Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・2

「けど、こんなご時世だからこそ、今のうちにかわいい家族に会っておきたいと思ったんだよ。ほら、なんだっけ……ハーゴン教? 教会は邪教つって、ひどく非難してるねえ。
 そんな怪しい宗教団体が、魔物を使ってあっちこっち町や村を襲い始めてるっていうじゃないか。ローレシアの王様は、そりゃあ立派な方だが、腕に抱える全ての民は救いきれんだろう。こうして、焼き討ちに遭っちまった町もあるし」
 少年はうつむいて焚き火を見つめている。ひどく悲しげな様子に、商人は申し訳ないと頭の後ろに手をやった。
「ああ、すまんね……余計なこと言っちまったかな?」
「……いえ。それより、邪教について何かほかにご存じありませんか? その……どこに彼らの教会があるのか、とか」
「なんだい、あんた、敵を討とうってのかい? この町に知り合いでもいたんかね」
「いえ、そういうことではありませんが」
 少年は少し慌てて取りつくろった。
「ただ、彼らがどこから来てどこへ行くのか……気になって。それに、邪教を信仰する市井の人々も多いそうですし」
「市井って、まるで王様みたいな話し方だね。まあいいや。……そうさねえ、わしの知り合いにも邪教とやらを熱心に信じてた奴がいたよ。コウモリみたいな真っ黒い鳥のお守りを首から下げて、しきりに商売繁盛を祈ってた。わしはどうもうさん臭いと思って、奴から入信を勧められても断ってたよ」
「それで……その方はどうなりましたか?」
「……消えたよ」
 商人は飲もうとしていたお茶のカップから口を放し、苦笑した。冗談みたいに笑わないと言葉に出せなかった。
「奴は邪教を信じてから、どんどん商売がうまくいった。それを見てうらやましがった連中が、自分もあやかりたいと入信し始めてね。わしは、嫌な感じがするからやめておけと言ったんだが……。そんな矢先、奴とその家族、使用人もろとも屋敷から消え去ったのさ。ある日突然、煙のようにね」
「……!」
 少年がこちらを凝視する。商人は眉根を寄せた。
「あいつらが消えた夜、何か黒い影がいくつも屋敷に来ていたって、見た人が言うんだが。殺された様子もないし、どうやって、市街地から何十人も人間を連れ去ったのか見当もつかない。調査に来たローレシアの兵士さん達も困り果ててたよ」
「……」
「商人仲間の噂じゃあ、サマルトリアも治安が悪くなってるらしいね。あそこはのんびりした気質の人間が多いっていうのに。なんだか、世界全体が悪くなってくような……そんな気がするよ」
 顔を向けると、少年は再び黙りこくってしまった。純真な子どもには、少々きつ過ぎた話題だったかもしれない。優しい気持ちになり、商人はそっと声をかけた。
「そろそろ、休もうか。昼間あんなに戦って、疲れただろう。火はわしが見ているから、しばらくおやすみ」
 商人の好意に甘え、少年は彼に背を向けて毛布をかぶり、鞘にはめた銅の剣を枕にして横になった。
 しかし、目は冴えて眠れなかった。彼より先に、商人が座ったまま舟を漕ぎ始めると、彼を起こさぬように自分の毛布を彼の肩にかけた。
 銅の剣を傍に寄せ、膝を抱えて座る。火が絶えないよう、時々薪をくべながら、物思いに沈んだ。
 胸には重苦しい不安が渦巻いていた。まだ首都ローレシアを出たばかりなのに、世界はあまりに広く感じる。自分はちっぽけなのだと痛く思わずにはいられない。
(とにかく今は、ランドに会うことだけを考えないと……)
 揺れる炎を見つめていると、自分が旅立つきっかけとなった、昨日のことがあふれるように思い出されてきた。

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2015/08/31 11:01
さえらさん、コメント感謝です。

ドラクエ好きに捧げた作品ですが、もちろん、ドラクエを知らない人にも捧げていますよ!w

こちらがさえらさんの創作意欲を刺激できてうれしいです。
書くことは、時間もかかりますけど程よく集中できて、なかなか楽しい作業です(順調な時は!)

書こうと思う内容がけっこう頭の中に詰まってしまっているので、それを早く出さないと次に進めない状態です。
モンハンの時は、無理やりPCの前に座ってひねり出していたんですが^^;
なので、更新が一度に3話分(内容は1話分)という、変則的なことになっています。
途中コメント欄が閉じられているのは、「まだこの話は次に続いていますよ」という意味です。だから小見出しもないんです。

出すとき出してしまうので、急に、今週は更新がない?という状況も考えられます。
しかし必ず、その月に1回以上は更新します。
私の作品が、ちょっとでもさえらさんの楽しみになれればいいなあと思います。
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2015/08/31 01:56
ドラクエを愛する人々へ捧げられた作品ですが、ドラクエをやったことがない私でも、すぐに惹きこまれてしまいました。
これから、ちょっとずつ読ませて頂くのが楽しみです!^^

そして、私も書こう、という良い刺激も頂戴しましたw
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2015/08/26 08:41
ハルさん、コメント感謝です。

さっそくの感想、ありがとうございます^^
モンスターとの戦いは、モンハン小説で培った技術が生きてますね。
見た目かわいいやつらもいますが、やっぱり人を襲うので怖くないといけないので。

まだ冒険は始まったばかりなので、書いている最中かけていた音楽は「遥かなる旅路」。
不安と希望が王子、いや少年に入り混じってます。
って、ええ、王子なんですけどねww
読み手は主人公にまず感情移入してもらわないとならないので、第三者から見た主人公を語る必要がありました。
あと、読んでいて、「おお、こいつは…」とドキドキしてもらうために、まだ名前と身分を出してません。

そうそう、銅の剣は斬るよりたたくものだと、ドラクエの攻略本にも解説がありました。
なのでおおなめくじは「刺して」います。
彼、スライムは切ってません。かわいそうだったからでしょう。
ドラクエ大辞典をつくろうぜ、というサイトで、赤銅だと金属の強度が弱いから青銅じゃないか、という説もありました。
でもそうは見えない見た目です。そこまで考えて攻略本イラスト作らなかったんでしょうね。
しかし、武器等のデザインは今見ても秀逸ですw

文字数は、こういうサイトでは仕方ないですよね^^;
紙の本だとページをめくれば気にならないんですが、サイトはまたがってしまうし、ニコタは細かいインデックスがないから、どんどん過去のものは奥へ追いやられてしまうし。
ご不便をおかけしますが、どうぞよろしくお願いします^^



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2015/08/25 14:51
ついに第一歩を踏み出しましたね!o(>◡<)o

スライムとおおなめくじの戦いが臨場感があって、かわいく描かれていてもやはりモンスターなんだなあ…と。
さすがモンスターハンター!(違笑)

昏くなっていく様相の世の中、不安に押しつぶされそうな、でも前向きな彼に思わずエールを送りたくなりますね!
負けるな、王子…もとい少年!
サマルトリアはまだ遠いですな…がんばれ!


余談ですが、ファンタジーというかTRPGの基本に於いては、銅の剣って切れ味よくないから切るというよりぶっ叩く武器だったです。
すぐ錆びるし、いかにも下位の武器って感じですもんね(笑)
ふと懐かしく思い出しました♬
文字数に関しては、もう蒼雪さんのやりたいようにやってくださいね♬
二つに分かれようと三つになろうと、楽しみにしています♬
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2015/08/24 16:03
プロローグの長さがニコタの字数制限に収まらず中途半端になったため、二つに分けました。
ほぼ初稿の段階なので、文章的に練り切れていないところもあり、あとであちこち手直しすると思います。
モンハン小説を書いていた時は、字数に縛られて表現を制限せざるを得ない部分もあり、結果書き切れなかったことや伝達不足が反省でした。
なので、今回は好きに書こうと決めた次第です。
そのため、毎回の字数が多すぎたり少なすぎたりすると思います。

内容等、お気づきになった点がありましたら、遠慮なくご指摘くださればうれしいです。
もちろん感想も励みになります。

この作品を、ドラクエ(特にⅡ)を愛する人達へ捧げます。



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