Nicotto Town



機霊戦記 8話 黒機霊(後)

「ぐぬぬぬぬぬ! 何にも見えんー!」

『ろ、ロッテ、あと三十秒で結界が切れる。君を射出するから機霊機を外して退避してくれ』

「何言ってんだミッくん! そうしたくても動けないって! 光弾の弾幕が激しすぎるっ……」


――『芭蕉扇(バージャオ・シャン)!』


「な!? 何だ今の、横一線紫ビーム!」

『う? 五時方向頭上1キロ内に……所属不明波動?』

 へへ。間に合った。

 眼下でロッテさんが目を見開いてこっち見上げてる。

 俺の左肩にいる「気配」が、こちらに迫る二騎の天使どもを吹き飛ばした余波。そいつが、ロッテさんたちの真上にも及んでくれた。

 弾幕の嵐がしばし完全に途切れる。さっきの二頭身機霊とは威力が全然違う。

 俺の黒い翼から、おそろしい太さの紫の渦が二本、怒涛のように迸っての攻撃だ。

 天使たちが帝国紋の盾を構えるも、その盾をいとも簡単にかち割って、はるか彼方に吹き飛ばしてやったんだ。

『突撃(トゥー・チー)!』 

 艶めかしい声の肩の「気配」が、ロッテさんたちの真上に飛び込む。

 紫色の結界が、天から降り注いでくる青い光弾をすべて跳ね返す――

「いいぞプジ!」

 ちろっと横目で肩を見やれば。

 「気配」の主がにやっと口角あげる微笑を返してきた。

 黒髪の長いツインテールがふわりと揺れる。

 すらりとした艶めかしい体は、こんがり褐色。黒髪が結ばれてるとこに出てる角みたいなのが、猫耳……に見えなくもない。

 蒼い目は右眼が閉じていて、頬からまぶたにかけてひと筋、傷が走ってる。プジにはちゃんと両目があるのに、どうしていつもこんな姿で顕現するのか、不明だ。

 黒い水着のようなへそ出しルックで、背中には大きなコウモリ羽。

 鞭のようなしなやかな毛のない尻尾。なんだか、すんごくセクシィ。

『業主、你應該穿的盔甲作戰?』

 うん。何言ってるか全然わかんねえ。この言葉、何語なんだろうなぁ。

 これ、俺がプログラムしたもんじゃない。拾った機霊核にもともと入ってた奴だ。

 三騎倒して、残るは……? 

 空を見上げて数えれば、十二騎いる。そのうちの五騎が、猛然と降りてくる。

『光彈會來!』

「うわあ! まぶし!」

 すごい光量に目が焼けそう。

 しかし黒い翼が展開した結界が、五騎の攻撃放射と天からの援護弾幕を、いとも簡単に全弾跳ね返す。

 黒髪ツインテールな少女は、くうっと伸びをしてくすくす笑った。

『怕癢的』

 なんだかものすごく余裕の表情だ。

『龍之息(ロンチー・シー)!』

 さあこっちのターンとばかりに、俺が背負う黒い翼から、紫の光弾が天に向かって放射される。太い二本の、紫色の光の柱だ。

 そいつが見事に、天使二騎の白銀の翼を貫いた。

 被弾した天使の戦乙女ヴァルキュリエがかき消えて、金髪のお姉さんがまた二人、地に落ちていく。

「よっしゃあ!」

『没有什么大不了的』

 残る三騎の天使が、天から援護放射を受けながら眼前に来たところを。

『合掌翼(クーチャン・イー)!』

 黒髪ツインテール少女はくすくす笑いながら楽しげに、翼から出した巨大な光の両手でバシッと挟み撃ちにした。

 まるで手を打ち合わせて、小バエをぶちっと潰すように。

 それは天使どもの展開結界ごと押しつぶす、力技だった。

 たちまち三騎の機霊がかき消えて、天使がさらに三人、地に落ちていく。

 そこでついに、上空で援護してた天使七騎が、パッと二手に分かれた。

 二騎が墜落機の救援へ。

 そして五騎が、右手に光の槍を装填しながらこっちに迫る。

「ひっ。強そうな武器!」

『永恒之枪(グングニル)!?』

 黒髪少女は一瞬たじろぐも。

『神将矛(シェン・ジャン・マー)!』

 同じような形の紫色の槍を五本、俺の頭上に出した。 

『業主! 扔!』

「な、投げろかな? 了解!」

 俺は急いで槍を一本持ち、迫り来る天使たちに投げつけた。

 プジはすごい。投げる時に、円の魔法陣のような照準がちゃんと出てた。

「うりゃ! うりゃあ!」

 立て続けに三本、相手がこっちに槍を投げつけてくる前に投げて、相手を仕留めることに成功。

 四本目は、槍同士がかち合って互いに対消滅。

 しかし五本目は、相手の方が投げてくるのが速かった。

 ひょいと避けて五投目を放って相手を仕留めたのはよかったが。

「あ! やべ!」

 避けた光の槍が、ロッテさんたちのところへ落ちていった。

 まずいまずいまずい!

 ミッくんの結界はもう限界だ。あんな光の槍は受け止められな――

「ロッテさんー!」

 急降下。でも、間に合わない……!

 槍の穂先が、ずずっ、とミッくんの結界に刺さった瞬間。

 結界と槍の接点で、ぶわっと爆発が起こった。

「なんてこった……!」

 やばい! やばすぎるっ!

 ロッテさんは無事か?! それとも……それとも……

 異様な色合いの煙が、自然の風で流れていく。

 息を呑んで青ざめる俺と黒髪ツインテール少女。

 俺たちが急降下するその真下から。そのときふしゅううううと、蒸気が噴き出すような音を立てて、まばゆい光がほとばしった。

 ミッくんの結界じゃない。これは……!

「う……まぶし……!」

 俺は思わず両腕でおのが視界を隠した。

 ロッテさんの足元から、すさまじく太い一本の光の柱が、天に向かって立ち昇り。

 なんと一瞬にして、爆発でひび割れたミッくんの結界に突き刺さってる、光の槍の残骸を蒸発させた。

 その柱はまばゆく、輝いていて。

 神々しい光を四方八方にまき散らした。


 黄金色(オーロ)の、光を。


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2016/10/14 09:13
よいとらさま

読んでくださりありがとうございます><
いよいよクライマックス?の予感なのであります^^
ボーイミーツガール、テル王子はお姫さまを救えるのか?
テルは普遍的な王道でつっぱしっていくんだと思います^^
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2016/10/14 09:10
カズマサさま

読んでくださりありがとうございます><
視覚的にかなり派手になるようにと、光量増大であります^^
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2016/10/08 00:14
こんばんは♪

飛び交う光弾
散る光条

煙を引いて墜ちる天の戦士
土煙を引いて群がる地のものども・・・

黄金色の光は
復活の狼煙か
終わりの始まりか

このあと、どう静けさを取り戻すのか、
気になりつつ次回にも期待です♪

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2016/09/29 06:44
今度は何方が来たのですかね・・・。




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