Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・48

 次々に襲ってくる魔物を蹴散らして7階まで来ると、吹き抜けは終わった。周囲を胸の高さまでの壁が覆っていて、展望台のようになっていた。眺めは素晴らしく、地平線と空の境目まで見渡せる。人が往来していたころは、観光でここにのぼる旅人も多くいたのかもしれない。
 頂上の床のあちこちに鳥の巣がいくつもあり、海鳥の群れが羽を休めていた。人を怖がる様子もなく、じっとロラン達を見つめるものもいる。
「さて……。来たのはいいけど」
「うん……ここからどうやって渡るか、だよね」
「やっぱり……あれしかないのかしら?」
 塔の北側は壁が崩れてなくなっていた。飛び降りるにはうってつけだ。その際まで立って、3人は向こう側を眺めながらつぶやいていた。
「結構、風が強いね」
 ランドが言ったそばから風にあおられ、両手を振り回して足を踏み外しそうになったのを、両脇の二人が慌てて支える。
「風のマントなら、この距離を滑空できるんだよな?」
 ロランが腰のポーチから、小さく折り畳んだマントを取り出す。
「ええ。でも、3人の人間が一緒に一枚のマントで飛べるかどうかは、私もわからないわ……」
 ルナは、やっぱり旅の扉が使えれば良かった、とこぼした。
「金の扉は魔法がかかってるけど、ロランなら壊せたんじゃない?」
「おいおい……」
 真剣に言うルナに、ロランが眉宇を寄せる。ランドは、傍らを飛び立つ海鳥を目で追っていた。
「ぼくさ、紙と木で鳥の模型を作ったことあるんだ」
 ふいに話し出したランドに、ロランとルナは話をやめてそちらを見た。ランドは次々と飛ぶ鳥を微笑みながら見ている。
「でもなかなか飛んでくれなくてさ。どうしてだろうと思って見てたら、飛ぶ時おしりが落ちるとすぐ落ちるってことに気づいたんだ。尾翼が下がらないようにしたら、長く飛んだんだよ」
「それ、今の状況と関係あるの?」
 ルナがさすがに柳眉をひそめるが、ロランは片手を上げてルナの抗議を止めた。続きをうながす。
「それで?」
「高い所から落としてみたら、最初はやっぱり落ちるんだ。羽ばたかないからね。でも鳥は羽ばたく。そうすると、浮き上がる力――揚力が生まれるからだよ。ぼくの模型は、落ちてる途中、上に向かう風をつかんだら舞い上がったんだ」
 ランドは人差し指を一度下へ向けて下ろし、曲線を描いて上昇させてみせた。
「……つまり、風のマントも、上昇する気流をつかめば3人でも飛べるってことか? 正しい姿勢で?」
 ロランが言うと、ランドはにっこりした。
「たぶんね」
「でもそのためには、軸がしっかりしていないとならない」
 話をつかんだルナが続ける。
「足を下に向けると落ちるんでしょう? 3人で飛ぶとしたら、縦につながるのはやめた方がいいわね」
 ロランを先に、順番に足をつかんでということである。ランドはうなずいた。ルナとともにロランを見る。
「ぼくらがロランの両脇にくっついて、ロランがマントを広げて飛ぶ。これだね」
 責任の重大さに、ロランはようやく怖さがせり上がってきて、ごくりと固唾をのんだ。




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