機霊戦記 8話 黒機霊(中)
- カテゴリ:自作小説
- 2016/09/28 09:18:28
今までなんでもてきとーにこなしてきた俺。金属溶解も合成も回路繋げるのも、今までおのれの勘ひとつでざっくばらんにやってきた。
細かい数値なんてガン無視。めんどくさくてっていうのもあるけど、それはてきとーに気の赴くまま作ると、思いもしない偶然の結果が出てきて面白いからなんだ。
プジの機霊だってそう。メイ姉さんの研究を手伝って、てきとーに潜った海底の神殿みたいな遺跡で、てきとーに拾ってきた機霊核みたいなもんを、てきとーにプジの体に突っ込んだら、機霊が発動するようになったんだ……。
でも「本物の猫と同じように、チョコに毒物反応示す」とか、なんでそこまで忠実に猫の特性が再現されちまうんだ?!
「お、俺……俺……ももももしかして、天才?!」
「自分で言うんじゃ……ないわよぉ……あぅごめ……テル……体うごかな……」
「がんばれプジ! し、し、死ぬなぁ!」
ぷすすんぷすすん。力ないおならのような音がプジから出てくる。
焦りながらも、追いかけてくる天使から必死に走り逃げる俺。全速力。
なんとかちらっと振り返ると、ロッテさんたちがいるところは煌々と恐ろしいぐらい青く円く輝いていて、すさまじい眩しさ。目標地点は肉眼では確認不可能だ。
あそこでロッテさんとミッくんが、いまだに結界展開でこの光の猛攻をしのいでるんだろう、ということだけしか分かんねえ。
「ひい! なんかあっちから飛んできた!」
ミッくんの結界がはじいたんだろう。
天使どもの光弾が反射され、絶え間なく四方に散っている。
追っかけてくる天使たちの攻撃に加え、その青い光の流れ弾がいくつか、こっちにどどうっと飛んできた。
まるで弾幕のごとく雨あられ。白目むいてぷらぷらなプジを抱っこして走る俺、まるで熱い鉄板の上でわちゃちゃとはね踊るごとし。
「ひい! ひいい! ひええ!」
こ、これもう無理。避けきれな――
「うわああああああ!」
「て、テルぅ……!!」
俺の真後ろに光弾が迫る。もうだめかとプジを抱え込んで思わずしゃがんだ、そのとき。
――「銀盾展開じゃーっ!」
「え?!」
俺の背中付近で、いきなりだだっ広い方形の光結界が広がった。
ばちばちばりばり、すさまじい光の炸裂音が鼓膜を破るぐらいに辺りに轟く。
飛び散る光に目をすがめ、はるか前方を見やれば。
「じ、じっちゃん?!」
いつの間に追いついてきたのか、ふしゅふしゅ煙吐いてるメケメケを背に、真っ黒ヘルメをひっ被ったじっちゃんが、ニッと親指を突き立ててる。
このでっかい方形結界、きっとカプセル結界だ。任意のところに投げつけると展開する、超便利な玉。それが証拠に、俺たちを守ってくれてる結界の根元からもくもく煙が立ってる。
しかしあの駆動速度微妙なメケメケで、いつのまにここに?
いやもしかして実は、微妙じゃないのかも。じっちゃんてば、孫の俺すら知らない秘密をわんさと持ってそうだもん。俺、じっちゃんの生まれ故郷がどこか、実はいまだに知らなかったりする。
「タマ! 大丈夫かー? おぬし朝に合成カカオ汁をなめとったじゃろう。もしやと思って薬メシを持ってきたぞー。これを食えー!」
うおりゃーと、じっちゃんが剛速球でこっちに小さな袋を投げてきた。
「だからプジだっての! タマじゃないっつの!」
ぼやきながらキャッチしたものに、プジがよろろと肉球がついた手を伸ばす。
「い、いい、におい……」
「なんだこれカリカリ?」
「超特製カリカリ『愛・爺(アイチン・イエーイエー)』じゃー! それを食えー! タマー!」
「だからプジだってばぁあ!」
た、タマは十年前に死んだ、うちの本物の猫じゃないかっ。
しかしいつもの茶色いのと違う、なんだか真っ黒いカリカリ……
豆豆しくて匂いが強烈なそいつをプジの口に入れてやったとたん。
「うはああああ!」
禿げ猫は、ぶひゅーと勢いよく鼻息を吹き出した。
「なにこれ、おいしいいいいい! さいこーう!」
回復の雄たけびとともに、俺の背に飛び乗るプジ。
どうっと左右に広がるコウモリのごとき翼。
じっちゃんが張ってくれた結界の制限時間が切れると同時に、俺たちは再び、空へ飛び立った。
「うりゃあ! 上昇っ!」
急上昇中に、俺の左肩になみなみならぬ「気配」が顕現してくる。
やった……! じっちゃんすげえ! 機霊体が出てきてくれたぞ!
『早上好、業主』
そいつは艶めかしい、ちょっと低い声で話しかけてきた。
いつものように。俺にはてんで分からない言葉で――
所で最近、Sian 産地の猫のお話は聞いていませんが、今はどんな状況ですかね。
I/Dというお薬ご飯を食べています^^;
愛爺、語感を似せてみますた^^;