アスパシオンの弟子 その言葉を、あなたに。(後)
- カテゴリ:自作小説
- 2016/03/06 20:08:06
あ……ら?
私どうしたのかしら。地に横たわって。
新しい次元は……閉じましたよね? 振動箱のスイッチを、二人で押したはず……。
「う……うん。新次元はちゃんと閉じられたよ」
ウサギ? どうして、はらはら泣いているのですか? 私たち、アイテリオンに勝ったのでしょう?
「うん。勝ったよ」
ではそんなに哀しい顔をすることはありませんよ。大団円、ですよね。
「で、でもアイテリオンが最後っ屁で光弾放ってきて……あ、アイダさん、俺をかばって……し、心臓打ち抜かれてっ……」
あらまあ。だから胸がとても痛いのですね。
「あらまあ、じゃないよぉ! 大精霊ぽんぽん出してたくせに、どうして自分に結界張ってなかったんだよ?! しかもなんで俺をかばうの?! 魔人の俺を!」
だってかわいいウサギに大穴が開くなんて、私の心臓が哀しみで吹き飛びます。
「冗談じゃなくてほんとにアイダさんの心臓が吹き飛んだんだよぉ!」
どうか泣かないでください。たぶん大丈夫ですよ。最悪これで死んでも、大丈夫ですよ。記憶は保持されますし、また転生すれば、魔力がさらに倍になって生まれてこれますから。
「だめ! 死なないで!」
引きとめてくださるんですか? 私はレティシアやハヤトとは別物ですよ? あのアイダですよ。あなた、私がこわくてたまらないでしょう?
「そんなことない! 逝かないで! 俺、まだ言ってないっ。アイダさんに言ってない!」
ウサギ。なぜそんなに血相変えて迫ってくるのです?
「あ、あ、あ、あ、愛し、てる……!!」
え……? その言葉は……
「レティシアには何度も言ったよ。お師匠さまにすら言ったのに、アイダさんには唯の一度も言ってない。でもこの言葉、ずっと言いたかったんだ。ずっとずっと、アイダさんに言いたかったんだ。なのにひとことも俺の気持ちいわせてもらえないで、アイダさんたらひとりで勝手に島降りて死んじゃって……。それでまた俺を置いてくなんて、許さないからっ!」
ウサギ……。ピピちゃん……。泣かないで。
ありがとう。これで本当にもう、思い残すことは……
「だめ! アイダさん!! 消えないで! アイダさんこそ俺の、俺の……」
また会えますよ。私たちの魂は不滅です。
きっとまた、ひと目でわかりますよ。
「だめええっ! 俺の、伴侶なんだからぁああっ!!!」
……お……? おや?
なんだ? 腹がぬくいぞ。
あれ? 腹の上でウサギが泣いてる。こいつは……
「ぺぺ?!」
「うぁああああん!!」
ひ?! なんて泣き声だよ。ていうか、ここどこだよ。
うわ?! 俺の周り、ウサギだらけ?!
「大丈夫う? ヴィオ、すごく心配したよぉ?」
これ、俺が集めたウサギたちか? なんでヴィオとウサギがここに……
ひええ、あたり一面すっげえ廃墟。残り香的に漂ってる魔法の気配のすさまじいこと。肌がぴりぴりするわ。だれか大精霊召喚したなこれ。すげえ。だれよこんな、節操なくぼんぼん破壊活動こいたの。
――「おまえだよ」
あ、エリク。って、おまえ大丈夫? 今にも死にそうにうっすら輝いてるぞ? 両脇から支えてるアミーケとフィリアがすっげえ心配顔だ。
「ちいっと無理しちまってな。近いうちにお迎えが来そうだわ」
ええ?! 一体どんな無理をしたんだよ?!
「本調子じゃねえのに六翼の女王になって暴れたからなぁ。寿命かなりちぢんだわ。まあ、ピンクウサギの着ぐるみ頭のバカが暴走したせいだわ。つまり、おまえのせいだわ。勘弁しろって」
え?! えええ?! 俺が一体何したっての?!
ぺぺは、時の泉にぶちこまれたんじゃないの? いつ出てきたの? プトリちゃんまでいるじゃないか。なんでこんなところにみんなでいるのよ?
俺、今まで一体どうしてたんだ? ぺぺが処刑されたのがショックで、ベッドに身を投げ出して泣き濡れて……それからずっともやもやと夢を見てたような気がするんだけど……。
そんでさっき突然目の前に銀髪のお姉さんが現れてさ、起きろとかいわれて、平手打ちビシャッて夢の中でくらったんだよなぁ。あの人、ほんと絶世の美女だったわ。おかげで目が覚めた……んだけど。
俺の目の前にはでっかい穴がある。どうやら神殿のような建物があったらしいが、その床がすっぽり抜けて、深くえぐれている。
深く。深く。地の底にまで届きそうなぐらいに。その底は真っ暗だ。
ここで何かが起こり、そしてどうにか落着したようだ。
漂っているすさまじい魔力の余韻が、びりびりと空気を震わせて響きわたっている。
それはまるで、歌のようだった。輝かしい勝利を、言祝ぐような……。
「戻ってよおおっ」
え? ぺぺ、なんだって?
「アイダさんに、戻って!! 今すぐ戻ってええっ!!」
うわ、きたねえ。鼻水だらだら垂らして泣くんじゃねえよ。胸が濡れるだろうが。って俺の胸何これ。宝石が埋まってる? ぴかぴか点滅してるぞ。
「ぺぺがおまえに、自分のオリハルコンの心臓を与えたんだ。この場で緊急手術してやったのはこの私だが……まあ、適当に血管繋いだにしては、ちゃんと稼動しているようで何よりだ」
アミーケが俺にペペの心臓を? なんてこった。心臓提供したペペは大丈夫なのか?!
「アイダさぁああん! うぁああああん!」
ひ。胸に大穴開いてるのに元気に泣いてやがる。魔人ってほんとすげえな。
でもアイダって誰よ。おい、そんなにギリギリ俺を睨むなよ。戻れって、どういうことよ。
「こんなむさいおじさんはやだっ! 俺は断固拒否する!」
俺だと? なんだこのウサギ、ちょっと見ない間にずいぶん柄が悪くなってるぞ。
「ハヤト! 今すぐアイダさんに戻れ!」
しっ……師匠に命令?! なんだそれは! なんて口のきき方だこいつ!
「銀髪がいい! 目は紫にして! 今すぐ腰の下まで髪伸ばせ! 百歩譲って赤毛の長髪でもいい! だがスズメの巣みたいな黒髪に不精ひげとか! おまえはダメだあっ!」
な?! 弟子にダメ出しされるいわれはねえわ! このや――
「ぺぺ!? お、おい大丈夫か? こら、いきなり倒れるな! ぺぺ!」
「まあ、泣きたい気持ちはわかる。本当によくわかる」
エリクを支えてるアミーケがしみじみとため息をついてやがる。
つまりアイダってのは……俺とは正反対のもの? 綺麗な女、とかなのかぁ? と、ととととにかく!
「たのむ! ぺぺをなんとかしてやってくれ!」
「ああ、すぐに新しい心臓を造って入れてやる。その心臓とおそろいのやつをな」
アミーケの言葉に俺はホッとして、意識を失ったウサギを抱きしめた。
この毛ざわり。ほんと最高だ。やっぱりこのウサギは抱きがいがあるよ。
きめこまやかな白いふわわふの毛。血統にアンゴラが入ってるのかな。
しかしなぜだろう、心の中にはちきれんばかりに幸福感があふれている。
なんだろうこれは。わからない。よくわからないけど……
「心臓、ありがとうな」
俺はウサギにほおずりした。
えもいわれぬ幸福な感覚が俺を包んだ。
ふわりと、柔らかく。
お読みくださってありがとうございます><
ハートは、アイダさんへのメッセージなのでしょうね^^
ハート型、じつはプロトタイプポチ一号にもつけられていたのですが、
ソートくんにあえなく逆ハート型にされてしまっています。
(タカサゴの席の部分がはぁとで塗装されている模様)
改造ビフォーアフターイラストはこちらに掲載→http://8893.mitemin.net/i173418/
ポチ製造にもアイダさんが大いに関わっていたのだと思われます^^
お読みくださってありがとうございます><
うふふ♪ のアイダさんのはんぱない無双でした~。
いよいよ終幕です^^
ハート型のボタンを押すために、
二人で一緒に押すために、
遥かな時間をペペさんは生き続け、
アイダさんは何度も生きた。
決着がつきましたね^^
それぞれの人がそれぞれの日常へ帰っていくのでしょう。
物語の結びに向けてペペさんたちの気持ちがどう語られて
いくのか、とても楽しみです。
いつも楽しいお話をありがとうございます♪
カテゴリ:ファッション
お題:この春やってみたい髪型。
心臓いれられて復活しても、泣いて愚痴りまくるウサギ。
「いますぐ腰まで髪伸ばせええ! ウワァァ-----。゚(゚´Д`゚)゚。-----ン!!!!
早く髪の毛まっ白に染めてよぉっ!」
銀髪の長髪、美しいですね。綺麗ですね。どきっとしちゃいますね^^