アスパシオンの弟子81 ウサギ魔人(後編)
- カテゴリ:自作小説
- 2016/01/22 20:52:23
ごととん、ごととん、とポチ四号が音をたてて線路を走る。蒸気の煙を吐きながら、ファイカから遠ざかる。
赤毛の子が乗ってる運転士席から、車両連なる後方をみやるウサギな俺。兄弟子さま。そして、ウサギの着ぐるみ魔人。そして貨物には、ハッピーモフモフランドのウサギたち。
ウサギ頭をかぶっていると落ち着くというので、俺は我が師の好きにさせてやることにした。こういうのはなるべく刺激したり強制したりしない方がいい。それにウサギにこだわりを見せたということは、我が師に戻ってくれる片鱗があるということだ。これをとっかかりに少しずつよくなっていけばいいんだが……。
エティアに入ったポチ四号は、ジャンクションでポチ二号と遭遇した。
「おじいちゃん!」
鉄兜のウェシ・プトリが満面の笑みで俺を迎える。
「潜みの塔の姉さまから伝信よ。培養カプセルにいれたとたん、レモンが目を覚ましたって」
「ぶ、無事か? 無事なのか?」
「体はまだちょっと動かせないみたいだけど、しっかり意識はあるって」
酸素欠乏症で脳神経が麻痺したのか? でもよかった……。うう、頬が熱い。もしかして俺、赤くなってるのか? レモン、俺のために必死だったもんな。感謝してもしきれない……。
しかしウェシ・プトリは最後に会った時よりずいぶん背が伸びたな。俺とフィリアが初めて出会った時そのものの姿になってる。
フィリア。
そういえば、彼女は元気だろうか。
「フィリアはメキドの王宮でヴィオに監禁されてる」
安否を聞くと、兄弟子さまは苦虫をつぶしたような顔になった。
「あの子をえらく気に入ったヴィオが離さない。ハヤトにウサギをとられて激怒してるから、何か危害を加えられないか心配だ」
「まずはメキドへ。ウサギをヴィオに返します」
俺はジャンクションに詰めてる妖精たちと一緒に、メキドとエティアを結ぶポチ二号にウサギたちを詰めかえ始めた。
「ヴィオを味方につけましょう」
「そんなこと可能なのか? あいつ、ほんとにおかしくなってるぞ」
「大丈夫です、兄弟子さま」
ポチ二号の後続車両にいっぱいのウサギ。こいつらがいれば。
俺はどん、とモフモフな胸を打ち叩いた。胸を張り、自信に満ち満ちた顔で。
「任せてください!」
こうしてウサギたちをつめこんだポチ2号は、一路メキドの王都へと走り出した。ふしゅうふしゅうと蒸気を吐き出し、ごっとんごっとん重たい車輪を回しながら。
運転席には、鉄兜の娘。
そしてウサギな俺。兄弟子様。だまりこくるウサギ魔人。
「きついのよ! おじいちゃん以外、石炭山に行って」
「えーっ。プトリちゃんケチ」
「ちょっと! 摂政さま、スカートめくろうと狙ってるでしょ」
「……そうですよ。僕のお師匠さまみたいなことしないでください」
「ま、まあまあみんな、狭いのは事実だから。俺以外石炭山に座ってよ」
「なにいってんだ、この鉄面皮ウサギが!」
「……そうですよ。僕のお師匠さまだって不当だって怒りますよ」
「もおおおお! そのウサギ頭が場所とってんの!」
「ごめんプトリ、ポチ2号って、ほんと4号より運転席狭いわ。時間できたら改造す……ふごおっ!」
「きゃあおじいちゃん! つぶれないで」
運転席はおしあいへしあい。俺は何度も運転席から落ちかけたりぺしゃんこになりかけたりした。見かねて鉄兜娘が抱っこしてくれたので、兄弟子さまが嫉妬のあまり頭をかきむしり、ウサギ魔人は腹いせのごとく、運転席のどまんなかにでかいウサギ頭を鎮座させた。
これが……僕らの大行進の始まりの始まり。
勝利へとつながる道の、起点――。
ポチはひたすら南へ走った。
緑の巨木香るメキドへ。
いつもお読みくださり、ありがとうございます><
やっと三人まとめられました;
いろいろ不安要素があるハヤトとエリクですが
年季が入っているぺぺがどこまで助けられるか。
結局黒の二人にお株をとられそうな気もします^^;
ラスト三~四話をめどに、王道的に締めにかかりたいと思います。
お忙しい中、お読みくださってありがとうございます><
こつこつ長い準備期間を経てきましたが、
はたして神様級の人に勝てるのかどうか。
ぺぺの作戦が無事成就するといいのですが……
対峙まであと少しです。
いつもお読みいただいてありがとうございます><
負けられません。ぺぺはそれなりの覚悟をもって挑むのでしょう。
ぺぺの勝算とは何か、ちゃんと結実するのか
見守って下さったらうれしいです><
準備は万端、細工は流々。
あとは行くだけ^^
ペペさん、お師匠様、兄弟子様・・・
人も時間も原点に揃って走り始めました。
旅路の先には・・・
続きがとても楽しみです^^
いつも楽しいお話をありがとうございます♪
今回も楽しく拝読しました。
短くても感想をと思いつつ、時間がとれず申し訳ありません。
やっと、過去から現在に到着しました。
これからどうなるのでしょうか。
やはり戦いは勝たないと・・・。
勝てば官軍負ければ賊軍
・・・・と言いますからね。
(*^▽^*)
次作を心からお待ち申し上げます。
m(_ _)m