アスパ番外編 ほむらちゃんと私 第1話 (後編)
- カテゴリ:自作小説
- 2016/04/05 22:11:39
さて、美しい広刃の剣たるこの私、通称戦神の剣、
フランベルジュ・デ・ルージュことエクスカリヴルヌス・ノヴァ・ヘヴェス・ウェルシオン・トリブス・バージョン776は、
ピピという名の灰色の導師が居る塔にもどりたかったのでありますが。
この狭い倉庫を訪れる人は、それからざっと三百時間ほどございませんでした。
その間、私の位置は一ミリも変わらず。
向かい側には男前の銀の盾。
右隣には美人な象牙の杖。
そして左隣には――
……。
……。
あら、いませんね。ああ、そういえばあの方、歩けるんですよね。手もありますし。
じとっ。じとっ。
『エクスちゃん、なんでそんな鬱々とした波紋波動放ってるの? あたしはここよぉ』
ああ、そこにいましたかレギスバルトさん。
『ほむらちゃんって呼んでっていったでしょ。ぶすくれちゃって、あたしが定位置にいないんで不安になっちゃったの? やだぁかわいい!』
あのう、私の真上で懸垂してるとか、いったいなんの冗談ですか。
『ちょうどここに梁が通ってるのよ。だからね、腕の力がなまらないように鍛えてるの』
ああ、その細っこい手を鍛えてるんですか。
手……。
ううう。じとっ。じとっ。
『そうよぉ。御主人様がもし攻撃の衝撃で私を手放しちゃっても、私がしっかりつかんでおけば、離れ離れにならないでしょう?』
ああ、そうですね。ご主人さまから決して離れないようにするのが、そのために手を標準装備しておくのが、主人持ち剣のデフォですよね。
『エクスちゃん、なんでそんな鬱々とした波紋波動放ってるの? あたしはここよぉ』
ああ、そこにいましたかレギスバルトさん。
『ほむらちゃんって呼んでっていったでしょ。ぶすくれちゃって、あたしが定位置にいないんで不安になっちゃったの? やだぁかわいい!』
あのう、私の真上で懸垂してるとか、いったいなんの冗談ですか。
『ちょうどここに梁が通ってるのよ。だからね、腕の力がなまらないように鍛えてるの』
ああ、その細っこい手を鍛えてるんですか。
手……。
ううう。じとっ。じとっ。
『そうよぉ。御主人様がもし攻撃の衝撃で私を手放しちゃっても、私がしっかりつかんでおけば、離れ離れにならないでしょう?』
ああ、そうですね。ご主人さまから決して離れないようにするのが、そのために手を標準装備しておくのが、主人持ち剣のデフォですよね。
わかってます。わかってますとも。
でも真上でやるのはやめてくださいませんか?
私落ち着きません。いつ降ってこられて突かれるかと、気が気じゃございません。
そう申しますとレギス――えっと、ほむらさんは、私はそんなへまはしない、なにせ握力は500キロあるのだと仰いまして、えんえん私の頭上で懸垂しておりました。
それで私がいらっ、いらっ、としておりましたところ。
そこでようやく、倉庫らしきこの場所の扉らしきものが開いたのでございます。
中に入ってきたのはなんとまあ、目も覚めるような蒼い髪の美少女。
『ご主人さま!』
ほむらさんはその少女が入ってくるなりそう叫び、すとんと床に着地。すたたたたと自慢の足を駆使しまして、美少女のそばへとかけ寄りました。
『ご主人さま、ご主人さま、ご出陣ですか?』
自慢の手をわきゅわきゅ動かして、今にも美少女の腕にすがりつきそうなほむらさん。
『ご主人さま!』
ほむらさんはその少女が入ってくるなりそう叫び、すとんと床に着地。すたたたたと自慢の足を駆使しまして、美少女のそばへとかけ寄りました。
『ご主人さま、ご主人さま、ご出陣ですか?』
自慢の手をわきゅわきゅ動かして、今にも美少女の腕にすがりつきそうなほむらさん。
しかし蒼い髪の少女は、そんなほむらさんに一瞬びくっと引いただけ。
無言で、私の右隣にある美しい象牙の杖を手にとりました。
『ご主人さま、あたしがいれば、韻律など毛ほども必要ありませんわ』
ほむらさんは食い下がりましたが、美少女は杖だけもって倉庫から出ていきました。
『ご主人さま……』
私の左隣にもどってきたほむらさんは、がっくり意気消沈。
『ご主人さま、あたしがいれば、韻律など毛ほども必要ありませんわ』
ほむらさんは食い下がりましたが、美少女は杖だけもって倉庫から出ていきました。
『ご主人さま……』
私の左隣にもどってきたほむらさんは、がっくり意気消沈。
外からはすぐに、なにやら喧騒が聞こえてまいりました。どうやら戦ごとが始まったよう。
ここはどこかの屋敷の武器倉庫、そして敵襲を受けたのでしょう。
大いなる魔法の気配がびんびんと、倉庫の壁を震わせています。
少女のあの蒼い髪。身ごろを前で重ねるような衣服。あれはスメルニア系の血筋でしょうか。
私が赤毛のおねえさまたちとはぐれたところは、たしか北五州。
あそこからスメルニアの大皇国は、はるか東。山脈を越えねばなりません。
私、はるばる皇国まで運ばれてきたんでしょうか?
一体誰に拾われたんでしょう?
倉庫の外壁がぶるぶる震えています。
杖を持っていった少女は屋敷やここに結界を張ったのでしょうが、それが脅かされているのです。
結界ごと、激しく揺さぶられています。
外で繰り広げられているのはおそらく、韻律の応酬。
攻める力。抗う力。
そのどちらとも、黒の寺院の神聖語による韻律とは音波系統が少々違うようです。
黒き衣のダンタルフィタスのように、寺院で技を修めたものが使う正統なものではなく。
荒削りなところがあるといいますか、亜流といいますか……
『ああ、ご主人さま……! あたしを使えばいいのに!』
ほむらさんはいらいらと地団駄をふんでおりましたが。
『ああ、ご主人さま……! あたしを使えばいいのに!』
ほむらさんはいらいらと地団駄をふんでおりましたが。
ぼん、と倉庫の壁に穴があいたその時。
『ご主人さまああ!』
血相を変え――すなわち真っ赤な刀身をまっ白にして、すたたたと自慢の足で外へ駆けていきました。
『ご主人さまああ!』
血相を変え――すなわち真っ赤な刀身をまっ白にして、すたたたと自慢の足で外へ駆けていきました。
わ、私も自分で動きたいのはやまやまなのですが。せめてこの倉庫に防御波動をはって、身の安全をはかりたいところなのですが。
おなかが空きすぎていて、思うように力が出ません。
なんとか念動の波動で我が身を動かそうとしておりますと、あいた壁からぎゅん、と光弾が飛んでまいりました。
ひい!
脇をかすった光の玉は、私の向かいの銀の盾に直撃。
あああ! なんてこと。びきびきと盾が割れてしまいました。ままま、まっぷたつに。
すると、二つにわかれた盾の男前な顔の目が、かかっと煌めき。
『ななな?』『あら?』
二つの声が宝石の目のそれぞれから聞こえてまいりました。
『大変だ。はなれたぞ弟よ』『に、兄さまどうしましょう』
なんだこの盾、喋れるじゃないですか。
『ななな?』『あら?』
二つの声が宝石の目のそれぞれから聞こえてまいりました。
『大変だ。はなれたぞ弟よ』『に、兄さまどうしましょう』
なんだこの盾、喋れるじゃないですか。
もとい。
顔の両眼に嵌まっていた宝石に、ひとつずつ人工精霊が宿っているようです。
『なんてことだ、われらの世界が』『兄様、これじゃラブラブできません!』
二つの宝石からきこえてくるのは、すすり泣き。
『なんてことだ、われらの世界が』『兄様、これじゃラブラブできません!』
二つの宝石からきこえてくるのは、すすり泣き。
あー。つまり。二人の世界に浸りこんでて、周囲はガン無視してたってことでしょうか。
私の挨拶がきこえないぐらい相手に陶酔するとは。まったくもう、失礼ですよもう。
銀の盾が左右に分かれて倒れたとき。
その大きな物音に驚いたのか、さささ、とその陰からでてきたものがありました。
これは……!
私はとっさにわが柄の赤鋼玉を煌めかせ、そやつの生気を吸い込みました。
ちいさくて。真っ黒で。音速で物陰へと逃げようとするそやつを。
そう、しのぎのおやつに最適この上ない、この世で一番しぶとい生命力をもつ……
Gを。
Gを。
ご高覧・コメントありがとうございます><
剣、アスパ本編ではついぞ行方不明になったままでしたが。
これからどうやってあの騎士団営舎にいたるのか、
このお話だけではすまないような感じであります^^;
Gはどこの星でも順応するようですね♪
ご高覧・コメントありがとうございます><
赤猫さん、一体どこへ飛ばされたのでしょうね^^;
無事ピピのもとへ帰ることができるよう気配はにんともかんともなのであります。
はぐれて、流れて、流れ着いた先が妖しげな武器庫^^
赤猫剣に負けないくらい、なかなか個性的な装備が同居しているようです^^;
そして、あらゆる星系に棲みついている、適応能力抜群の黒いあいつも・・・w
剣のその後は語られぬまままでしたので、この先がとても楽しみです♪
この春お出かけしたい場所……
とある宝物庫??
さて剣は、どこにいるのでしょう^^;