Nicotto Town


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自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・210

 この手紙がロランの部屋から見つかった時、ローレシア王は衝撃のあまり、胸に痛みを感じて倒れてしまいました。
 幸い命に別状はありませんでしたが、ローレシア王は、それからすっかり元気をなくしてしまわれました。
「……私は悪い父であった。そうであろう、ルナ」
 ロランのベッドに腰かけて、何度も手紙を読み返す王に、私はずっと付き添っていました。私はかぶりを振りました。
「いいえ。お父さまは悪くありません。……誰も、悪くないのです」
 王は答えませんでした。目を片手で覆い、しばらくひとりにしてくれとおっしゃいました。手紙は、私も読み返したかったので、一度預からせていただきました。
 私が部屋を出ると、知らせを聞きつけたランドが駆けつけてきました。ルーラの呪文で飛んできたのです。
「ロランがいなくなったって……」
 真っ青なランドの声はひどくかすれていました。繊細なところがある彼に、この事実は重すぎたのでしょう。立っているのもやっとのありさまでした。
 私は、自分にあてがわれている部屋に案内すると、そこで手紙を見せました。ランドは椅子に腰かけて、震えながらそれを読みました。
「ロラン……」
 読み終わったランドの目から涙がこぼれ落ちました。深く肩を落とし、しばらく泣いていました。
 私は、手紙を読んでからずっと、泣いていませんでした。自分でもどうして落ち着いていられるか不思議でした。
 でも、なんとなくわかっていたからだと思います。
 ロランが誰よりも自由を求めていたのを、知っていたから。
 ロランは風のマントを使って、未明に城の尖塔から飛び立ったようです。城下で、城から大きな鳥のようなものが飛び立つのを見た人がいました。でも、ロランがいなくなった南の方角をいくら探しても見つかりませんでした。
「……城に戻るよ」
 うつろな声で、ランドは手紙を私に返すと立ち上がりました。
「……ローレシア王によろしくね。今はきっと、お会いになりたくないだろうから」
「ええ。大丈夫よ。私がついてるから」
 頼むよ、とランドはかすかに微笑み、ふらふらと部屋を出ていきました。

 あろうことか、それが、私がランドを見た最後の日になってしまったのです。





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