自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・138
- カテゴリ:自作小説
- 2015/11/25 14:28:36
「……」
ルナは苦しげにうつむいた。
「魔物が出て来た!」
傍らでランドが悲鳴を上げる。魔界から召喚された魔物の群れは、門が狭いらしく、入り口まぎわでひしめき合っていた。邪悪な産道を広げるべく、地獄の使いの呪詛が大きくなる。
ルナは決然と顔を上げた。
「ロラン、ランド。私、もう一度間違っていい?」
「え――?」
ロランが眉を寄せると、ルナは張りつめた面持ちで言った。
「私が何かやろうとすると、いつも大変なことになるでしょう? だから今度も……あなた達に迷惑をかけるわ、きっと」
「どういうことだよ?」
ランドが焦れた。魔物の群れは門からせり出そうとしている。ルナは急いで言った。
「あいつよりもっと強い魔力をぶつければ、結界も魔法陣も消えるはず。でも――そのあとはどうなるかわからない」
「やってくれ!」
間髪入れず、ロランはルナに言った。
「大群が来たらそれこそおしまいだ。止められるなら、君に頼む!」
「――わかった。離れていて」
ルナは二人を下がらせると、杖を前に突きだして意識を集中させた。金色の光の粒子が杖の先端に集まる。
「イオナズンだ!!」
ランドが叫んだ次の瞬間、集まった光が一個の球体になった。そして――
「――っ!!」
光球が炸裂し、爆風が轟音とともに堂内に広がった。ロランとランドは反射的に目を閉じ床に伏せる。生まれる前に殺されていく魔物達の怨嗟と絶叫が爆音に混じり、程なくして消えた。
「……やったか?」
おそるおそる二人が顔を上げると、肩で息をするルナの後ろ姿が見えた。祭壇の上の地獄の使いと魔法陣は跡形もなくなっている。
「ルナ!」
魔力を使い切り、ルナが膝を崩して座り込んだ。ロランとランドは駆け寄ってルナを支えようとしたが、ルナはかぶりを振って、蒼白な指で祭壇を示す。
「邪神の像は無事よ。早くあれを取って……」
「よし」
ランドがルナに力の盾をかざすのを見てから、ロランは祭壇に近づいた。邪神の像は何事もなかったかのように壇上に転がっている。
「これが……」
ロランは膝をつき、片手を伸ばした。それは、双角を持つ三つ目の髑髏に、凶悪な笑みを浮かべた翼持つ蛇が巻き付く、おぞましい姿をしていた。像といいながら、髑髏に宿る目の光は爛々とこちらを見つめ、蛇の緑色をした鱗も生々しい。
まるで生きているようだったが、意を決してロランは像をつかんだ。蛇が動くかと思ったが、何の抵抗もなく手に収まったのがかえって不気味だった。
「すごいよ、ルナ。イオナズンが使えたんだね」
ランドが感心すると、ルナは苦く微笑んだ。
「ええ、満月の塔ではぐれメタルをやっつけちゃった時、覚えたの。でもこの威力でしょう、むやみに使ったらどんな影響が出るかわからないから、使わないでいたの」
「でもおかげで助かったよ。さすがルナだな」
あらかじめ用意していた革袋に像を入れたロランが褒めると、ルナは「ううん」と言った。
「私もうまくいくとは思ってなかったから。でも洞窟が壊れなくてよかったわね」
「……でもない、かな?」
ランドが即座に否定した。ロランもはっとする。足元が微妙に揺れていた。
「まずいよ、イオナズンのせいで洞窟が崩れるかもしれない」
「ああ、やっぱり……!」
ルナが泣きそうになって顔を両手で覆った。
「ごめんなさい。やっぱりまたやっちゃった……!」
「いいよ、まずそれよりも、ここから出ないと!」
ロランが言うと、揺れが急にひどくなった。あわわわとランドがうろたえてロランとルナを見た。
「どうしよう、ぼく、もうリレミトを使えないよ!」
「私も……さっきので、もう……」
「何だって?!」
ロランは愕然とした。まだ余力があると思っていたのだ。
「走ろう!」
ロランは叫んだ。それしか手段はない。3人は急いでもと来た道を走り出した。だが、通ってきた回廊はあふれた溶岩に覆われ、行き場をなくしていた。
「そんな……!」
ロランは立ち止まり、唇をかんだ。今のランドはトラマナも使えない。ルナの水の羽衣は、まとう本人しか冷気を与えてくれない。道は、もうなかった。
「もうだめだ……」
ランドがへたりこみそうになり、ロランの肩につかまってこらえる。ルナはごめんなさい、と繰り返した。
「もっと別の方法があったかもしれないのに……」
「よすんだ。終わったことを責めてもしょうがないよ。……僕らの運も、これまでだったってことかもな」
「そんなぁ……」
くう、とランドが鼻声になった。ルナも涙ぐんでいる。ロランもあとは何もいえず、波打つ溶岩を見つめていた。
不思議と、焼けつくような無念さは浮かばなかった。ここに来れたのが奇跡と言っていいくらいだ。自分はやれるだけのことをやった。
ここで命尽きても、ランドとルナが一緒なら、それでいい。疲れ果てた心で、そう思っていた。
「もう、祈ってもどうしようもないわよね。神様はいつだって助けてくれなかったんだから」
自棄になって、珍しくルナが皮肉を言った。ハーゴンをこの手で倒すという願いは、この中で誰よりも強い。悔しさは計り知れなかった。
「ルナ、そんなこと言ったらだめだよ。どこかで見てるかもしれないよ?」
ランドが弱々しくなだめる。ルナは答えず、あふれた悔し涙を指先でぬぐった。
その中指に光る青い輝きを見て、ロランは背筋にしびれが走った。
「ルナ、それ……!」
「え?」
ルナはきょとんとして、ロランが指さす先を見つめた。ランドも気づき、大声を上げる。
「祈りの指輪!!」
3人そろって叫んでいた。風の塔で見つけた祈りの指輪は、ルナが身に着けたまま使わずにあった。
「お願い……指輪よ!」
ルナは手を組んで祈った。台座の青い石が淡く光る。閉じていた目をぱっと見開き、ロランとランドを傍に寄せると、杖を高くかかげた。
「リレミト!」
ロラン達が船に乗りこむのと、海底洞窟が火を吹き上げるのと同時だった。噴火の余波を受け、船は津波に押し流される。暗礁に船底が接触する寸前、船は瞬時にかき消えた。ランドも祈りの指輪を使って魔力を回復させ、ルーラを唱えたのである。
海底洞窟は無数の魔物を胎内に入れたまま、口から大量の溶岩を噴き上げた。崩壊した洞窟の入り口に海水が激流となって流れ込み、蒸気を上げて溶岩を固めていく。
やがて炎と水の戦いが収まると、奇岩群はそのほとんどを水中に没し、洞窟のあった岩頭もまた、先端だけを海面にのぞかせるだけとなっていた。
愚痴ぽいのを公開してすみません。かえって気を遣わせてしまったみたいで^^;
足あとだけの方がいらっしゃってて、その方がたがぱったり来なくなってしまったので、こっちが未熟だったのかなと反省していました。
決して、ざくろさん達のことじゃないです。申し訳ありません^^;
そうそう、ニコタのブログは読みづらいですね。私、この間要望ポストに改善要望を出しました。
やっぱり、いつでも楽に読めるように、別のサイトにストック作った方がいいかもですね。
FCにアカウント持ってたんですが、もう使わないと思って削除してしまったんです。
ほかにいいとこないか、探してみます。作業が膨大になるので、あえて避けてたってのもあるんですが^^;
ちゃんと整理できたら、その旨報告いたしますね。
ざくろさんもお仕事頑張ってください。身体にも気をつけてくださいよ~^^;
ご無沙汰してます。
仕事中にこっそりw
一つ先の記事、読みました。
小説の続き、ずっと気になってるんですが、時間がなくて読みに来れない状態ですよー。
そして、最大のネックは、ニコタのブログはさかのぼって読みにくい…。
記事に、ひとつ前、一つ先、みたいな矢印が付いてて戻らなくても先に進んでいけたらいいのになぁぁ。
…完結後でもいいから、どっか、ブログ記事読みやすい場所にもUPする予定…とかないですよね~^^;
こないだ、ちらっとイオナズンとか使って戦うシーン読んで、わくわくすると同時に後悔^^; ちゃんと筋を追って読まないともったいない~。
年末年始くらいはやすめるかなぁぁ。
[今やってるのが某有名メーカーのアイスの配送なんで、休みがないんっすよww 正月もデータ処理に行かなきゃ位いけない可能性がw)
またきますーー!