機霊戦記 7話 PPD・AG(後編)
- カテゴリ:自作小説
- 2016/09/19 16:30:18
「お?」
すぐ隣を今まさに追い抜いていこうとしてるメケメケ。
そこから聞こえるこの声は。
「め……メイ姉さん?!」
こ、これぞ天の助け!
みどりの黒髪をなびかせる、うるわしきメガネ女史!
メイ姉さんが運転してるメケメケは、ショージが勤めてる会社の最新モデル。
ばりっばりの新車だ!
「ねえテルくん、私ね、今から博士の研究所に行くところなんだけど……この突然街からどどっと出てきた、メケメケヒュンヒュンの大波って何?」
「みんな、あの熱玉を追っかけてるんですっ」
「あれ? あの空のぴかぴか? あれ、なぁに?」
「俺のとっ……トモダチが! トモダチが、大変なことに! 空飛んでくあの熱玉の中に、俺のトモダチが囚われててーっ」
「えっ? まあああああ、それは大変だわーっ」
優しいメイ姉さんはメケメケを急停止させて、俺とプジを収容してくれた。
大感謝だ!
でもトモダチって……
なんか思いっきしウソ……ついちゃったけど。
でもほんとに俺、銀髪のあいつと……
『ひざまづけ』
あー。高ぴーだけどなぁ。
でもあいつ、胸がふにっとしてたし。
これから……いろいろ大変そうだし。
たぶんもうそんなに、寿命ないんだろうし。
最後にひとりぐらい、トモダチになる奴がいても、いいんじゃないかな。なんて。
ちょっとマジで思うよほんとに。
目つき悪いけど、あいつ、顔……結構かわいいしさ。
それにしても。
「すげえ! メケメケ最新モデルすげえ! はええ!」
「ふふふー。窓から顔だしちゃだめよー、テルくん。シートベルト締めてね。とばすわよー」
「はいっ! おおおお願いしますうう!」
悔しいが、ダチのショージが就職したメケメケ製造会社は一流だ。
なんと最近、島都市にも輸出し始めてる。
そしてメイ姉さんの運転技術は――
「ふおおおおおお!!」
「テルくんだから、窓から顔出しちゃだめだってば~」
すすすすすげえ! 歯ぁ食いしばってる俺のクチビル、びちびちばゆんばゆん!
さ、最高だ!
メイ姉さんてば、発掘屋どもの改造ヒュンヒュンを、ビュンビュン追い抜いてく。
やったぜ。この調子でいけば、余裕で一番乗り……
「あ。じっちゃん、置いてきちゃった」
「え? なぁにテルくん」
「い、いやなんでもないっす」
じっちゃんのメケメケは、すでにはるか後方。ごめん、じっちゃん。
野次馬どもも、はるか後方。おっしゃあ。
ていうか俺、さりげなくメイ姉さんとドライブデート?
「うおおお!」
「なぁにテルくん?」
「最高っすー!」
「もう、何鼻血出してるのよー」
プジがばしばし尻尾を座席に叩きつけてあきれてる。いやでも、このどさくさまぎれの幸せ、すばらしいよ、うん。
メイ姉さんのメケメケは、ロッテさんに追いつく勢いで幹線道路を突っ走った。
みるみる輝く熱玉が近づいて、ぐぐっと大きく見えるぐらいに。
だが。
「あ? あああ?!」
突然。
ロッテさんと熱玉の輝きの球が失速して。
へろへろと、右前方に落ちて行った。
その後を追うように。何かがひゅひゅんと、空から一直線に降りてくる。
蒼い、幾筋もの光。
あの矢のような光は……!
「テル! 天使よ!」
しゅんっと音をたてて、蒼い目で拡大視したプジが叫んだ。
「天使たちが、降りてきたわ! ロッテさん、天からあいつらに……!」
「なんだって?!」
まさか、あれはエルドラシアの天使か?
さすがにあの光源だ。見つかっちまったか……!
蒼い光はそれからいくつもいくつも、天から降りてきた。
あれよという間に、何十と、まるで流れ星のように。
「メイ姉さん、ここで降りるっ。どうもありがとうう! 今度絶対、すげえお礼すっからね!」
「て、テルくん?!」
俺たちのマドンナ、メイ姉さんを危険にさらすわけにはいかない。
天使たちは俺たち下界に住まう人間なんざ、虫けらとしか思ってないからな。
俺は姉さんのメケメケから飛び降りて。
「プジ! 行くぞ!」
ロッテさんが墜落したところへと、全速力で走り出した。
メガネかけてても超悪いメイ姉さんの視力が、俺をぼんやりとしか捉えないであろう距離まで離れた時。
俺は隣を勇猛に駆ける、頼もしい相棒に命じた。
「プジ! 接合(コネクト)! すぐに竜翼展開!!」
「もちろんよー!」
プジが俺の背に飛び乗ってきた。
あの黒い、コウモリのような翼を広げるために。
お読み下さりありがとうございます><
アルゲントラウムとは、という種明かしの回、おじいちゃんと孫何者?
という感じでありますが、次回はじっくり機霊戦です^^
お読み下さりありがとうございます><
少年漫画風主人公ですので、
かっこよくお姫さまを救出……するのでしょうか^^
工房を飛び出したら高速レースの始まりでした^^;
無駄なくらい大きな光と熱を出し続ける皇帝機を
少しでも早く市街地から離脱させたいロッテさんを目指し、
地上からも天上からも追跡者が・・・
皇帝機の消火作業、
皇帝くんとロッテさんのご対面、
やっかいな追跡者。
展開を積み増しての次回、楽しみにしています♪
今回の7話は6500字ぐらいでした。500を詰められなくて三分割に;
すみませんすみません;