アスパ番外編 ほむらちゃんと私 第1話 (前編)
- カテゴリ:自作小説
- 2016/04/05 22:08:49
本編でぺぺたちとはぐれてしまった赤猫剣。
あれからどうなったのかの後日談です。
赤猫剣の一人称、でお送りします。
あれからどうなったのかの後日談です。
赤猫剣の一人称、でお送りします。
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……こんばんは。
……こんばんは。
って今、夜? 昼? 解りません私。
とりあえず、あたりがまっ暗いのでそう挨拶いたします。
あら、お返事がありませんね。
この方、喋れないのかしら。
人間の顔が描いてあるので、お話しできるかとおもったんです。
これって、盾ですよね。銀色で円くてぴかぴか光ってて男前。
目のところに宝石がふたつも嵌ってますし、人工精霊のひとつやふたつ突っ込まれてても、不思議じゃないと思うのですけど。
しかしほんと、ここどこなんでしょうねえ。
まっくらで皆目わかりません。
あ、えっと、私、剣でございます。
大鍛冶師ソートアイガスとその手下のピピという、二人の極悪灰色導師に改造されてしまいまして。なんだか気分が変なことになっております。
ここ数年ピピにこきつかわれておりましたが、つい最近、メニスの里で赤毛のおねえさまたちに託されました。
おねえさまたちはソートアイガスの娘さんたちで、大変かわいらしいのです。
ですので私、おねえさまたちを守るべくがんばっていたのですけど。残念ながら、はぐれてしまいました。
おねえさまたちがメニスの子と一緒に、こわいメニスたちから逃げたものですから、ちょっとお手伝いしたのです。
ところが出力出しすぎちゃって、目を回して気絶してしまったんです。
そうして目覚めたら――ここですよ。
なんか狭そうな、倉庫。
広刃の美しい剣である私の向かいには、男前の銀の盾。
私の右隣には、美人な象牙の杖。
そして私の左隣には……
『エクスちゃん、頭かゆーい。かいてえ』
プラチナの柄は鳳凰の象嵌。淡い緑の金剛石の人工精霊。刀身真っ赤で竜の模様。
『ねえー、とさかのところがかゆくってさあ。特別にさわらせてあげるからかいてよお』
ちっ。なんなのこいつ。見目はそこそこですけど、私より性能悪そうな剣ですね。
『エクスちゃん、頭かゆーい。かいてえ』
プラチナの柄は鳳凰の象嵌。淡い緑の金剛石の人工精霊。刀身真っ赤で竜の模様。
『ねえー、とさかのところがかゆくってさあ。特別にさわらせてあげるからかいてよお』
ちっ。なんなのこいつ。見目はそこそこですけど、私より性能悪そうな剣ですね。
出身どこですか? 青の三の星じゃないですよね、あなた。
『生まれた場所? あー、たしか紫の四の星?』
なんですかそこ。きいたことないです私。
『海も湖もあまーいところよ。そこじゃ生き物の血がみんな砂糖みたいに甘いのよね』
え。血が甘い? それって甘露を出すメニスのことじゃないですか。
まさかあなた、五塩基生物が生息する星から来たっていうんですか?
『ごえんき? なんかしらないけど、メニスって呼ばれてるやつらがあたしをつくったみたい。生まれた時の事はあんまりおぼえてないのよねえ。メニスたちと一緒に、この星までどんぶらこっこしてきたのはよくおぼえてるけど』
一人称が女性形。てことは婦女子ですか?
『ふじょし? ああ、ここの星のやからはなんか、性別っていうのがあるみたいね。あたし女じゃないわよ』
え。まさかおかま?
『なにそれ~。エクスちゃんたら、ときどきあたしの辞書にない単語使うわねえ』
ああ、そういえばメニスは性別がないんでしたね。ジェンダーの概念はないって聞いてます。
攻めと受けはあるみたいですけど。
お名前を伺ってませんでしたけど、メニスの間ではあなた有名だったんですか?
もちろん雷球ぐらい繰り出せますよねえ? いやいや、かまいたちとかは無理でしょうけど。
ちらっ。ちらっ。
『雷なんて、ぶっそうねえ。あたし最近レギスバルドって呼ばれてるわね。他にも百個ぐらい御主人様たちから名前をもらったけど、一番のおきにいりは、かがやくほむらのりゅうごろし、かしら』
なまえ百個? 主人百人? なんなのこの尻軽。
『雷なんて、ぶっそうねえ。あたし最近レギスバルドって呼ばれてるわね。他にも百個ぐらい御主人様たちから名前をもらったけど、一番のおきにいりは、かがやくほむらのりゅうごろし、かしら』
なまえ百個? 主人百人? なんなのこの尻軽。
私なんか一万一千歳すぎましたけど、主人はまだ二十三人しか娶ってませんよ。
ふたつ名だって十個ぐらいしか……
あの、おいくつ? そのぴかぴか具合からしたら、一万年はいってませんよねえ?
『んー? たしか今年で五万と二百五十歳? でも私めんくいだから、御主人様はまだ百人ぽっきりなのよねえ。メニスのご主人さまが大半だったけどお、ここ最近は人間もちらほら主人になってるわよ。金髪の修道女とか、かわいらしい女王様とかいたわね。最近は巨乳の女将軍とか?』
きょにゅう……。
『んー? たしか今年で五万と二百五十歳? でも私めんくいだから、御主人様はまだ百人ぽっきりなのよねえ。メニスのご主人さまが大半だったけどお、ここ最近は人間もちらほら主人になってるわよ。金髪の修道女とか、かわいらしい女王様とかいたわね。最近は巨乳の女将軍とか?』
きょにゅう……。
ってみんな女性?! なにそれ……ごくっ。う、うらやましい。
『ほらあたしって高性能だから? 身づくろいも自分でできちゃうのよね』
え。なにそれ。
『ほらあたしって高性能だから? 身づくろいも自分でできちゃうのよね』
え。なにそれ。
柄の根元から、白くて細い、先がそれぞれ五本の指に分かれたようなものがしゅるしゅるって……
まさかそれ……手?! 手なの?! 手なんですか?!
『え? 手にきまってるじゃない』
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
『え? 手にきまってるじゃない』
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ええええええええっ?!
ああ……ああ……! 細い手が柄の鳥さんの頭かいてるううう!!
『でもね、人にやってもらうっていうのが、嬉しくて素敵なことじゃない? だからエクスちゃん、こんなふうに頭かいてよ。え? うそ、まさか手がないの? うそお! 喋れるくせに手がないのお? もしかして、足もないわけ?』
え……ふ、ふつう、け、剣にはないでしょう?
『ええーっ? メニスが作る剣には、みんな手足ついてるわよお? やだあ、エクスちゃん信じらんない~。人工精霊剣なのに、手足ないなんてー』
ひっ。剣先からほそい足がにょきっ?! マジ?!
『でもね、人にやってもらうっていうのが、嬉しくて素敵なことじゃない? だからエクスちゃん、こんなふうに頭かいてよ。え? うそ、まさか手がないの? うそお! 喋れるくせに手がないのお? もしかして、足もないわけ?』
え……ふ、ふつう、け、剣にはないでしょう?
『ええーっ? メニスが作る剣には、みんな手足ついてるわよお? やだあ、エクスちゃん信じらんない~。人工精霊剣なのに、手足ないなんてー』
ひっ。剣先からほそい足がにょきっ?! マジ?!
まさかそれ、足?! 足なの?! 足なんですか?!
『足にきまってるじゃない~』
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
『足がなかったらご主人さまのもとに走っていけないじゃないの。まさかご主人さまにご足労をかけるなんて、とってもはずかしいことだわよ、エクスちゃん。手足装備は主人持ち剣のデフォよ?』
で……ふぉ……!?
『足にきまってるじゃない~』
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
『足がなかったらご主人さまのもとに走っていけないじゃないの。まさかご主人さまにご足労をかけるなんて、とってもはずかしいことだわよ、エクスちゃん。手足装備は主人持ち剣のデフォよ?』
で……ふぉ……!?
あああああああああああっ!
なんで手がないのでしょう私。
なんで足がないのでしょう私。
つ、作った人! ちょっと! 作った人どこ! 文句言わせて!
あ。ああ……そういえば。
喰っちゃってました。腹いせに。
忘れてました。だいぶ昔の、ことなので。
一万一千年前……。
いちまん……。あっちはごまん……。
一万年って、まだ、だいぶ昔じゃないのかも。
まだまだ我が身はぺーぺーだということを、本日思い知った私です。
どうやってあの騎士団営舎までいくんでしょうか……。