機霊戦記 8話 黒機霊(後)
- カテゴリ:自作小説
- 2016/09/28 09:27:57
「ぐぬぬぬぬぬ! 何にも見えんー!」
『ろ、ロッテ、あと三十秒で結界が切れる。君を射出するから機霊機を外して退避してくれ』
「何言ってんだミッくん! そうしたくても動けないって! 光弾の弾幕が激しすぎるっ……」
――『芭蕉扇(バージャオ・シャン)!』
「な!? 何だ今の、横一線紫ビーム!」
『う? 五時方向頭上1キロ内に……所属不明波動?』
へへ。間に合った。
眼下でロッテさんが目を見開いてこっち見上げてる。
俺の左肩にいる「気配」が、こちらに迫る二騎の天使どもを吹き飛ばした余波。そいつが、ロッテさんたちの真上にも及んでくれた。
弾幕の嵐がしばし完全に途切れる。さっきの二頭身機霊とは威力が全然違う。
俺の黒い翼から、おそろしい太さの紫の渦が二本、怒涛のように迸っての攻撃だ。
天使たちが帝国紋の盾を構えるも、その盾をいとも簡単にかち割って、はるか彼方に吹き飛ばしてやったんだ。
『突撃(トゥー・チー)!』
艶めかしい声の肩の「気配」が、ロッテさんたちの真上に飛び込む。
紫色の結界が、天から降り注いでくる青い光弾をすべて跳ね返す――
「いいぞプジ!」
ちろっと横目で肩を見やれば。
「気配」の主がにやっと口角あげる微笑を返してきた。
黒髪の長いツインテールがふわりと揺れる。
すらりとした艶めかしい体は、こんがり褐色。黒髪が結ばれてるとこに出てる角みたいなのが、猫耳……に見えなくもない。
蒼い目は右眼が閉じていて、頬からまぶたにかけてひと筋、傷が走ってる。プジにはちゃんと両目があるのに、どうしていつもこんな姿で顕現するのか、不明だ。
黒い水着のようなへそ出しルックで、背中には大きなコウモリ羽。
鞭のようなしなやかな毛のない尻尾。なんだか、すんごくセクシィ。
『業主、你應該穿的盔甲作戰?』
うん。何言ってるか全然わかんねえ。この言葉、何語なんだろうなぁ。
これ、俺がプログラムしたもんじゃない。拾った機霊核にもともと入ってた奴だ。
三騎倒して、残るは……?
空を見上げて数えれば、十二騎いる。そのうちの五騎が、猛然と降りてくる。
『光彈會來!』
「うわあ! まぶし!」
すごい光量に目が焼けそう。
しかし黒い翼が展開した結界が、五騎の攻撃放射と天からの援護弾幕を、いとも簡単に全弾跳ね返す。
黒髪ツインテールな少女は、くうっと伸びをしてくすくす笑った。
『怕癢的』
なんだかものすごく余裕の表情だ。
『龍之息(ロンチー・シー)!』
さあこっちのターンとばかりに、俺が背負う黒い翼から、紫の光弾が天に向かって放射される。太い二本の、紫色の光の柱だ。
そいつが見事に、天使二騎の白銀の翼を貫いた。
被弾した天使の戦乙女ヴァルキュリエがかき消えて、金髪のお姉さんがまた二人、地に落ちていく。
「よっしゃあ!」
『没有什么大不了的』
残る三騎の天使が、天から援護放射を受けながら眼前に来たところを。
『合掌翼(クーチャン・イー)!』
黒髪ツインテール少女はくすくす笑いながら楽しげに、翼から出した巨大な光の両手でバシッと挟み撃ちにした。
まるで手を打ち合わせて、小バエをぶちっと潰すように。
それは天使どもの展開結界ごと押しつぶす、力技だった。
たちまち三騎の機霊がかき消えて、天使がさらに三人、地に落ちていく。
そこでついに、上空で援護してた天使七騎が、パッと二手に分かれた。
二騎が墜落機の救援へ。
そして五騎が、右手に光の槍を装填しながらこっちに迫る。
「ひっ。強そうな武器!」
『永恒之枪(グングニル)!?』
黒髪少女は一瞬たじろぐも。
『神将矛(シェン・ジャン・マー)!』
同じような形の紫色の槍を五本、俺の頭上に出した。
『業主! 扔!』
「な、投げろかな? 了解!」
俺は急いで槍を一本持ち、迫り来る天使たちに投げつけた。
プジはすごい。投げる時に、円の魔法陣のような照準がちゃんと出てた。
「うりゃ! うりゃあ!」
立て続けに三本、相手がこっちに槍を投げつけてくる前に投げて、相手を仕留めることに成功。
四本目は、槍同士がかち合って互いに対消滅。
しかし五本目は、相手の方が投げてくるのが速かった。
ひょいと避けて五投目を放って相手を仕留めたのはよかったが。
「あ! やべ!」
避けた光の槍が、ロッテさんたちのところへ落ちていった。
まずいまずいまずい!
ミッくんの結界はもう限界だ。あんな光の槍は受け止められな――
「ロッテさんー!」
急降下。でも、間に合わない……!
槍の穂先が、ずずっ、とミッくんの結界に刺さった瞬間。
結界と槍の接点で、ぶわっと爆発が起こった。
「なんてこった……!」
やばい! やばすぎるっ!
ロッテさんは無事か?! それとも……それとも……
異様な色合いの煙が、自然の風で流れていく。
息を呑んで青ざめる俺と黒髪ツインテール少女。
俺たちが急降下するその真下から。そのときふしゅううううと、蒸気が噴き出すような音を立てて、まばゆい光がほとばしった。
ミッくんの結界じゃない。これは……!
「う……まぶし……!」
俺は思わず両腕でおのが視界を隠した。
ロッテさんの足元から、すさまじく太い一本の光の柱が、天に向かって立ち昇り。
なんと一瞬にして、爆発でひび割れたミッくんの結界に突き刺さってる、光の槍の残骸を蒸発させた。
その柱はまばゆく、輝いていて。
神々しい光を四方八方にまき散らした。
黄金色(オーロ)の、光を。
読んでくださりありがとうございます><
いよいよクライマックス?の予感なのであります^^
ボーイミーツガール、テル王子はお姫さまを救えるのか?
テルは普遍的な王道でつっぱしっていくんだと思います^^
読んでくださりありがとうございます><
視覚的にかなり派手になるようにと、光量増大であります^^
飛び交う光弾
散る光条
煙を引いて墜ちる天の戦士
土煙を引いて群がる地のものども・・・
黄金色の光は
復活の狼煙か
終わりの始まりか
このあと、どう静けさを取り戻すのか、
気になりつつ次回にも期待です♪