Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


行楽地の夫婦


家族で少し遠くの公園へ花見に行ったときのこと。


駐車場のまわりをかこむ芝生で弁当を広げていると、一台のワンボックスカーが近くに止まった。

乗っていたのは、60代も半ばとみられる年配の夫婦。

どうやら近くに住む人が花を観に来たのだな、と眺めていたら、車から降りたのは奥さんだけで、旦那は運転席から降りてこない。

奥さんは旦那になにか話しかけていたが、やがてあきらめて、車のすぐ前の芝生に小さな敷物を敷くと、ひとりで弁当を広げ始めた。

旦那はといえば、一緒に食べるでもなく、車の中でその様子を眺めるばかり。

いったい何しに来たんだ、この旦那は…と呆れもしたが、なんとなく、この夫婦の気持ちも察せられはした。

奥さんが旦那に頼んで、ここに連れてきてもらったのはあきらかだ。
でも旦那は、この年で妻と並んでピクニックなんぞ行けるかって考えの持ち主なんだろう。
おそらく一緒に買い物に出かけても、ひとりだけ運転席で待っているタイプである。

こういう夫婦はめずらしくない。
でも見かけるたびに、お互い楽しくなさそうで、結婚てなんだろな…と、独り身の私は考えてしまった。

そこで、ふと思い出したことがある。

かなり前の話になるが、道の駅のお土産売り場に立ち寄ったときのこと。
そこは混雑していて、土産のお菓子を積み重ねた通路はせまかった。

初老の夫婦が近くでお菓子を物色していたのだが、この旦那のほうも、仕方なく付き合っているというふぜいであった。

そのとき、奥さんが誤って、積み重ねられていたお菓子の箱に肘が当たってしまい、豪快に箱を床にばらまいてしまったのである。

旦那は恥ずかしかったのだろう。すかさず力いっぱい奥さんの頭を平手でたたき、「バカ!」と言った。
そして、申し訳なさそうに箱を拾い始める彼女の脇で、だまって突っ立っていた。
私は見かねて、箱を拾うのを手伝った。「すみません」と奥さんは小さな声で言った。
私は愛想笑いだけしかできず、何も言葉をかけられなかった。

旦那以上に、そそうをしたこの小柄で優しそうな奥さんは恥ずかしかっただろう。
たくさんの人の前でののしられ、叩かれてしまったんだから。
心底同情し、夫婦のゆくすえが案じられてならなかった。


でも…。
こういった関係にあっても、夫婦の妻のほうというものは、四季折々に楽しみを見出そうとするようである。
たとえ冷え切っていようとも、連れ添っている旦那といっしょに、お祭りや観光を楽しみたいと思っているにちがいない。

旦那は旦那で、昔の男らしく女と歩きたがらず、今さらな~って気持ちなんだろう。
昔のように花や景色に心が動かないせいもあるのか。
それよりも、自分の趣味、たとえばゴルフとか、将棋やパチンコに行きたいのかもしれない。
でも妻のためにサービスもしてやらないと、というがんじがらめの夫の義務により、面白くない顔で付き合っているのだろう。

たとえ夫にいい顔をされなくても連れてきてもらっている妻たちの顔を見ると、なんと女性はいじましい生き物なんだろうと胸を打たれる。
きれいなものを見て、おいしいものを食べたいという気持ちは、決して自分ひとりで楽しむものではなく、誰かと一緒に――もっとも身近な人と分かち合いたい、と願う方々なのである。

世の中の旦那さまたちは、もっと奥さまのこういった気持ちを思いやって、ともにいろんなことを楽しんでいただきたいと、公園の夫婦を見て思った。

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2014/05/06 00:25
ハルさん、コメント感謝です。

ですね、はた目にはどう映ろうと、それがお互いのベストなのかもしれません。
むしろ絵にかいたような夫婦ほどあやしむべきか…いやいや^^;

昔は男が女性を殴ってもあまり問題にされなかったんですよね。今でこそ女性の人権が確立してきてますけども。
あと、旦那が女性をどう扱うかってのも、デートの段階で見えてくるのではとも思いました。
女性はデートだからおしゃれに気を使っているのに、相手の男の方はだらしないジャージ姿とかね、よく見かけるんですよ。そういう男は、結婚しても女性に変な意味で甘えるんじゃないかなぁ。母親代わりだと思ってるのかも。

でも特に一昔前ですと、やっぱり経済的な自立の理由で、あと「女は嫁に行くべきもの」という世間の観念のために、相手を選ぶまもなく嫁いだ方は多いと思います。
それでも、相方を大事にしようという女性、多いような気もします。女性って素敵な生き物ですね^^

旦那に叩かれちゃった奥さんは、ほんとに泣きそうでした。笑ってたけど、こらえていましたね。
旦那が一緒になって助けてくれたら良かったのに。
ハルさんの優しいお心づかい、ありがとうございます^^
でも私の優しさより、やっぱり彼女は旦那から優しくしてもらいたかったですよね(*^_^*)
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2014/05/05 21:58
できれば、お互い笑顔でいられたら、素敵だし、分かりやすいですよね(*^◯^*)
夫婦は2人にしか分からない事も多いと聞きます。
私は、やっぱり価値観は近い方がよいですね♬

世代の違いは理解し難い事もあるけれど、やっぱりやっぱり、2人で生きるのだから、どちらか一方的に我慢とか、つらいです…
私はきっと人前で平手打ちされたら、泣いちゃいます…
蒼雪さんみたいな優しいひとにフォローしてもらって、平手打ちされた女性は、さぞ、嬉しかったんじゃないかと思いますよ(*^◯^*)
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2014/05/03 11:09
♪はなとり♪さん、初めまして。コメント感謝です。

そうですね、古い考え方はなかなか変えられない。
家庭内暴力はあって当然、当時はそれをただす法律もなかったし。
男尊女卑の観念も最近ようやく見直されてきましたが、まだ年配には根強く残っていますよね。

奥さんによる旦那の躾ですか、なるほど。
一昔前の女性は、仕事を持たずに専業主婦になるのが常とされてきたので、結婚してから夫の収入に頼りっぱなしですと、強く言えないようです。
おとなしい方だと、とくに。旦那の顔色をうかがってしまいがちなのでは。
お出かけの申し出だって、彼女たちにしてみたら勇気が要ることだったかもしれませんね。
見合いで結婚してるでしょうし、恋愛による結びつきではなく、一人では生きていけないから経済的なことで結びついた結婚ですと、「夫婦なんてこんなもんだ」と、さした喜びもなく年を重ねてきたのやもしれません。

あくまでこれらは憶測です。
ちなみにソロ弁当の奥さんは、わりとしたたかそうな顔をしてました(笑)
なんにせよ、今おかれている環境の中で、自分なりに楽しみや喜びを見出そうとしている女性の姿はけなげだなと…いとおしく感じた次第です。

とりとめのないコメント、失礼いたしました^^
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2014/05/03 10:55
ざくろさん、コメント感謝です。

ああ、そう言っていただけてこちらも安心しました。
いつも思いやりのあるコメントをくださるざくろさんも優しいですよw

ですねえ、旦那が出かけたくない場所に引っ張り出すには成功…この場合どっちが勝者って考えにしたら、奥さんのほうなんでしょうねw
旦那も単に照れ臭かっただけかもしれないし。

でもお互い楽しんで生きていくほうがいいですよね。
仲のいい夫婦もたくさんいますから、記事のような例は少なくても目立ってしまうんですね。
車の中で待機してる旦那はわりと見かけますけどね^^;

むろん、暴力沙汰は論外ですね。
男はそういうことする率が高いから、ときどき、男女の性差について考えてしまいますよ。
悪は男性が本来持つもので、善なるは女性なのかなとも。戦争や従軍慰安婦、テロ…そういったことするのはみんな男性ですからね…。

それはともかく、うちの両親もわりと仲いいですね。親父はゴルフばっかりだけど、母がどこか行きたいと言えばつきあってるし。
先日も、連休にあまちゃんのロケ地に行きたいと母がねだっていたんですが、連休は人が多いからダメとつっぱねつつも、人が空いたら連れて行くと約束してました(笑)
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2014/05/02 23:16
これからの世代の旦那さんは奥さんの気持ちを思いやるのが当たり前
になるのかもしれませんが、年配の旦那さんはもう無理でしょうね。
「それが当たり前」で「それが正しい」と思いこんで生きてきましたから。
私はそういう光景を見ると必ず何か一言吐き捨てますが。
(荷物くらい持ってやれよ、とか、手伝ってやれよ、とか。)
すべてちゃんと旦那を躾けなかった奥さんが悪いんですけどね。

ブログ広場より失礼しました・・・・

ちなみに暴君の旦那が亡くなっても奥さんは生き生きと暮している
パターンがものすごく多いです。
救われます。

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2014/05/02 10:55
おはよーっす!
蒼雪さんは優しいっすねぇ^^

だいじょぶ、だいじょぶ、女性はしたたかで強いっすから!(まぁ、体格差とか体力差はあるんだから、DVとかする男は、真面目に“死ね”って思うっすけどね^^;)
負けるが勝ち方式なのかもしれないっすよ(^m^)
なんだかんだ言っても、旦那さんが積極的には出かけたくないその場所に引っ張り出すことには成功してるわけっすしw
旦那を亡くした妻より、妻を亡くした旦那の方が、元気がなくなるってのもよく言われることで(^m^)

仲良くするのに越したことはないっすけどねぇ^^ 年取って旦那の方が仕事とか引退したらまた変わってくるのかも。
うちの両親は、父親は若いころやんちゃでいろいろ大変だったっすけど、年取った今は、まぁなんか適当に仲良くしてるっすよ。
ふたりでコスモス見に行ったり藤見に行ったりしてるし♪



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