Nicotto Town



人間原理って、ナニ?

『宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論』
  青木薫 著  講談社現代新書

面白そうかな、と思って買ったのですけど、
思ったほどにはひっくり返って無かったですね。

宇宙論における人間原理って言うのを、ざっくり言えば、
宇宙は人間を生み出すためにあるぜブラボー! みたいな事です。
西欧の人々の胸の奥には、根強く、天にましますわれらが父、が居て
宇宙のありようの根源を、暗にそこに求めてしまう傾向があるのか?
科学は再度、神の御意思の解析活動として理解されるのか?
とか思ったんですけど、そこまで踏み込んでなかったです。

世界は我々が生まれるような形に進化してきた、
のでは無く、
たまたま、我々が生まれられる形に進化した場所だから、我々がいる。
そういう解釈に移行させていますね。
よって、それ以外のスタイルの宇宙も当然ある、と言う解釈になります。
今日の宇宙論の流れでは、そう珍しい話では無かったです。

それはいいのですけど、それより、本の前半が興味深かったです。
前半には、今日の宇宙論が形成されるまでに、人がどんなモデルを
考えてきたか、という科学研究史みたいな事が書かれていました。
問題に思ったのは、研究結果ではなく、その理解の方向なのです。
案外、人は結果だけ見て、趣旨を見ていないって事ですね。

例えば、ニュートンが重力理論を考えわけですが、
彼は、世界のバランスは、物質の一つ一つが、こんなにも微妙な
バランスの上に成り立っている、と言うことを証明したかったようです。
全ての物が、まるで針を直立させるに等しい難しいバランスの上に
成立している。こんな事が、何故起こっているか。

それは、神が手をかしているからだ。それ以外やりようがない。

そう言いたかったらしいんですよ、実の所。
大抵の書物、もちろん教科書にも、ニュートンと言えば
近代物理学の父として、バリバリの科学者として理解されますが、
論旨の出所は、意外にそうでもなかったみたいです。

法則は知っているけど、その理由が間違って受け取られている。
それは他の人の場合でも案外あるみたいです。
その原因の一つは、よほどの専門家でもない限り、
原典を読んでいない、からだと思われます。
ニュートン自身が書いた論文を、悪戦苦闘して理解するより、
誰かの書いたニュートン解説書を見たほうが早いですからね。

って考えると、
現在、教科書に出ている先人の業績とか、
ほとんど“孫引き”じゃないの? 
って事が見えてきますね。
昔のえらい先生が、ニュートンをこう理解した、
だから教科書にはそれを引っ張ってきましょう。そんな感じ?
「コペルニクスの原理」って言われる物も、実の所
後の科学者ボンディが、コペルニクスの理論の中から拾い出した
物らしいとか。コペルニクス自身が、それをプッシュした訳ではないです。
そんな事だから、『教科書』の『解釈』は、毎年変わっちゃうんですね(^^;

ちょっと話が逸れましたけど、
我々は、誰かが「当たり前にした」当たり前の中に住んでるんだなぁ
とあらためて思いました。

そう言う意味でも、ちょっと違う視点から書かれている本を読むのは
興味深いものだと思います。
何の役にも立たない知識欲は、なかなか治まりません。

アバター
2016/05/09 22:21
Mt.かめ様
科学者の業績を、当人の振る舞いをからめて見てみると、
なんだかなーと思う事もあるみたいですね。
科学研究の成果って、案外、他人を出し抜きたい意地が、原動力だったりして(^^;
アバター
2016/05/09 08:48
ニュートンって他の人の発見を横取りしたこともありますしねー(笑)
けっこう嫌な奴だったみたいですよぉ。気にいらない奴は
徹底的に意地悪したみたいだし。
そういう人間臭い科学者のあれこれは大変面白いとおもう♪



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