機霊戦記 7話 PPD・AG(中編)
- カテゴリ:自作小説
- 2016/09/19 16:29:18
『なんだと……! わかった任せろ!!』
ろ、ロッテさん、なんだかんだいってミッくんを使いこなしてる?
それともやけくそ?
イケメンミッくん、大奮起。即座に周囲に結界を張ってくれた。
うっすら赤みを帯びた美しい光の膜が、俺たちを包む。
通りで伸びてる発掘屋の二人組も。道行く足を止め、呆然と光を眺めている人々も、すべて。
さすがアホウドリサイズの機霊だ。効果範囲がバカみたいにだだっ広い。
でも改造前は、結界強度が実に弱弱しかったんだよね。
広く浅くってのが、ミッくんのような青銅(ブロンゾ)級特大サイズ機霊の典型的な特徴だ。
「わぁ、すごい! まるで冷房がかかってるみたいよー」
腕の中のプジがくしゅんとくしゃみするぐらい、清涼な空気が吹いてくる。
俺がてきとーに改造した今のミッくんの結界は、かなり強力。アムルの暴走機霊が放つ熱を、完全に遮断してる。
「へへっ、核(ハードコア)に特製結晶(メモリ)を三つ、てきとーにつけ足したんだ。だから全能力値がざっくりはね上がってる。処理速度は、以前の倍の倍の倍ぐらいになってるはずだぜ」
しかしアムルの暴走機霊の光量はやばい。まるで人工太陽だ。
「ミッくん! 結界展開の制限時間が切れる前に! 熱玉少年を街の外に運ぶぞっ!」
『了解! ロッテ』
ロッテさんが、ズオンとすごい羽音をたてて飛び立つ。
目指すは熱玉になってる銀髪アムル。でかい翼から俺たちを守る結界を放射しながら、自身は両腕を伸ばし。
「あぢぢぢぢぢ!」
ひいひい叫びながら、熱玉少年の首根っこを掴むそのそばで。
『ろ、ロッテ! ロッテがんばれ!』
ミッくんが必死にご主人様に抱きついて……
え。
抱きついて?
「うがあ! ミッくんジャマー!!」
『でもこうしないと君を守れな――』
「対接触バリアは、離れててもかけられるだろうがあああ!」
『でも結界張ったごほうび……』
「アホかおまえはー!! チューは事が全部終わって落ち着いてからだーっ!!」
今すぐしたいあれもこれもシたいとかなんとかほざくミッくんの顎をぐいと押しのけ、ロッテさんが銀髪の熱玉を掴む。
「どうりゃあああ! 俊速飛翔ーっ!」
た、たしかにあれじゃあ、周りにゃどヒンシュクものだよなぁと思いつつ。
俺とプジはテケテケに飛び乗って、スラムマンションが並ぶ通りを突き抜けてくロッテさんを追い始めた。
じっちゃんも車庫からメケメケを出して、ついてくる。
俺が改造したミッくんは、青銅(ブロンゾ)級ではありえない速さで飛んでいる。
ロッテさんはあたかも赤い彗星のごとく、コウヨウの街をあっという間に飛び出た。
方角は西。天使たちの戦闘区域に程近いところ、俺がアムルを拾った荒野に熱玉少年を放すつもりらしい。
「あ!」
「テル? 何してるの?」
ハッとしてテケテケに急制動をかけ、店に引き返す俺を、プジが急かす。
「冷却性のバクテリア鉱を持っていく!」
熱を食うあの鉱物。メイ姉さんのメケメケ修理用に精製した板金がある。こいつをアムルの背中に貼りつければ、きっと熱暴走を抑え込める。
「て、テル大変っ。野次馬がっ」
テケテケで再度店の前から走り出した俺のそばを、おっさんが乗ったヒュンヒュンがぎゅんっと追い抜いて行った。
煌々とまばゆく輝く暴走機霊に、街の奴らは気づいちまったようだ。
光の玉を目撃した発掘屋や技術屋関係の者どもが、メケメケやヒュンヒュンで繰り出して道路にあふれかえってる。
この状況でテケテケで追うのは、正直ちょっとしんどい。一番乗りは無理だろう。
じっちゃんのメケメケも、速度的にはかなり微妙。俺のテケテケと大して変わらない。
やっぱどうにかして、ヒュンヒュンに改造するべきだったか……
そのとき。
俺のすぐ隣に、麗しき天女が現れた。
――「あら? テルくんじゃない?」

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- カズマサ
- 2016/09/19 16:38
- 救いの女神さんですか・・・。
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