Nicotto Town



機霊戦記 7話 PPD・AG(後編)

「お?」

 すぐ隣を今まさに追い抜いていこうとしてるメケメケ。

 そこから聞こえるこの声は。

「め……メイ姉さん?!」

 こ、これぞ天の助け!

 みどりの黒髪をなびかせる、うるわしきメガネ女史!

 メイ姉さんが運転してるメケメケは、ショージが勤めてる会社の最新モデル。

 ばりっばりの新車だ!

「ねえテルくん、私ね、今から博士の研究所に行くところなんだけど……この突然街からどどっと出てきた、メケメケヒュンヒュンの大波って何?」

「みんな、あの熱玉を追っかけてるんですっ」

「あれ? あの空のぴかぴか? あれ、なぁに?」

「俺のとっ……トモダチが! トモダチが、大変なことに! 空飛んでくあの熱玉の中に、俺のトモダチが囚われててーっ」

「えっ? まあああああ、それは大変だわーっ」

 優しいメイ姉さんはメケメケを急停止させて、俺とプジを収容してくれた。

 大感謝だ!

 でもトモダチって……

 なんか思いっきしウソ……ついちゃったけど。

 でもほんとに俺、銀髪のあいつと……

『ひざまづけ』

 あー。高ぴーだけどなぁ。

 でもあいつ、胸がふにっとしてたし。

 これから……いろいろ大変そうだし。

 たぶんもうそんなに、寿命ないんだろうし。

 最後にひとりぐらい、トモダチになる奴がいても、いいんじゃないかな。なんて。

 ちょっとマジで思うよほんとに。

 目つき悪いけど、あいつ、顔……結構かわいいしさ。

 それにしても。 

「すげえ! メケメケ最新モデルすげえ! はええ!」

「ふふふー。窓から顔だしちゃだめよー、テルくん。シートベルト締めてね。とばすわよー」

「はいっ! おおおお願いしますうう!」

 悔しいが、ダチのショージが就職したメケメケ製造会社は一流だ。

 なんと最近、島都市にも輸出し始めてる。

 そしてメイ姉さんの運転技術は――

「ふおおおおおお!!」

「テルくんだから、窓から顔出しちゃだめだってば~」

 すすすすすげえ! 歯ぁ食いしばってる俺のクチビル、びちびちばゆんばゆん! 

 さ、最高だ!

 メイ姉さんてば、発掘屋どもの改造ヒュンヒュンを、ビュンビュン追い抜いてく。

 やったぜ。この調子でいけば、余裕で一番乗り……

「あ。じっちゃん、置いてきちゃった」

「え? なぁにテルくん」

「い、いやなんでもないっす」

 じっちゃんのメケメケは、すでにはるか後方。ごめん、じっちゃん。

 野次馬どもも、はるか後方。おっしゃあ。

 ていうか俺、さりげなくメイ姉さんとドライブデート? 

「うおおお!」

「なぁにテルくん?」

「最高っすー!」

「もう、何鼻血出してるのよー」

 プジがばしばし尻尾を座席に叩きつけてあきれてる。いやでも、このどさくさまぎれの幸せ、すばらしいよ、うん。

 メイ姉さんのメケメケは、ロッテさんに追いつく勢いで幹線道路を突っ走った。

 みるみる輝く熱玉が近づいて、ぐぐっと大きく見えるぐらいに。

 だが。

「あ? あああ?!」

 突然。

 ロッテさんと熱玉の輝きの球が失速して。

 へろへろと、右前方に落ちて行った。

 その後を追うように。何かがひゅひゅんと、空から一直線に降りてくる。

 蒼い、幾筋もの光。

 あの矢のような光は……!

「テル! 天使よ!」

 しゅんっと音をたてて、蒼い目で拡大視したプジが叫んだ。

「天使たちが、降りてきたわ! ロッテさん、天からあいつらに……!」 

「なんだって?!」

 まさか、あれはエルドラシアの天使か?

 さすがにあの光源だ。見つかっちまったか……!

 蒼い光はそれからいくつもいくつも、天から降りてきた。

 あれよという間に、何十と、まるで流れ星のように。

「メイ姉さん、ここで降りるっ。どうもありがとうう! 今度絶対、すげえお礼すっからね!」

「て、テルくん?!」

 俺たちのマドンナ、メイ姉さんを危険にさらすわけにはいかない。

 天使たちは俺たち下界に住まう人間なんざ、虫けらとしか思ってないからな。

 俺は姉さんのメケメケから飛び降りて。

「プジ! 行くぞ!」

 ロッテさんが墜落したところへと、全速力で走り出した。

 メガネかけてても超悪いメイ姉さんの視力が、俺をぼんやりとしか捉えないであろう距離まで離れた時。

 俺は隣を勇猛に駆ける、頼もしい相棒に命じた。

「プジ! 接合(コネクト)! すぐに竜翼展開!!」

「もちろんよー!」

 プジが俺の背に飛び乗ってきた。

 あの黒い、コウモリのような翼を広げるために。

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2016/09/28 08:39
よいとらさま

お読み下さりありがとうございます><
アルゲントラウムとは、という種明かしの回、おじいちゃんと孫何者?
という感じでありますが、次回はじっくり機霊戦です^^
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2016/09/28 08:36
カズマサさま

お読み下さりありがとうございます><
少年漫画風主人公ですので、
かっこよくお姫さまを救出……するのでしょうか^^
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2016/09/23 11:30
こんにちは♪

工房を飛び出したら高速レースの始まりでした^^;

無駄なくらい大きな光と熱を出し続ける皇帝機を
少しでも早く市街地から離脱させたいロッテさんを目指し、
地上からも天上からも追跡者が・・・

皇帝機の消火作業、
皇帝くんとロッテさんのご対面、
やっかいな追跡者。

展開を積み増しての次回、楽しみにしています♪

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2016/09/19 16:41
上手く助けられたのですかね。
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2016/09/19 16:35
にこさんブログは文字数3000縛りが何気にキツイですね;ω;
今回の7話は6500字ぐらいでした。500を詰められなくて三分割に;
すみませんすみません;




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