【続きが】神の社 肆【出てきた】
- カテゴリ:日記
- 2016/02/07 22:46:41
ひたりひたりと長ったらしい廊下を一人の童が進んでゆく。
じゃらじゃらと足に纏わりついた鎖が喧しい音を立てる。
辿れば辿るほど飛び散る血の量と鉄の臭気は増していった。
くらくらと麻薬のように血の匂いは鼻腔を擽る。
一定の間隔で音を立てる鎖はさながら催眠術で使われる振り子の様に思考を白濁させ、避けていたはずの血痕もいつの間にやら気にならず、童の白い脚は血で紅く濡れていた。
幾度も角を曲がり、飽き飽きするほど血の紅を瞳に映す。
___こんなに、屋敷は大きかっただろうか。
そう思ってしまうほど。
もう考えるのも馬鹿らしい。
そもそも自分はこの屋敷のことを多く知らないのに。
自分が知っているのは、自室と、厠と、祭殿と、自室の窓から見える庭の様子だけ。
それ以外を瞳に映すことは固く禁じられていた。
理由など知らぬが、父や母がそう言うのであればそれが正しいのだろう。
だから、特に自由になれたことの感慨も湧かなかった。
とっくの昔にそんな風に思える幼心もなくなってしまったのかもしれない。
いや、最初からそんなものがあったかどうかも謎だ。
無言で足を進めるうちに、麻薬のような血の匂いのせいだろうか、いつもなら考え付かぬとりとめもない記憶が頭を過り始めた。
中庭の椿は咲いているだろうか。
枯れかけた柊は大丈夫だろうか。
今年も池の睡蓮は咲くだろうか。
振り返ってみれば可笑しい程に自分の記憶が朧げで偏っていることに気が付く。
父の顔も母の顔も使用人の顔も誰一人として思い出せないのに、窓から見える庭の景色ばかりよく覚えている。
椿の紅も、柊の棘のある葉の形も、睡蓮の花弁も。
どれもこれも直ぐに思い出せる。
父の仕草も、母の声も、使用人の髪色も。
これらはどれ一つとして思い出せなかった。
____
偶然パソ子の中に発見したのでつい
放置してた続きの様な物だとおもう…たぶん
ちょっと!!!!続き!!!!
楽しみにしてた!!!!めっちょ気になる木!!