Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・18

【銀の鍵探して】

 ランドの言うところによると、ロランを捜してローレシア王に会ったあと、歩いてサマルトリア城へ向かったという。だが道のりで疲れ果て、リリザで宿を取ったのだ。
 勇者の泉の洞窟からキメラの翼を使ってローレシアに向かった分で、道具は尽きていた。キメラの翼はローレシアの城下町では売っていなかったので、歩くしかなかったのである。
 一泊したらサマルトリア城に向かえば良かったのに、そうしなかったのは、ランドいわく「勘」だった。
「ここにいたら、君に会えると思ったんだ」
 ランドはベッドの上に腰かけ、ロランは、向かい合って椅子にかけている。
 悪びれもせず言い切るランドに、ロランはあきれて二の句が継げなかった。
 だが、ランドがすぐにリリザを発ち、その時間帯にロランがサマルトリアからキメラの翼でローレシアに飛んでいたら、またすれ違っていたのである。
(これで良かったんだ、ともかく。そう思おう)
 こういうのを、なんと言うんだっけ。結果…良好?ロランは苦笑した。ランドはベッドの上で足をぶらぶらさせ、楽しそうにロランを見た。
「迷子になったら動かないこと。昔、ロランが教えてくれたよね」
「忘れてただろ、お前……。最初からそうすればよかったんだよ」
「そうだよねえ」
 ランドは、無邪気に笑った。
「ぼくが三つのころ、ローレシア城に来た時、一人で歩いてたら迷っちゃって……ロランが探しに来てくれただろ」
「そうだったな。見つけた時は、全然迷ってるようには見えなかったけど」
 べそもかかず、幼いランドは珍しそうにあたりを見回しながら歩いていたので、ロランは拍子抜けしたのだった。ロランを見つけたランドの瞳が、さっきと同じように輝いていた。
 夕飯に遅れるからと、ロランはランドの手を引いて親達の待つところへ戻ったことも思い出した。
「でも本当に助かったよ。ちょうど今日で、持ち金が尽きるところでさ。これ以上いたら、さすがに皿洗いとかしなきゃなって思ってた」
 それも楽しいかもねと、ランドは笑った。ここまで前向きで動じないと、自分が深刻になっているのが馬鹿馬鹿しくなってくる。肩の力が抜けて、ロランも笑った。
「これからどうする? まずサマルトリア城に報告に行こうか? おじさん達も心配してるだろうし。それに、早くムーンブルクへ渡らないと」
「それなんだけど」
 ランドは、やや身を乗り出した。
「銀の鍵を探しに行こうと思うんだ」
「銀の鍵?」
「そう。僕の家に昔から伝わる魔法の鍵で、簡単な扉なら、それで開けられるんだよ。ここから遙か西の洞窟に眠ってる」
「それがどうして必要なんだ?」
「きっと必要になるよ。どこかに潜入したりするのにさ。もし、ルナがどこかに捕らわれてたら、その鍵で開けられるかもしれないだろ」
 ランドの言葉に、ロランは半信半疑だった。ルナが囚われの身ということは、あり得ない話ではない。ランドが言い継いだ。
「それに、どこか塔とか洞窟を探検するかもしれないだろ? そういうのは、古代からの遺跡が多いんだ。宝を守るために、鍵はかかってて当然だよ」
「……わかった」
 ロランは従うことにした。洞窟探検はともかく、ルナ救出のために鍵が必要なら、ここで取りに行った方が後戻りをしなくていい。
「お互いの城には、ここの兵士に伝令を頼もう。……でもランド、どうして武器が棍棒なんだ? おじさんがそれを持たせたとは思えないけど」
「あ、それはさ……」
 壁の脇に立てかけられていた棍棒に違和感があって、ロランが尋ねると、ランドはその顛末(てんまつ)を話し出した。
 二人が寝たのは深夜を回ってからだった。ロランは布団をもう一組用意してもらい、ランドの部屋に寝た。宿泊費は、きっちり2人分取られてしまったが。




月別アーカイブ

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010


Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.