Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


老兵に教えてもらいたい


この間、町の本屋を久しぶりに訪れた。
町というのは、市街地のことで、都会に住んでいる人には謎の言い回しだが、地方在住の我々には通用する言い方だ。
といっても、郊外のショッピングセンターなどに客を取られて、過疎化しているのだが。

入り口付近にダヴィンチが平積みされていて、表紙に「3月のライオン 決断の11巻」と書かれているのを見た。
おお、出てたのか11巻。いそいそとマンガ売場に行ったら、売ってない。
発売日9月じゃねーか。置いとけよ!

だから書店がネットに負けるんだぞと悪態をつきつつ、文庫のコーナーを回る。
そこで見つけたのが、

佐藤愛子 「かくて老兵は消えてゆく」

であった。

佐藤愛子さんの小説は、一冊だけ読んだことがある。

「小説 佐藤紅緑(さとうこうろく)」

愛子さんの父親の半生を描いたもので、かなり個性的だった父親の話を軸に、複雑な家族や当時の文人たちの暮らしぶりが色濃く描かれた作品だ。

これは母方の祖父の形見で、私は愛読していた。家族は誰も読んでいなかった。
居間の本棚に置かれていたのだが、同じく祖父の形見であるミヒャエル・エンデの「鏡の中の鏡」とともに、いつの間にか我が家から消えていたのである。

おそらく両親のどちらかが、この本いらねと思って処分したのだろう。
ヘレン・ケラーの伝記とかいらんから、そっちを残すべきだろうが!(゜o゜)
こんなことなら、家族共用本と思わないで、さっさと自分の部屋の本棚に移しとけばよかった。

という私と愛子作品の関係である。
佐藤紅緑の本は面白かった。
賞をたくさん取っているすごい作家だとも聞くし、いつかほかのも読みたいと思っていたが、後回しにしていた。
小説って内容が重かったり、長かったりするから。

でもエッセイなら読みやすそうだと思い、手に取った。
だいたい初めての作家のときは、そうする。エッセイなら人となりがわかって、作品にも親しみやすいからだ。

「かくて老兵は~」は、超読みやすくて面白かった。
なんでもっと早く愛子のエッセイを買わなかったのかと悔やまれた。

90歳を迎えた作者が書いた、と帯にあったのが買うきっかけだったのだが、本当に買って良かったと思った。
文章のテンポがよく、乗りツッコミもあって、もうほんとに面白くて笑いも出てくる。
そして、この人の考え方が自分とほとんど同じなのでびっくりした。

いわく、神に祈るときは「~がかないますように」などと我欲を祈らず、感謝だけをささげること。そうすると、自然といいことが巡ってくる。

と書かれてある。
そうなんだよ! 思わず心で叫んでいた。みんなわかってないんだよなぁ、そこをさ。
私もそれを悟ったのは、30過ぎてからだけど。

あと、3・11の震災についても多く触れていた。
震災について、いろんな人がいろんな意見を言ったけど、揚げ足ばかり取らず、失言した人の立場も考えてみようよ、という記述は勉強になった。

そして天災に関して、自分の悲しみや悔しさを賠償として他人にぶつけることはやめましょうよ、とも書いている。
お金をふんだくっても、死んだ子ども達は帰ってこない。過去の戦争と同じ、タイミングの良し悪し、運命だったということを認めようよ、と。
そうなんだよ、そうなんだ…。よくぞ書いてくださった。何度もうなずいていた。

そんな感じで、愛子先生は(もう心の師匠である)、ご自身の戦争体験を交えて、今の日本人が失ってしまった大切なことを著書に書かれていた。
きっと、中国人の爆買いについても腹を立てておられることだろう。

私の県でも、中国人爆買いしておくれと歓迎していて嘆かわしい。
それって、札束レイプ(奥田英朗の「B型陳情団」より)されるのと同じだぜ。

札束レイプとは、昔、バブル期の日本人が、身分不相応なシャネルなどを海外で買いあさった現象のことである。

かつて、田舎の親父や奥さんが、ただ安く買えるからと言って金に飽かせてブランド物を買いまくったことを、奥田氏も嘆いている。
モノの価値の分からないやつらのために、ブランド品はあるのではない、と。
でも金さえ払えば店員は文句を言わないから、物は売られていく。それを、売春と同じだと例えたのだ。言い得て妙だと私は思う。

海外でバッタもんに引っかかる人は、そういう根性があるからだ。だます方も悪いが、だまされる方も悪い。安く買える、自分だけ得できる、という考えが災いを招いたのだから。
振り込め詐欺関係も同じことだ。

みんなが思っていてもうまく言葉にできなかったり、言いにくいことを、愛子先生は書いていた。
いろんなことに怒りを覚えながら、でも現実は簡単に変えられないこともわかっている。
だから、これが腹立つ、と書いた直後に「でもどうしようもないよなあ」みたいに収めている。
諦める、現実を見る、ということ。それは戦わない勇気にも見えるが、賠償だ報復だと殴り合いをするより、よっぽど平和的で前向きに思える。
人はまずそこから立たないと、本当に平和に暮らすことはできないのだ…。


この本の最後に、「みなさんさようなら。かくて老兵は消えます」と書かれていて、とても寂しい思いがした。
もっといろんなことを教えてくださいと、すがりたい気持ちになった。
そして、亡くなった祖父母と、もっと話がしたかったなあ、とも。

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2015/12/01 13:07
さえらさん、コメント感謝です。

相変わらずですかww
私のブログにはあまり特徴がないと思いますけどね…^^;
でも共感していただけて何よりです^^

おお、かくて老兵、分布率高いですね。これは本当に面白くためになりますので、私もおすすめします。
文庫だから値段も手ごろですし。
私も、愛子さんのエッセイをもっと読みたくなりました。でもこれが、書店になかなか置いてないんだよなぁ…。
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2015/11/30 15:35
すっかりご無沙汰しております^^;
しかし、久しぶりに訪れてみて、良い意味での相変わらずな蒼雪節が、なんだか嬉しいです^^
うんうん、と共感の頷きを繰り返しながら読んでいました。

佐藤愛子さん。
何度も書店で「かくて老兵~」をお見かけしています。
あまりにも視界に入るので、無意識にセンサーが働いているというか、なにかしらのご縁を感じるのですが、今はちょっと読める状態ではないので、後ろ髪ひかれつつ書店を後にしています。
しかし、『つぎに読みたい本リスト』には確実に入りましたよ^^
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2015/11/30 11:03
ハルさん、コメント感謝です。

なるほど、ハルさんの心の師匠もご年配の女性ですか^^
厳しいあの時代を生き抜いた方々は、我々にはない知恵や美徳を持っている方も多いと思います。
礼儀作法や、生活の知恵、年配者を敬う気持ちとか。

でも愛子さんやハルさんの師匠のような考えを持つ人は、そう多くはないかとも思います。
人生をどう生きて、どう気づいたかが影響を与えるので…。
老兵は去るのみという言葉は、もう自分には何もできないという諦めと、次世代に託す思い(熱くはない)ですよね。
悔いはないという気持ちにも取れます。あんたたちしっかりおやりなさいよ、と。
この本を読むと、お年寄りの気持ちや考えがとてもよくわかります。

爆買いについては…お金だけもらっておいて、腹では相手をさげすむ心が日本人に根付いてしまう危険性があることです。
彼らのマナーの悪さは、悪意ではなく、あちらの教育や生活環境によるもの。誰も教えてくれない、それで痛い目を見ていないから、日本だけでなく世界各地で悪評を振りまいている。
しかしお金があるから、威張ってしまう人も出ている。自分の国が一番偉いと思い込んでしまう。これが問題なのです。
国交って首相や外務大臣だけの役目じゃない。国民同士の関わりも影響してくるんじゃないかなぁ…。
あと、マナーの悪さに迷惑している人もいますしね^^;

おおっ、ハルさん社長さんにプレゼントをもらったことが?(*゚Д゚*)
しかし返したハルさん、かっこいい!
私が同じ立場だったとしても、同じくしていたと思います。
ブランドもの=女性喜ぶ、と思い込んでいる男は愚か者ですよ。男尊女卑の精神も根強いでしょうね。
ブランド商品に固執する女性も、言っちゃなんですが浅い考えの人が多いです。そこは類友なんでしょうが。
本当、まごころが一番大事ですよ…。

あはは、ハルさんも町って言いますかww
ショッピングモールができる前は、町もにぎやかだったんですけどね…どこも一緒だなあ。深刻な問題でもありますが、これも時代ですよね…。
現在は町おこしに懸命です。そうしようとする取り組みは、とても良いですよね^^


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2015/11/29 12:57
ほお、佐藤愛子さんですか。
お名前は存じてはいたけれど、蒼雪さんと同じく今までその作品は読んだことがないかもしれません。
私のこころの師匠もまた、以前同じ職場にいた御歳七十の女性でした。
なんだかね、佐藤愛子さんと言うことがとても似ています(笑)
〜してもいいじゃないの、とか、〜もできるじゃない?とか……ゆるく可能性を広げる感じ。
ひとの話を聞くことの大切さや、俯瞰でものを見ようとするところは彼女に教わりました。
そんで佐藤愛子さんと同様『老兵は去るのみ』とも言っていて、ここまでちゃんと生きてきたひとは、その域に至るのかしらん…とちょっと不思議な感じです(笑)

まあ札束レイプは、やりたいひとが勝手にやれば別に構わないと思うかなあ…止められないし、それぞれだから。
もちろん金にモノを言わせるのは品がないと思うけども、資本主義社会である以上、お金はモノを言いますからねぇ……そういえば昔、愛人になってくれと、とあるシャチョさんがブランドモノを献上してきたけれど、そんなものはいらんのでと返した過去があります。
だっていらないんだもん(笑)
ブランドものをプレゼントすればなびくと思ってる発想の貧困さにドン引きですよね(笑)
結局そういう人間はお金さえ積めばひともモノも何とでもなると思ってるからあかんのでしょうなあ。
そんなものより、誠実な言葉の方がよほどこころは動くのに、ねぇ☆

あ、ちなみにハル地方でも街、町って言いますお♬そしてまったく同じようにそこは寂れてきていて、大型ショッピングモールの一人勝ちです^_^



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