上の日常-昔話を一つ
- カテゴリ:自作小説
- 2015/03/24 20:47:21
語り:カイト
本体のapo-が、俺の存在を認知してから何年か経った頃
こいつは俺に弟となる存在が居た事に気づいたんだ。
そいつの名前はマリア。
俺と同じく、機械をこよなく愛する、が
こいつが本当に愛しているのは魔法技術なんだろう、そうなんだろう。
さて、俺は昔、仮想空間のコットン226(226はサーバー名のようなもの)に住んでいたが、
ここでマリアと二人で、商売をしていた。
マリアが作品を作る事もあったが、もっぱら組み立ては俺で、
デザイン関係と接客をマリアが担当していた。
作品は多岐に渡り、家具、機械、武器… 色々だ。
マリアはこの中では主に機械の設計と組み立てを… 組み立てはたまにやっていた。
デザインセンスはあるほうらしく(←カイトには分からない)、客の要望で
マリアデザインのアクセサリーや家具を頼まれることがあったが、なにぶんこいつはすぐに仕事をしない。ただ、俺も人の事は言えない…。
仕事はやりたい時にやる! これが鉄則! そのほうが良いものが出来るんだ!
と、俺にも信念があるので、順番は前後するし、やりたいものしかやらない。
そういうところでスタイルが一致していたので、俺達兄弟は上手くやっていけていた。
特に印象に残る、俺とマリアが兄弟だった時代は地球上で、
第一次世界大戦が始まる少し前の、イギリスでだった。
バンドを組み、俺がドラムを… マリアはギターやベースをいじっていた。
が。
医者家庭だった重圧が嫌になり、俺は家出をしてカフェで働いた後、軍隊に逃げるという。
特にバグパイプやスコットランドの衣装なんかはいや、やめておこう。
そんな話はどうでも良い。
とにかく俺達はイギリスで兄弟だった。 今この話で大事なのはそれだけだ。
話を戻そう。
マリアは仕事は手を抜かずこなすものの、なにぶんペースが遅い、俺より格段に遅い。
このままじゃあ仕事が全部俺にまわってきて、マリアの取り分が少なくなっちまうと、そう危惧した俺は、マリアを自立させることにした。
こういうのを書くと俺は嫌なんだが、とにかくあえてマリアの仕事をけなした。
遅いだの出来が悪いだの磨きがなってないだの、言える事実(←)は全部言ってやった。
そうしたら予想通り俺はマリアに嫌われ、別々の店を持つことになる。
しばらくはマリアに仕事をまわしてやるために、俺はパチプロに転向。
それなりに稼いでいたよ。
その喧嘩したという事実がかのんとapo-、本体同士に知られ、
こいつらは俺達を和解させようとした。
具体的にどういう手法を使われたかまでは覚えていないんだが、
本体同士での本心を語り合った。
その話の最中、結局俺は別の仕事で、コットン226を去る事になるんだが
マリアは最後まで意地を張り、こちらを理解しようとはしなかった。
別れの「せんべつ」のようなもので、俺が最も愛用していた改造リボルバーを投げて渡したが、あいつはその意味をわかるだろうか?
ただ、俺がコットンを出る時に、丁度そのサーバーを抜け出そうとした半ばくらいの道で、あいつは俺の姿を見に来た。
よく分からないが、「まぁ、向こうでも適当に頑張れよ」みたいな事を言われた気がする。
この件について俺達は、
男って面倒くせぇ!何意地の張り合いしてんの? みたいな事を本体たちに言われた。
うっせぇこれが俺達のやり方なんだ。口出すなや。 と思う。お互い。
後で聞いた話だが、マリアはその改造銃をさらに自分に合うように改造したらしい。それでいい。
が… あいつも店じまいをして、コットンを後にしたそうな。
俺の気遣いはどうでもいい結果に終わったわけか。 どうでもいいぜ。
恩着せがましいのは嫌いなんだよ。
最近久しぶりにコットンに行った。変わっていなかった。
懐かしい古臭い、鉄サビを連想させる匂いがするが、
俺にとってはここが、故郷みたいなものなんだ。
-カイト-
俺は今宇宙連合で働いているが仕事はしなくて言いし楽でいい。
ただ会議には参加しないといけなくてそれが少し面倒だが話の内容は濃くてやりがいはあると思っている。
お前との決別は正直なんとも思っていない(かのん:ツンデレかよ、うそつけよ)
まぁお互いうまくやっていこうぜ。
別々の道を歩んでも、だ。
じゃあな。
byマリア