自作10月 笛 『草笛』 後編
- カテゴリ:自作小説
- 2016/10/31 22:13:38
ぐわんぐわんと鉄の翼をはばたかせ、細長い竜が空を飛ぶ。
国境付近の谷間へ向かって、ぐんぐん飛ぶ。
その鉄の頭には、白いウサギと黒い衣の男。そして剣とリュックを背負った赤毛の青年がしがみついている。
「ぺぺ、やっぱりこれさあ、ちゃんと座席作ったほうがいいって!」
「いやそれはそうだけどもさ、なんかめんどくさかったんだよ~」
黒い衣の男は手を伸ばしてウサギをつかまえようとするが、ウサギは舌を出し、赤毛の青年のリュックの中にもぐりこんだ。
「あ! ぺぺこら!」
「このサイズってべんりだよなぁ。小回り効くよね」
器用にリュックからひょこりと頭を出すウサギに、青年がきく。
「あのぅ、なんでおじさんの方は、ピピさんをぺぺって呼ぶんですか?」
「ああ、ぺぺの方が俺の本名だよ。ピピは技師名なんだ。聞くも涙語るも涙の大冒険物語の末に、俺はこのおじさんの弟子から第一級レベルの技師に華麗に転身したんだよ」
「こらぺぺ! おまえはいまでも俺の弟子だぞ! それにおじさん言うな!」
「言われたくなかったら奥さんに戻れよぉ!」
「やーだね!」
黒髪黒衣のおじさんは、金属の竜頭にしがみつきながら手を伸ばしてくる。
ウサギ入りリュックをひったくられそうになったのをサッとかわした青年は、ハッとその視線を空に向けた。
「あれ? なんだあれ……」
「んんん? どうしたおばちゃん代理」
「いやなんか今、きらっと」
たしかに流れ星のようなものが見えた。
ごくごく近く。近づく谷間の上空あたりで。この竜より長くはないが、それと同じようなものが、空を飛んでいたような気がする……。
「うーん、気のせい?」
「よっしゃあ! ぺぺリュックげっとおおお!」
「あっ!」
ウサギリュックがずるりと黒い衣のおじさんにはぎとられる。
おじさんはなんと浮遊している。どうやら韻律を使ったらしい。
「ぐあああああ!」
実に平和なことに。
おじさんに抱きしめられるリュックウサギの叫びが、蒼い空に響き渡った。
「反則だぁ!」
「ふへへへ。そうそう、ぺぺよ、そういえばここらへんにあれがあるだろ? スーパーハッピーモフモフランド。このへんの谷間の奥に設置してるよな?」
「え? 」
「なあ、帰りにちょっと寄ってやろうぜ。いくらウサギだらけとはいえ、あそこの園長、独りでさみしがってるだろうからさ」
「ああ、そういやここらへんにそんなもの作ってたな、うん」
おじさんに抱きしめられるウサギは、複雑な顔をしてぼりりとほっぺたをかいた。
「まあたしかに……ウサギだらけのワンダーランドだけどさ……たしかに……」
びゅおう、と谷間を吹きぬける風に、銀の髪がゆれる。
ふんふんと、無邪気に鼻歌を歌いながら、小さな子供が谷間の中州の岸にしゃがみこむ。
流れる川に、その子は小さな手をひたした。
「笛~笛~ぴっぴっ笛~♪」
小さな手先からゆらゆらと、赤い液体が水の中に溶け出していく。
「えへ。お手手よごれちゃったぁ~♪」
もう片方の手で、その子は口に草笛を当てた。
ぴーっ。
ぴぴーっ。
ぴぷっ。
「ああん、つまっちゃう。でもヴィオは、げつえいよりは、吹くのうまいよね」
銀の髪の子供はたちあがり、うしろをふりかえってにっこりした。
そこに着陸している鉄の蟷螂の足元に、銀の飛行服を着た女が倒れている。
「だってげつえいは、吹いてみてさえしないんだもん? そんなのだめだよぉ?」
ころころと、メニスの子は無邪気に笑った。
女はあおむけになっており、微動だにしない。銀の服をまとったその体から、真っ赤なものがどくどくと染み出している。
「だから、お・し・お・き・だよ~♪ きゃははははは!」
女の豊満な胸のまんなかには――えぐりとられたような、大きな穴がぼっかり開いていた。
その穴の部分に本来あるべき臓器は、みあたらない。
女は、カッと目を見開いてこときれていた。
なにかこの世ならぬものでも見たかのように、その目にはすさまじい色が浮かんでいた。
恐怖、という名の色合いが。
――草笛・了――
ご高覧ありがとうございます><
ヴィオちゃんの狂気はいつだってオープン状態なのです……
いつこわいのが出てくるかわかりません;ω;
とてもこわい子です;ω;
ご高覧ありがとうございます><
化学反応、まさにそうですね。
ヴィオがほんとに爆弾級にやばいです。
別の話の中で書いたこの事件の初出時には、ウサギがかかわってくることは想定してませんでした。
でもおばちゃん代理がウサギにやとわれちゃったのでこんなことに^^;
ご高覧ありがとうございます><
今回の反乱鎮圧編は、この世界のクロニクル的に大変重要な事件です。
同じ世界観の長編のお話があるのですが、そこにどんどこ影響するものなので、心して書きたいと思います。
ご高覧ありがとうございます><
おばちゃん代理が主人公なのですが、
オムニバスっぽい多視点形式なので、すんごく影がうすくなってますよね^^;
ほかの人の視点から書いてるものが多くて、本編の前に番外編集を先に出してるような感じです。
本編は「騎士団営舎食堂物語」として、いずれおばちゃん代理の一視点固定で書きたいと思っているものです。
つまり今までのはすべて、本編から漏れちゃった話とかサイドポジションの話、という位置づけです。
って本編じゃないかっていうのもまざっておりますが……;
なので今後もこのシリーズは、ほかの人の視点で単発短編ちっくに書くことが多くなると思います^^
ご高覧ありがとうございます><
ぺぺが華麗に?ピピになるお話は以前ずっとここに書いていた
「アスパシオンの弟子」というお話なのですが
結局トータル六十万字ぐらいになりました…;
週一更新でよくもここまで続けて、しかも完結できたなぁと思います^^;
赤猫剣がんばってくれそうですがががどうなるでしょうか…^^;
ご高覧ありがとうございます><
この子が出てくるともぅ……
ほんと困りますよね^^;
思惑が交錯する国盗りプロジェクト。
橋を造らせないというわかりやすい目的でやってくるペペさんたち。
色々な野望を抱えているであろう魔王。
目指すゴールが違うものたちが一つ所に集まって
どんな化学反応を見せるのでしょう。
敵の敵は味方?敵の敵はやっぱり敵?
続きがとても楽しみです^^
嫉妬する後宮女官
親王はどういう動きをするのだろう 案外最強キャラ?
ペペたちはいつもの調子
おばちゃん代理がだんだん影が薄く…
主人公交替かな
むかしの長編漫画とかアニメもたまに
主人公やヒロイン交替ってありましたよね…
いろいろ想像して楽しんでいます
ペペさんの麗しき奥方様に亀仙人みたいな小汚い爺様が憑依 なんかエッチだあ><
女というのは傀儡のような 男の子は邪悪な感じ
戦え、おばちゃん代理、ブルームストーカーで精気すいっとってやれぇ~
嫌な事ですね。