Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


志村けんの酔っぱらいコント


久しぶりに「志村けんのだいじょうぶだあスペシャル」を見た。
といっても、かなり後半から。

かれこれ十数年ぶりだろうか…。
昔はドリフの大ファンだったし、志村の特番もバカ殿までいつも見ていたものだが、やがて見なくなってしまった。

志村のネタはちょっとエッチなのが多いし、あと金的ネタも目立つので、親と一緒だと恥ずかしくて正視できないためである。

それと、ネタがやっぱり古くさい。
どのコントも何百回と繰り返されたオチなので、展開が予想できて飽きてしまっていたのだ。

だから先日に見たそのスペシャルも、オチは分かり切っていたので、大笑いすることもなく、懐かしい気分で眺めていた。

昔から変わらぬネタと展開。私以上の年代の人は懐かしさで笑うんだろう。
若い人たちは、どんな気持ちで見ているんだろうな。

でも志村はこれら鉄板ネタを、芸人の誇りと自負、厳しさを持ってやっている。
この間彼の自伝エッセイ「変なおじさん」を読んで感心したのだが…、マンネリと呼ばれてしまうネタも、長く続けば芸になる。そんなことが読み取れた。

著書によると、コントを通じていろんな役をやるのが面白いそうで、特に酔っぱらいの役は大好きなんだそうだ。

蒼雪も、志村の酔っぱらいが大好きである。
言動が笑えるだけじゃなく、べろべろに酔ったその裏に、人間の悲哀がうっすらにじみ出ているからだ。

著書でも、「人が酔う背景が必ずある。嬉しかったから飲んだのか、その逆か。それをしっかり考えてから役に臨む」と書いていた。

この前知識を持って、この間の特番にて「電車の酔っぱらい」を見た。
静かな深夜電車に、突然乱入してくる志村の酔っぱらい。一瞬で空気が変わる。
見る人は、これから彼が何を起こしてくれるのか期待する。その空気づくりだけですごい。

無理やり席をゆずってもらって美人と真面目サラリーマン(ダチョウ倶楽部の肥後)の間に座り込み、くだを巻く。美人にはちょっぴりセクハラしてみたり。
見る人は電車のお客さんの一部になりきって、ハラハラしながら見守ることになる。

実際にここまでの奴を見たことはなくても、誰しも「ああ、いるいる…こんな奴」と納得させられるのではないだろうか。
上機嫌に今夜の酒が楽しかったことを話すのだが、話が進むにつれて、彼を見る人はそれが嘘だったと察する。

背広を裏返しに着て、一見おどけて見せるこのおじさんは、誰にも構ってもらえなくて寂しかったのだ…。だから我を失うまで飲まずにはいられなかったのだ。
1人暮らしか、家庭があっても孤立しているのか。そんな背景まで浮かんでくる。

最後は、お決まりのゲロをリバースするシーンで、うっかり鞄に吐いたそれをもったいないからと飲んでしまい、肥後にはたかれてずっこけるオチである。
観客の胸に芽生えた哀愁や同情、自分に重ねた境遇にしんみりしかけていた気持ちを、これであっけらかんと笑い飛ばし、すっきりした気持ちで終わらせる構成が素晴らしい。

お見事な名人芸。
いろんなキャラで受けているが、酔っぱらいこそ芸一筋に生きる志村の真骨頂だろう。
浮き沈みの激しい芸能界で、同じ芸で生き残ることは本当に大変だ。
生き残って続けられている、それがまず才能なんだろうと思う。
                                        (敬称略)




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