機霊戦記 第二話 黄金の女神(後)
- カテゴリ:自作小説
- 2016/08/09 21:15:39
島都市(コロニア)の住環境は、人間にとって完璧であるように調整されている。
森林。平野。川。湖。田園。そして街。自然と都会が絶妙の割合で融和した理想郷だ。空気組成は日々ナノ単位で調整され、天候、気温は完全管理。
でも、帝都フライアは。
「人口三十万人……」
島都市では一番巨大な規模を誇っていて。
それだけ空気も……
「なんだか……都の空気がよどんでいるような気がする」
『フライアの空気組成をチェックしましょうか?』
「いや。しなくていい。君のと違うってことを言いたかった」
『それは……』
アルゲントラウムの黄金色の空調結界は、心地よい。
鋭利で清々しくて、島都市(コロニア)の空気とはまったく違う。
僕は手を繋ぎあっている金髪の少女に囁いた。
「君が作る空気のほうが、澄んでておいしい」
とたんにうれしそうな微笑が返ってくる。
やさしい青の瞳。ばら色の唇。金の髪が揺れる――
美しいこの子は、僕の気持ちには……たぶん気づいていないんだろうけど。
気づく能力があるのかどうか……知らないけど。
でも僕は……
『あ……!』
手を繋いでいない方の手で、僕が黄金の乙女の頬に触れようとしたとき。
突如、彼女の美しい顔がほのかに気色ばんだ。
『わが主!』
そのつややかな白い顔が、ハッと固まる。
『わが主! 下方五時方向より正体不明弾。回避します――』
「な?」
王宮の近くあたりから、ひゅん、と何か光る弾道が、空調結界を突き抜けてきた。
はじめ僕は、その光を迎えに来た護衛官だと認識した。
常に僕の身辺警護をしている、五人の機貴人のひとりだと。
だがそれは。機霊で飛んでいる人ではなく――
「うあ?!」
青白い刃のような閃光で。
『わが主!!』
異様な速さで、僕の黄金の翼を射抜くように貫いた。
背中に一瞬焼けるような熱さが広がった瞬間、繋がれた僕らの手が離れる。
「アルゲントラウム!」
ざざっと、黄金の少女の姿が歪み、みるみる透明化していく。
『わが主。不明弾が結界を貫通。被弾、しまし――』
なんだ今のは?!
アルゲントラウムの結界が破れるなんて……!
黄金の翼も。
空調維持結界も。
目を見開く僕の周囲で霧散していく。
『わが主、結界再展開を優先しま……ああ……出力不足で……両翼再展開が、出来ませ……出力が……出ませ……』
「なんだって?」
優先された結界が、ふわんと張られる。
すがすがしい黄金色の空気を吸い込んでホッとするのもつかのま。
僕はどんどん、空の高みから落ちていった。
高度が下がれば結界維持のエネルギーを両翼展開に回せる。なのに高度がだいぶ落ちても、黄金の翼が開かない。
『わが主……出力が……出ませ……』
「なっ……どうして?!」
『接合部が破損……わが主の生命エネルギーが吸収できませ……ご安心を……死なせませ……絶対にお守りいたしま……緊急……ード……発……ます』
「くっ……」
たしかに、背中が燃えるように熱い。機霊との接合部が、本当に燃えているかのようだ。
「アルゲントラウム!!」
黄金の乙女が大きくゆらめき、ちりちりと音を立てて消えていく。
「いやだ! 消えるな!」
「大丈……です……わが主……なたを……死なせませ……」
落ちていく。どんどん落ちていく。
帝都から飛んできた青白い光は、たった一発だけだった。
誰かに狙い打ちされたんだろうか?
王宮のそばから、一体誰に?
僕の背中からぼうっと黄金色の光が絞りだされて、結界の外側に翼ではなく球体を形作る。
僕との接続がはずれ、生命エネルギーを取りこめない今。
アルゲントラウムは、機霊の姿も翼も維持できない。ほぼ死んでいる状態だ。
それでも。
僕を守ろうと、緊急救命モードの光を出し続けている……。
「アルゲントラウム! アル!」
黄金の乙女の姿は完全に消えてしまった。もう、返事は聞こえない。
黄金オーロの光に守られ落ちていく先を見て、僕は息を呑んだ。
大島都市(メガコロニア)フライアの縁から、わずかに外れている。
このままでは――。
「アル! 大地に落ちる! 大陸(ユミル)に……!」
返事はない。
「アル!」
白亜の都市があっというまに迫り。
その縁が、僕のすぐ横に来た。
だが手を伸ばしても、届かない。僕を包む黄金の光は伸びず、固まったままだった。
フライアを横目に、僕は猛烈な速さで落ちていった。
大気圏を突き抜け。
はるか下へ。
下へ。
「アル! 答えろアル! 死ぬな!」
必死に呼びかける僕の声に答えて。
アルゲントラウムがやっとのこと、つぶやきを絞りだした。
『死なせません……私のマレイスニール……』
「ア……ル?!」
その囁きに愕然としながら。
僕は、地に落ちていった。
汚れきった、真っ赤な、母なる大地へ――。
美麗な天上界・浮遊島と大きなギャップ
主人公少年は物語の過程でどんな成長をするのか
楽しみしております
読んでくださり、ありがとうございます><
ドラキュラー@@それも一手でありますね>ω<
大阪帰省してきましたー^^
ご指摘のとおりでしたー。めっさ暑かったです;ω;
(地下鉄乗って京セラどぉむに……阪神応援しにいってきましたw)
どうかどうか、お大事になさってくださりませ。
読んでくださり、ありがとうございます><
赤い大地に墜落……
大陸はどんなところなのか、次回雰囲気をうまく描ければいいなぁと思います。
前回高く上って今度は落ちて。
じぇっとこーすたー^^
読んでくださりありがとうございます><
おそらく、光の翼がつながってる背中を撃たれたのかなぁと思います;ω;
大阪の 地下鉄と地下街は 節電じゃから 通勤時間帯でも暑いでぇ (~Q~;)
暑いから 通院日は衰弱して帰還 ○凹
事故か故意か、いずれにせよ戦いの場に誘われてしまった
皇帝陛下。
そして孤立無援。
母なる大地は敵か味方か。
映像感たっぷりで楽しめました^^
次の展開にも期待です♪