アスパシオンの弟子73 逃亡王ポチ(後編)
- カテゴリ:自作小説
- 2015/11/28 18:32:17
ふああああ! シンクロ率回復! 漢字変換再起動!
ああ、力が。力がみなぎってきます。
そう……私。私は、変わったんです。
ウサギのペペさんに出会って、変わったんです。
前にすすむことを、知ったんです。
だからもう、石を投げられても逃げださない! と思います。た、たぶん……。
敵は、魔人。絶対死にません。ですがダメージを与えることは可能です。
とりあえず灰にしてしまえば、再生にかなりの時間がかかります。すなわち、勝利と同義。
さあ、相手の韻律を封じましょう。
『ぱ……パッチン・ウェーブ!』
両手を打って池から敵を吹き飛ばし、空間を真空にして韻律封じ。
いい感じです!
つ、次は――
『ろ、ろ、ロケットル・パーンチ!』
腕を飛ばして敵を地に固定!
ふうよかった。剣でふり払われそうになりましたが、本当に剣の補正は入れなくていいみたい。
「神獣大戦」の戦士系キャラの初期装備、たけざおと同じぐらいのスペックかしら。
私のものさしとなっているこの情報は、統一王国時代に流行った幻像遊戯。ピピ様とマエストロが浮島からもってきた端末を使い、一時期夢中になって対戦しておりました。端末から立体幻像が出てきて、がっぷりおつして戦う対戦遊戯です。
こんなことを思い出せるぐらい、今の私は余裕。だって敵は、私の腕の下でじたばた。
ふっ。総合レベル75なんて、「神獣大戦」の初販時のキャップレベルですもの。
機能更新とさらなる拡張機能を搭載したレベル解禁後のもの、すなわち大陸全土全国販売バージョンでは、初心者と同義。
魔道師タイプですから、韻律にさえ気をつければいいってことですね。
『パッチン・ウェーブ!』
真空波で韻律を唱えられないようにしてから、
『チェスト・ファイヤー!』
こんがりローストして、
『超合金ウサギ足!大回転キぃーック!!!』
や、やった! きれいに攻撃が入りましたぁ!
「い、いたい! いたいぞ! なにするんだ! ご主人様に言いつけてやる!」
なんだかこの相手、私に石を投げつけた魔王より弱いかも。
っていうか、なんだか私、すごくいじめっこみたい……
「躊躇するな! 踏み潰せ!」
肩に乗ってるメニスが叫んできます。
すると私もその気になりました。融合しているピピ様の意思が働いているからです。
現在のシンクロ率、99パーセント。なんてすばらしい! 私とピピ様はほぼ完全にひとつになっています。
『波動玉準備!』
私は腰を落とし、ロケットルパンチで放った腕をしゅしゅっと元に戻して、お股のところで両手を鉤形に構えました。みるみる波動の塊が、両手の中で固まって大きくなっていきます。
「テリエ、テリエ……」と泣きじゃくりながら、わさわさと這ってくる真っ黒こげの敵。
私はそいつに、溜めきった波動をぶっ放しました。
『必殺波動玉! ニンジン、ぶしゃー!!!』
やった! やりました! 敵が粉々にちぎれながら、白い寺院の向こうに吹き飛んでいきます。
被弾ゼロ! 対戦、勝利ー!
私は池から走り出て戦神の剣をひろい、肩に座っているメニスに預けました。
それから寺院の西の端の塔の中ほどをひっつかみ、てっぺんの部分をぼっきんともぎとりました。お菓子の箱からチョコのボールを出すように、手のひらの上で振ると。
「きゃああああ?!」
ちっちゃなメニスの子がぽとりと落ちてきました。
ピピ様の脳情報では、これはフラヴィオスという子です。探していた、メニスの子です。
私はその子も肩に乗せ、南へ走りだしました。るんるんとスキップしながら。
街に住むメニスの人々が悲鳴をあげて、通りから逃げていきます。
ごめんなさいね。ちょっとどいてくださいね。
私はあやまりながら、どっすんどすすん進みました。おうちはこわしてません。ええ、一軒たりとも。
『寺院の地下から以外に、聖域ってところへ行ける道はある? ノミオスたちと合流したい』
肩に乗っている大きい方のメニスに聞くと、いったん地上に出ろと言われました。そこへいたるとても古くて秘密の抜け道があるのだそうです。直接、聖域へ至る道が。
「でもそこはとても狭い。このお化けウサギは入れないぞ」
『え……』
そういわれて、私はとても、悲しくなりました。
私、ピピ様と一緒に行けないんですか? お別れしないといけないんですか?
せめてお化けなんて呼ばないで。全身に水草生えてるのはしかたないじゃないですか。数百年ほど、水の中にいたんですから。
身をかがめて南の抜け穴を通り抜け、続く縦穴をえっほえっほと這い登っていますと。
突然。無数の真っ白い蝶々に我が身が包まれました。
これは……
「くそ! アイテリオンか! 里に戻ってきたんだな」
タカサゴノセキからピピ様の叫び声が!
いきなりシンクロ率が下がりました。なんと敵の親玉がすぐ近くにいるようです。
私はなんとか穴の外、すなわち地上に出ましたが、そこで蝶々たちに固められ、うんともすんとも動けなくなってしまいました。
「メイテリエ! ヴィオを連れて聖域へ行ってくれ! ここは俺が食いとめる! ポチ! パッチンウェーブで蝶をつぶせ!」
はい! ピピさま!
『パッチンウェー……』
ぐぐぐ。ががが。い、いったいどれだけのチョウが……。
かんせつのすきまにはいりこんできて、カラダがう、う、うごきませ……
「ポチ!」
ピピ、さま。もう、だめデス。
ピピさまを、タカサゴノセキから、射出、します。
「ポチ! まて!」
だいじょうぶです。ワタシがひとりでくいとめます。メニスといっしょににげて、クダサイ。
「でも!」
だいじょうぶ。いまから、ちょうごうきんのそうこうを、はれつさせます。そのすきに、どうか、にげてクダサイ。
ピピさま。どうか、おたっしゃで――
「だめだポチッ!」
そうこう、はずし、マス――!!
「ポチイイイイイイイ!!!」
……ァァァァアアアアアアア!
はずかしいいいいいいい!
ワタシはだか! はだかはだかはだかー! いやああああ!
でもっ! だいじょうぶ!
ワタシ。ワタシは。
にげあしだけは、ハヤイ! デエエエエエエス!
せかいいち! ハヤイ! デエエエエエス!
びぶらびばー!!
すたこらさっさモードきどう!!
はしる。はしる。はしる。はしるううう!
うぉおあああああああああああああああ!
はしるはしるはしるはしるはしるはしるはしるはしる!!
めにもとまらないデス。ひかりのそくどでいどうしてマス。だーれもおいつけないデス!
ほーらもう、きたのしゅうにきマシタ。
ほーらもう、きたのうみにきマシタ。
マッハ! マッハ! マッハアアアアア! マッハでおよぎマース!
ほらもう、しおのみずうみがみえてきマシタァア!
ふぉおおおおおぁあああああああ! スライ、ディーング!
……。
……。
……。
はあはあはあはあ。
ああ、こわかった……。
やっぱりこのしおのみずうみの、ソコにあるオンセンはさいこうデス。
ここが、いちばんおちつきマス。ああ、ぬっくい。
しかしワタシ。
おもいっきり。ピピさまをおいぬかしたような、キがするんですけど。
……。
……。
まあ。いいか。
ひさしぶりにうんどうしたら、つかれマシタ。
しばらく、ソコにしずんで、やすみマス。
ピピさま。
どうか。
どうか。
ごぶじで。おげんきで。
では。
おやすみ。なさ。い。
読んでくださってありがとうございます><
いよいよ大団円? へむけて一気に進んでいきたいと思います。
ここまで毎回読んで下さり、感想をいただきまして
いつもはげまされておりました。本当に本当にありがとうございます><
最終章は以前書いたものにすべてつながるようになっていくかと思います。
結末も楽しんでいただけますよう、がんばります。
感想をひと言と思い、コメント欄を開きましたら
↓Sianさんのコメントに目がとまりました。
なんと、これから最終章に入るのですね。
いよいよ、目が離せなくなりました。
時空を超えての物語なので、時折、記憶を手繰
り寄せながら、楽しく拝読しております。
m(_ _)m
読んで下さってありがとうございます><
光の速度で逃げましたw
これからいよいよ最終章です。
ヴィオパパに勝てるかどうか、ぺぺの正念場であります。
戦いを見守って下さいましたらとてもうれしいです。
読んで下さってありがとうございます><
温泉はやはり居心地がいいのでしょうね^^
私も入りたいですー。
2つの課題をクリアして
ハヤテのように去っていくポチ1号・・・
取り残された感じのペペさんには大ボスの影^^;
ペペさんがどういう手を打ってくるか。続きがとても楽しみです。
いつも楽しいお話をありがとうございます♪
これからどうするのですか?
お題:秋冬に欲しいアイテム
さむいときにはぬくいオンセン……マイ温泉が、ほしいです@@
え、買えない……?>ω<;