アスパシオンの弟子71 白き魔人(後編)
- カテゴリ:自作小説
- 2015/11/14 14:06:03
アイテリオンの魔人アイテニオスの凄まじい魔法の気配に、俺だけではなくメイテリエも全く反撃できないようだった。
「放せ! 我が父と、私のカイネミリエを侮辱するな!」
とはいえこの重圧の中、口を開いて叫べるのはさすがというしかない。俺なんか少しも自由がきかない……。
「私の、か。やっぱり君は封印しておかなくちゃならないね。フラヴィオスはカイネミリエそっくりに成長したもの。手を出されたらたまったものじゃないよ」
「まだ……まだフラヴィオスは、魔王化していないのか?」
「まあね。あの子なんだか、異様に成長が遅いらしくてねえ。ご主人様はやきもきしてる。魔王化を促す薬湯を飲ませてるけど、全然効かないようだし……おや? これは何かな。きれいな武器だねえ。だれが落としていったの?」
まずい。赤猫の剣を拾われてしまった。
『おやめください。変態のくせに、私にさわらないでください』
剣がしごく的確な文句を言う。でも現れたのは赤猫の意識ではなかった。
顕現しているのは太古の知識を持つオリジナルの意識。やはり以前一瞬だけ赤猫が出てきたのは、奇跡のようなものだったんだろうか……。
『これ以上触ったらバチバチしちゃいますよ。それともジュードーみたいに投げ飛ばされるのがいいですか? それともベースボールの打球になりたいですか? お望みなら時速百九十キロ超えの剛速球で射出してさしあげます』
「へええ面白いオモチャだねえ。なんかくっちゃべってるよ。テリエ、こいつで君としばらく遊びたいな。君には、お仕置きしなくちゃいけないものねえ」
「ぐはっ……!」『ひいい!』
めきり、と肉に金属が食い込む鈍い音がした。すさまじい魔力の重圧の中で、俺はなんとかうっすらまぶたをあげた。
背中に剣を突きたてられたメイテリエが、銀髪のメニスに頭を摑まれて、ずるずると部屋の外に引きずり出されていた。
「おいでテリエ。ゆっくり楽しもう」
その人を放せ! 変態野郎!
俺の悪態は声にならず、その場の魔法の気配が完全に消え去るまで少しも動けなかった。
あんなヤツに勝てる自信はない。だがヴィオはまだ、魔王化していない。まだこのメニスの里にいる。ということは……。
「逃がさないと……」
俺はよろよろと部屋から這い出た。
「ここから、ヴィオを逃がさないと」
まずはなんとかあの魔人を倒して。メイテリエを助けて。
不死身の彼と俺とで協力して、ヴィオをアイテリオンのもとから連れ出せれば……。
ポチをここに呼べるだろうかと、腕輪をいじる。遠隔操作が効く範囲には入っているはずだ。俺が小動物にしかけた仕込みはもうすでに、北五州にも分布しているから。
鳥たちに壊されてないといいが、と願いつつスイッチをいじると、ほわんと腕輪が光りだした。
「よし、反応が返ってきた……どうにかしてここに来てくれ、ポチ」
ぼたぼたと血が床に滴り落ちるのも構わず、俺は必死に這い進んだ。
「アイテリオン……世界を好きに作り直すのはおまえじゃない……世界を創るのは、この……この俺だ……!」
はるか先から響いてくる恐ろしい魔人の哄笑を聞きながら。
果てしなく長くて。暗闇に沈む廊下を。
いつも読んで下さり、ありがとうございます><
死なない魔人がそろい踏みとなりました。本来はメニスの護衛役で
主人と王には絶対服従という形で制御されているのですが、
その戒めがないメイテリエはもう一人の魔人よりも
かなりおそろしい存在のような気がします。
そしてぺぺはどのようにして世界を創るのでしょうか。
続きを楽しんでいただければうれしいです^^。
読んで下さってありがとうございます><
メニスの魔人は、やっぱりメニスから選ぶというのがスタンダードなんでしょうか。
ペペさんの場合は特例なのかもしれません。
小動物たちは、生体搭載型の周波数中継機みたいですよね^^
めざせ大陸全土制覇! なのであります。
いつも読んで下さりありがとうございます><
ぺぺさんはなんとかがんばるのでしょうが、相手は魔人。
苦戦しそうですね^^;
昨日、コメントを書いている途中で宅配便が届きました。
忘れないうちに礼状をと思い、さっとブラウザを閉じてしまいました。
本当に夏生は愚かなんですよ。(*^▽^*)
さて、壮大な物語になってきましたね。
今回の作品で、「魔人が世界を創り直す」というテーマの一つが鮮明
になったように思えました。
それにしても死を超越した魔人とは、神の世界に近づいた者なのでしょうか。
様々な思いを重ね合わせながら、物語を興味深く拝読しております。
では、毎回のことながら、次作を鶴首してお待ち申し上げます。
m(_ _)m
泉の縁の静かな時間と空間が一気に戦場に・・・
狭いところに魔人が3人。なんという魔人口密度の高さでしょう^^;
魔人2人と赤猫剣が去った後に残されたペペさん。
ポチの到着を待ちつつ進む先では何が起きるのか、
奥へと逃れた人たち、連れて行かれた赤猫剣の動向は・・・
物語の続きがとても楽しみです^^
ペペさんはモバイル通信網を構築したのですね^^
しっかりした通信インフラがペペさんたちを支えてくれそうです。
いつも楽しいお話をありがとうございます♪
お題:観戦したいスポーツ
赤猫剣は柔道や野球が好きみたいです。
私は野球の他にフィギュアスケートや体操を見るのが好きです^^