アスパシオンの弟子70 時の泉(後編)
- カテゴリ:自作小説
- 2015/11/07 20:22:23
「あんたのおかげで恐ろしくペースダウンした!」
ついに泉の縁に這い上がり、ぜいぜいと息を切らせながら岸辺に寝転がった時。俺は泉の中で助けたそいつに文句を放った。
「す、すま……ぬ」
白い衣を着ているきれいなメニスだ。
鳶色で菫の瞳だから、フィリアのように人間との混血だろう。拷問のせいか頭や肩にひどい傷を受け、手足を縄でがんじがらめにされていたが、ローズのスカートに食いついてきて放さなかった執念はもの凄かった。
「しかし私には、どうしてもやらねばならぬことがあるのでな……感謝する」
「礼を言われてもなぁ」
60パッスースあまり泳ぎ上がるのにどのぐらいかかったのか。目を覚ました赤猫剣に聞いてみると、体内時計の計測では気を失ってから二時間十二分経っていると答えが返ってきた。浮力が全く無いところをがむしゃらに搔いたにしては、かなりがんばったといえるが……
「単純計算で924日はかかってるよな……」
メキドとエティアの情勢が気になる。俺にもし何かあった場合は、妖精たちが二国を守るために動いてくれる布陣を敷いているが、相手はあのアイテリオンだ。妖精たちがあいつに太刀打ちできているかどうか、とても不安だ。
だが、過去の泉に飛び込んで帳尻を合わせることは無理だ。この泉は俺たちの手で、次元穴をひとつくぐりでもすると記憶がすっかりふっ飛ぶ意地悪仕様に作ってある。
こいつがすがってこなければもっとスピードアップできたのにと、俺は恨めしげにメニスの混血を見た。きれいな顔立ち。どことなくアイダさんに目元が似ている気がする。
「おい、なんだその子は」
そのメニスはローズたちに抱かれているノミオスを覗き込むなりぎょっとした。
「今まで見たことの無い子だな。純血種か?」
「いや、人間との混血の子だ」
「混血で白銀の髪? ありえぬ。そんな変異をするのは王家の子だけだぞ。しかしひどい傷だな。かわいそうに」
レモンに縄をほどいてもらったそのメニスは、意識を失っているノミオスの足にすっと手を当てた。肉が削がれたむごい傷とメニスの手の間で、ちりちりと音が鳴り出す。韻律の調べがふわりと周囲を囲み、メニスの手が白く輝いた。
「白の技か?」
「……うむ」
メニスの白の技は癒しの技。話には何度も聞いていたが、俺はその時初めてその技をまともに目にした。みるみる、とまではいかないがノミオスの足にうっすら光の膜が張られていき、出血が止まっていく。
「わが同胞がまだ無事だといいんだが……」
「同胞?」
「私は同胞達とともに、メニスの王と戦った。あの暴君を玉座から下ろしたかったが、失敗してこの泉に放り込まれたのだ」
白い衣のメニスは、今度はノミオスの腕に触れた。腕も光の膜でうっすら包まれ、ローズたちが巻いた包帯からじわじわ染み出ていた真っ白い血が止まっていく。
「そなたらも王の敵なのだろう? 手を組んでメニスの王を倒そうと言いたいところだが、もし我が同胞がひとりもいなくなっていたら……途方にくれてしまうな」
かなりの重症のはずなのに、そのメニスは少しもおのれを構わずノミオスに手を当て続けていた。
その手は、まっ白に輝いていた。
熱を放って、とても温かく――。
読んでくださってありがとうございます><
灰色の導師に叩き込まれた技師魂のおかげで、
ぺぺは自分で自分を助けることに^^
メニスにもいろいろな考えかたをする人がいるようです。
ぺぺが穏健派の人々と連携できればよいのですが……
続きの執筆がんばります^^
読んでくださってありがとうございます><
はい、メンテいらずで、すごい性能です@@;
でも技師魂が反映された代物なので、
ちゃんとアナログチックな機能も搭載されているようです^^
ひとりひっついてきましたが、これを足がかりに
メニスの一族の中に切り込んでいけるのかどうか;
敵地での奮闘シーン、がんばります^^
読んで下さりありがとうございます><
メニスの一族の中でもいろいろな思惑やごたごたがあるみたいですね。
ぺぺたちにはよい結果となるように転がるといいのですが……
時の泉は完全停止ではなかったのですね。
これは面白い!
そして、物語に新しい登場人物がでてきました。
白銀の髪の白い衣のメニスは白の王に挑んでいます。
メニスの本性は善良なのかも・・と感じてしまいます。
前作と今作を連続して拝読しましたが、Sianさんの意識の
高揚が伝わってきます。
次作が、本当に楽しみです。
想定外の展開に、大喜びしていますよ。
鶴首してお待ち申し上げます。
m(_ _)m
7日間に1度、60秒だけ時間の流れができる・・・
超長期間ノーメンテで動作し続けるなんて素晴らしすぎます^^
重力や水圧を利用したセルフメンテ機構が組み込まれているとしか思えません^^
時の泉から這い上がったペペさんたち。
放り込まれた時より一人増えています^^;
白の技の使い手。
同胞とともに白の王に挑んだ理由や背景やいかに・・・
新たな出会いで物語が広がり、続きがとても楽しみです♪
お題:気になる映画スター
ブラピが好きだったのですが、ブランジェリーナになってしまってから
ちょっと熱がさめたかも……な私です。
赤猫剣のオリジナルはかつて青の三の星にいたころ、
本当にハリウッドに住んでいた過去があるようです^^;
剣曰く『マリリン・モンローの真っ赤な唇にチュウされてる私』という
証拠の記録映像を写メして保存したんだとか。
ちなみにこのときは、映画の小道具として使われたそうです。