていました。
ニッキと聞いて思い出すのは、しわしわの祖父の手と浅田飴の丸い缶ですw
大人になってからは、ニッキ=シナモンの香りが大好きです♪
自家製りんごジャムには、いつも隠し味でシナモンを入れていますw