Nicotto Town


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自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・201

 集中するルナを背に、ロランとランドは懸命にシドーの攻撃をしのぎながら機をうかがっていた。そこへ、一羽の大きな光の鳥がシドーへ向かって飛ぶ。
「効いた!」
 ランドが叫んだ。鳥がシドーの胸にぶつかった瞬間、シドーの全身が暗い青の光に包まれたのだ。ルカナンと同じ効果だと知り、ロランはランドとともに瓦礫を伝って邪神へ跳躍した。
「いやあああっ!!」
 ロランの稲妻の剣と、ランドのロトの剣が交錯する。シドーの左側の腕が2本飛んだ。体重をかけて斬りつけた二人の剣が落としたのだ。
(すごい、いつものルカナン以上だ!)
 床にランドと降り立ちながら、ロランは胸が沸き立つ思いだった。
「いけるよ!」
 隣でランドも嬉々として言う。うなずき返し、ロランはまたシドーへと斬りかかった。
 腕を落とされ、シドーは怒り狂った。残った腕を振り上げ、こちらをたたきつぶそうとする。そこへまた、ルナの飛ばした光の鳥が来た。それが二人に吸いこまれた瞬間、シドーの拳がこちらを薙ぐ。
「――っ!」
 思うさま殴られ、弾き飛ばされた。が、思ったほどではない。今度はスクルトを上回る守備力上昇効果が出たのだ。
 ロランが右から、ランドが左から跳躍して斬りつける。シドーはロランの攻撃にベホマを唱え、落とされた腕を再生させたが、ランドの追撃で胸に裂傷を負う。
 勝てる、とロランは確信した。ルナの作戦通りだ。自分とランド、どちらかが追撃し続ければ、シドーも回復が追いつかなくなり、いずれ斃れるだろう。
 それまでルナの援護が持つか。
(いや、尽きる前に倒すんだ!)
 ロランが身構えた時、シドーが胸を反らし、ぞろりと牙をのぞかせる。紅蓮。紫雷をともなう業火が激流となってロラン達を襲った。ロランはランドとルナの前に立ってロトの盾を構えたが、炎熱による激痛がたちまち全身の感覚を奪った。盾が逸れ、炎がランドに燃え移る。火だるまになって転げまわるランドを助けようとしたが、体が言うことを聞かない。自分が呆然と立ちすくんでいるだけだと知った時、シドーの無慈悲な拳がロランを空中高く殴りつけた。 

 ――これが神の力か。
 床に横たわるロランとランドを見て、ルナは声が出なかった。パルプンテの連続発動による極度の精神集中で、立っているのもやっとだ。
 二人は動かない。すでにこときれている。
 ルナは体を覆う水の羽衣をつかんでいた。これがロランやランドの分もあったら!
(私だけ生き残ったって意味ないじゃないの!)
 生き返らせなければ。ロランとランドの魂は、幽明界にいるあの娘の加護によって、まだこの中空をさまよっているだろう。ザオリクをかければすぐに蘇生できるはずだ。
 だが、ルナの魔力は残りわずかだった。一度ザオリクをかけたら、もう魔法が使えなくなる。
 ならば同じくザオリクを使えるランドを先に蘇生すべきだろう。しかし、ルナはためらった。先ほどの火炎で、ルナも著しく体力を奪われていた。ランドを生き返らせたとして、またあの炎が来たら――。
(耐えられない。全滅する!)
 シドーがこちらを見た。ルナは即座にいかずちの杖を構え、魔力を集中した。
(勇者ロトよ!!)
 ルナは全身全霊をかけて祈った。
(――奇跡を!!)


 シドーがルナに炎を吐きかけた時、ルナの全身から閃光がほとばしった。目を打たれ、邪神は一瞬目を閉じた。ルナが発動したパルプンテの光は、一段と大きな光の鳥になってロランとランドへ飛んだ。そして二人の頭上で無数の羽根となる。
「う……!」
 羽根の雨を受けたロランは、息を吹き返した。傍らでランドも身を起こす。
「――ルナッ!」
 ランドが声を上げた。魔力を使い果たしたルナが、力尽きて倒れようとしていた。ロランが駆け寄ったが間に合わず、ルナは前のめりに倒れこんだ。
「大丈夫か?!」
 抱き起こすと、ルナは薄く目を開けるなり叱咤した。
「何やってるの……早く行きなさい……! あいつを倒すのよ……!」
「――すまない」
 側についてやりたかったが、今は感傷に耽っている場合ではない。ランドが左腕から力の盾を抜き、ルナに手渡す。
「危なくなったら使って。ぼくはまだ魔力に余力があるから」
「ありがと……」
 体を起こして盾を受け取り、ルナはうなずいた。ロランはランドと破壊神へ向き直った。
 シドーはまだベホマを唱えていない。こちらを見おろす目は憤怒に染まっている。ここまで痛手を与えた人間は初めてなのだろう。
 逆上しているなら狙いどころだった。そして、これが最後の勝機だった。
 ロランはランドに目配せすると、正面からシドーへ走った。右手にロトの剣、左手にはやぶさの剣を携えたランドが続く。
 シドーが咆哮し、びりびりと大気が震える。だが、ロランとランドは動じなかった。
 心が燃えている。白く熱く、猛々しく燃えている。否、魂が燃えているのだった。
 シドーが大蛇の尾で薙ぎ払う。ランドは瞬時にはやぶさの剣に持ち替え、連撃で尾を寸断した。ロランは突き出された巨大な腕を身を屈めて避け、傾いた柱を駆け上がる。反対側で、ランドも柱を駆け上がった。
 シドーの顎が開いた。胸が膨らみ、ぞろりと牙が並ぶ口腔に燃えさかる火炎がたまっていく。そこへランドが飛び込んだ。
「だああああっ!」
 両腕を焼かれながらランドはシドーの喉奥にロトの剣を突き立てた。苦痛にシドーは怒号した。吐き出そうとしていた炎が口腔からあふれ、火傷を負ったランドが吹き飛ばされる。落ちながら、ランドは叫んだ。
「今だ、ロラン――!」
 ロランは稲妻の剣を振りかぶり、シドーへ飛びかかろうとした。シドーが咆哮する。無数の紫雷が巨体の周囲に降り注いだ。文字通りの雷雨に、ロランは一瞬怯んだ、その時である。
「お前……?!」
 右手に熱を感じ、ロランは稲妻の剣を見ていた。剣は、雷に共鳴し、喜ぶように自らも青白い電光を走らせている。




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