夢掌編イベント【ソムニア】第十一夜 星明りの邂逅
- カテゴリ:自作小説
- 2016/09/30 21:03:44
夢と知りせば
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気が付くと、月見草の草原は消えており。
暗い建物の陰に提灯を持って立っていた。
着ていた着物も、今度は羽織袴になっている。
夢なのだから、こんな事もあるのだろう。
そう思いながら建物(どうやら寺らしい)の正面へ回り込む。
先程は煌々とした月明りだったが、一転して提灯の灯りが心許ない。
夜空の星は月が無い方が良く見えるのだが。
歩く先に人影が見えた気がして、提灯を掲げて呼びかける。
「誰かいるのか?」
ぼんやりした提灯の灯りに浮かび上がったのは、ほっとした表情を浮かべる同胞の少女の姿。
「私、サンストーンのゾンネです。あなたは?」
「浄玻璃・・・だよ」とこちらも名乗って見せる。
ゾンネ嬢は言いにくいのか「ジョウ、ハリ?」と小首を傾げている。
苦笑しながら「・・・ジョウと呼ぶ者もいるね。親しい者にはハリーと呼ばれているが」
そう答えるとぱっと表情を明るくして弾む様に言った。
「ハリー?うん、そっちの方がいいわ。ね?私もハリーって呼んで良い?」
余程言いにくかったのだろう、「好きにするといい」と答えると満面の笑みを浮かべている。
広い場所まで出て、そこにあった大きな石に腰を下ろすと、ゾンネ嬢も近くの石に腰かけた。
先程からうずうずとした気配が伝わって来ていたが、どうやら自分の好奇心を満たすらしい。
「ねぇねぇ、そのまあるい灯りはなあに?」
「これは提灯と言う。そうだな・・・ランタンの仲間と言えば判りやすいか」
ぴょんと石から下りて近づいて来ると提灯に恐る恐る触っている。
「これって紙なのね!燃えないの??」
「倒したりしない限りは大丈夫」
今度は私の服装に目を付けたらしい。
「ハリーが着ている服、おもしろいね。どうなってるの?」
「これは日本の着物と言う伝統的な衣装だよ。初めて見るのか?」
「キモノは見た事あるけど、ハリーのとは違うのだったもの」
「これは羽織袴と言う。タキシードの様に改まった場所に着るものだ」
「へぇー、そうなんだ・・・」
ゾンネ嬢の明るい声に惹かれたのか、さくさくさくと土を踏む音が近づいてきた。
音のする方へ提灯の灯りを向けると、所謂吟遊詩人、と言われる姿の青年がいた。
「こんばんは。楽しそうな様子にお邪魔しました」
青年を見たゾンネ嬢がぴょこんと頭を下げて答える。
「こんばんは。私はゾンネ、サンストーンです。彼はハリー」
「申し遅れました、私はイアルス。イアルス・ラメンティ、嘆きの硝子と呼ばれています」
ゾンネ嬢の紹介では中途半端だろうと私も名を名乗る。
「私はファントムクオーツの浄玻璃。ジョウと呼ぶ者もハリーと呼ぶ者もいる」
私の声に少し頬を膨らませてゾンネ嬢がイアルス殿に言う。
「ジョウよりハリーの方が良いと思わない?私はそう思ってるの!」
そこからは三人で一頻り話をしていた。
ゾンネ嬢もイアルス殿も、旅を長くしていたとの事。
ずっと閉じこもっていた私には聞く事全てがとても有意義だった。
イアルス殿が私を何と呼んでいるか?
それは・・・本人に聞いてみると良いだろう。
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前話 <第十夜> 希望の灯り(染井吉野氏)
http://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=454768&aid=62822214
◇ ゾンネンシュタイン・ディー・マリール (杏果の日長石) … 染井吉野氏
◇ イアルス・ラメンティ (嘆きの硝子) … Pal氏
◇ 浄玻璃 (ファントム・クォーツ) … seiya
キャラクター詳細
http://cherspierres.blogspot.jp/2016/01/pierres.html
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染井吉野氏 → seiya → Pal氏
創作リレーイベントです。
「宝石たちがみた夢」というテーマで、参加者間で続きを執筆しあっています。
~心をもつ宝石たちの軌跡をえがく物語群~
サークル幻想断片 創作企画
【ソムニア】 ~夢みる石たち~ イベントページ
http://canarydream.blogspot.jp/2016/08/event-somnia_72.html
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此方は別ルートの夢。
ですが、私の中ではもう一つの夢と干渉しあっている形になりました。
完全にゾンネのキャラクターありきの頼り切った形で申し訳ない(苦笑)
そして此方も事前の根回し無しで投げさせて頂きました。
Palさん、どうぞ宜しくお願いします。
ゾンネ嬢の明るさは眩しいばかりですよ。その眩しさは誘蛾灯に誘われる哀れな蛾、かもしれません。
彼女は柑橘系の美味しそうなイメージありますよね^^
二つの夢が近づいて夢と夢が浄玻璃を通して触れ合ってまた離れていった
夜空の星は月が無い方が良く見える
なぜかしら やってみたことがないからわかりませんけど不思議ですね
ゾンネ嬢の明るい口調につられて口が軽くなっていたようですよ(笑)
ゾンネ、よくしゃべりますよね。。。
ハリーが優しい石でよかった・・・
本当に、まるで先生のようです~。
「ゾンネが浄玻璃を見たらキモノ、キモノとはしゃぎそうだ」
というようなことを仰っていたロワゾーさんにも早く読んでいただきたいです~。
クロスカウンターを食らって倒れるのは私の様な気がするんですがね(苦笑)
まさしくクロスカウンターなのではないかと思った次第です《*≧∀≦》
良いものを拝見しました♪ありがとうございます☆
思いきり暴投した後に事情を知ると言う体たらくで申し訳ないです。受けて下さりありがとうございます。
>風月さん
ほぼ同時期に頂いたので、夢を渡り歩く感じに出来たら、と思って捏ね繰り回した結果がこれでした(苦笑)
>七リィさん
まったくシンクロとはいかなかったですが、まぁこれも有りかと。夢ですし。龕灯(がんどう)は凄いです。
>るーしぇさん
そうです、こちらはゾンネ嬢からのリレーの分になります。ゾンネ嬢のキャラクターに助けられました。
好奇心いっぱいのゾンネちゃんと
落ち着いたハリー先生のかけあいが楽しいですね^^
もう一つの夢とつながっている! なんという面白さ!!
ゾンネの天真爛漫さ そしてイアルスの不思議な雰囲気…
それらと浄玻璃の落ち着いた話しぶりが混じりあって なんとも穏やかで楽しい集まりだ (´∀`*)
異国の文化を学んでいくゾンネちゃんの先生っぽい感じが素敵☆
きっとこれからも 色々聞かれるんだろうなぁ( *´艸`)w
私も提灯って 火元に可燃物が近すぎるんじゃないかとソワソワします(((゚Д゚)))w
あ、意図してそうなった訳じゃないけど私もかな(・・;)
ゾンネちゃんが明るくいきいきしてて
浄玻璃さんが淡々としてる中に楽しげで
読んでいて微笑ましかったです(*^^*)
イアルスの物語は、まだ全く語られておりませんが、
概要はできあがっております。
かなり時間がかかってしまうかもしれませんが、
それでもよろしければ、
ありがたく受けさせていたたきますm(_ _)m
もしかしたら・・・
夢の話の前に「石物語」のイアルスとして、
一編描いてからになるかもしれません。
現在、個人的な重要イベント中につき、
予定が全くつかない状況ですが、
暇な時にでも検討兼ねてお邪魔させていただきます。
予想外のことが起こるキャッチポール形式はおもしろいねー( ´ ▽ ` )ノ