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自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・37

第二章 勇者航路

【いざ、南へ】

 行けども行けども、森の中。密生した木々の中を、3人の少年少女が足早に進んでいく。
 森の中には、かろうじて、南に続く小道が残っていた。長い間手入れされていない部分は、倒木や灌木にふさがっていたが、青い服の少年が軽々とそれらをどかし、あるいは切り払い、残る二人が通れるよう道を作っていく。
 ムーンペタから一路北東へ。どこまでも続く森林を行くのは、ロラン、ランド、ルナの3人である。


 ローレシアにルナを連れて一度帰還したロランは、翌日、ランドのルーラの呪文でサマルトリアを訪ねた。ランドにも、彼の家族に会わせておきたかったからである。
 ルナの無事を、サマルトリア王はとても喜んだ。ランドの妹アリシアは、相変わらず自分も冒険に出たいと無理を言って周りを困らせたが、ランドの「だめだよ、お前は」のひと言で黙らされ、大泣きに発展するところを、ルナがなだめて場を収めた。
 アリシアは意外にもルナに懐き、「本当はお姉ちゃんがほしかったの」などの発言でサマルトリア王およびランドを面食らわせたが、ルナもこの一件で、まだかたくなだった心が少しほぐれたようであった。
 これからロラン達は、本格的に邪教の討伐に臨むことになる。壮行会を催そうとサマルトリア王が申し出たが、ロラン達はこれを断り、身内だけのささやかな晩餐で済ませた。アリシアも参加しての小さな祝宴は、ローレシアでのそれとまた違い、にぎやかで楽しいものだった。
「――さて、問題は、ハーゴンの本拠地にどうやって向かうかだ」
 食事と入浴を終えてさっぱりしたあと、あてがわれたサマルトリア城の一室で、ロラン達は世界地図を広げ、今後のことを考えていた。
「ハーゴンはロンダルキアにいる。それは確かだわ」
 ルナが、ムーンブルクの国土の南をしなやかな指で押さえる。
「でも周りを高い岩山で囲まれて、とても人では登れない。だからお父さまは、ロンダルキアへ登るための道を探していたの」
「その道は、必ずあるはずなんだよね。邪教団は、あちこちで人をさらってもいる。その人達が通る道が絶対必要だし」
 ランドも地図を見つめて言った。
「ごめんね、こんなおおざっぱな地図で……もっと詳しく地形が描かれていれば、たどり着く道も推測できそうなもんだけど」
「気にするなよ。これだって、ずいぶん助かってるさ。今すぐにロンダルキアには行けないんだ、近場の行く先だけでもわかればいい」
 ロランは言い、地図を眺めた。世界には、アレフガルド大陸、ローレシア大陸のほかに、はるか南西にベラヌール大陸、ローレシア大陸の南にはデルコンダル島がある。ロンダルキア周辺にも、岩山と密林に囲まれた大地があった。
「世界を巡れば、どこかでハーゴンに近づく情報があるはずだ。行けるところまで行ってみよう」
 ランドとルナもうなずいた。
「ねえ、手始めにアレフガルドを目指すってのはどう?」
 ランドが言った。
「ぼくらのご先祖の土地。ぼく達、まだ行ったことないだろ?」
「そうだな……」
 ロランはルナと顔を見合わせた。ルナはうなずいた。
「いいと思うわ。あそこは古い歴史があるし、何か役に立つ話もあるかもしれない」
 でも、とルナは再び地図に目を落とした。
「そこへ陸路で渡るには、ちょっと困ったことがあるのよね……」
 ルナは、ムーンブルク城から西を示した。
「大砂漠にはオアシスがあって、少し前までは隊商や旅人の中間地点だったの。ムーンブルクの城下町も、西からの隊商でにぎわっていたわ」
 ムーンブルクのことを話すルナに、悲しみの影は見られない。忘れてしまったのでも、何も感じなくなったのでもない。今すべきことを優先させようとする、頭の切り替えの早さゆえだった。
 ルナの話では、こうだった。
 ルプガナは、大砂漠から北に延びた半島の東端にある、古くから栄えた港町である。アレフガルドとも交流があり、その昔、ローレシア1世とローラは、船でルプガナに渡って南下し、現在のムーンブルクへたどり着いたという。
「でも、今は歩いてルプガナまで行けないの。この海峡を見て」
 指先が砂漠から北上し、ルプガナの大地との境目を分断する細い海峡を示した。
「この対岸には二つの塔が立っていて、お互いを吊り橋で結んでいたのよ。海峡を竜に見立てて、二つの塔はドラゴンの角と呼ばれているわ」
「なるほど、ルプガナからの隊商は、その橋を渡って南下していたわけか」
 と、ロラン。
「そう。でも、数年前に二つの塔に魔物の群れが棲み着いてしまって、橋を壊されたのよ。もちろん隊商は通れなくなって、通商経路はそれきり分断されているわ」
「ええっ、大事な橋じゃないか。君の所で、修理はしなかったの?」
 ランドが驚くと、ルナは難しい顔をした。
「魔物が完全にいなくなって、たくさんの人手を使って何年もかければできたかもね。でも、この土地は風がとても強くて、橋を架けるための縄を渡すのが大変なの。今の技術じゃ、再建も難しいと言われてる」
「昔の人は、どうやってそんな場所に吊り橋を造ったんだ?」
 ロランが訊くと、ルナはにこりとした。
「あなた達、良い場所を見つけていたわね。――どうやら、次に行く所が決まったみたいよ」

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2015/09/14 01:56
メモ

とりあえず、公式小説など「公式」で売られている出版物等の内容とかぶらないよう、慎重に書いています。

※最近、著作権侵害についてとても厳しくなっています。こういった同人二次創作でも訴えられかねないので、またここでお断りしておきます。
この作品は決してそれらを侵害するものではなく、原作等を尊重し、尊敬する上での二次創作活動です。
一部アイデアが参考に使われてもいますが、それらについても、共通の世界観としてこちらも共有している次第です。ラヴクラフトの、クトゥルフ神話体系のようなものですね。

それでもこの作品の独自性を出すため(かぶらないようにするため)、手持ちのそちらを読み返すのですが、アイデア先取りもされてたりして、なかなか苦労が。
特にエニックス刊のゲームブックは、原作ゲーム無視の自由すぎる展開(笑)
同人作品とはいえ、こちらが書くことなくなったなぁ、と苦笑しきりです。

ゲームにほぼ忠実に書くことを心がけているので、多少広がりや奥行きにとぼしくなりがちです。
その辺が苦労ですが、最後まで自分なりに書いていきたいです。



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