Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


おかねをひろう


久しぶりにおかねをひろった。

金額は10円。

犬の散歩中に、道端で見つけた。

土にめりこんでいた丸い形をしたものを見て、「あ、これはおかねじゃないか」と思う。

足を止め、少しかがんで確かめる。

10の数字はないか、円を縁取る枠や草飾りはないか。

埋まっていたそれは表側だった。

黒っぽく変色した銅色に刻まれた、平等院鳳凰堂。

間違いない。10円玉だ。

たまに、ゲーセンかパチスロのコインを100円と見間違うこともあるが、今回は正真正銘である。

拾う時、おどおどしてはいけない。
あたかもそれが当然のように手を伸ばし、犬のふんを回収したビニル袋を入れる、散歩バッグにひょいと放り込む。
任務完了。

他人の不幸の拾いものだが、こちらは得したからいいのだ…なんて考えていたら、ふと、こんなセリフが頭に浮かんだ。


おかね、おかね、おかねがそんなにいいの?
与ひょう、あんたは変わってしまった。


…微妙に違うのだが、こんな感じのセリフ。
木下順二作の「夕鶴」の一幕である。

むかし国語か何かの教科書で読んで以来、ずっと頭のすみっこに染みついている。
助けられた鶴の「つう」が、ひらがなで「おかね」と言っているのが哀しかった。

でも拾うとうれしいんだよね、おかねって。
人間だもの。







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