機霊戦記 エピローグⅡ あるいは、プロローグ
- カテゴリ:自作小説
- 2016/11/26 18:30:17
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同日同刻。
スラムマンション・シングジャンク店前にて。
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「こちら大陸東部『光陽』支部。帝都『炎安』本部、どうぞ」
『请您介绍一下目前的情况来看、凛明美リンミンメイ、送信』
「はい。東部五区にて観測されました暗黒波動は、この街に潜伏しております。どうぞ」
私は、目の前に飛んできた人魂のような緑の光にそっと囁いた。
渋い壮年の男の声が聞こえてくる光の玉に。
スラムマンションが立ち並ぶ通りに、風が吹きぬけていく。
さらっと私の長い黒髪が風になびいて流れる。
嫌な匂いね。
腐ったどぶ川。まさしくそうだわ。
でももうじき、私は天上へ帰ることが出来る――
『我明白。车队派遣到你、送信』
「博士も喜ぶと思います。では到着を、お待ちします。どうぞ」
『请以维持现状。关闭线、送信』
「了解!」
数日前、東部戦区にほど近い所で、派手派手しい「天使の越境戦闘」を目にして以来。このジャンク店に本格的な監視がつけられた。
今日は赤毛の女装子がこの監視地点に来訪している。
きっとアホウドリサイズの機霊をまた改造するのだろう。
店選びはここで大正解だわよ、ボウヤ。
そう言ってあげたくてむずむずするわが身を、おのが腕で抱きしめる。
「ふふふっ。武者震いかしら」
ぺろりと上唇を舐める私。
いよいよね。
長らくお互いに正体を隠して、お互い何食わぬ顔で過ごしてきたけれど。
みごとに暗黒機霊を復活させたあの腕前。これがあの伝説の技師でなくてなんなの?
きっと間違いないわ。
この世は常に新しいものを求めている。
古きものは、忘れ去られ、無残に捨て去られるのが、世の必定だけれど。
「翼を背負って交戦。そんな原始的な戦い方が、これから一変する……。古き物は、新しいものに生まれ変わる。博士の研究のおかげでね……」
下界にこそ、逸材がいる。輝く宝石たちが。
私が見込んだ博士の研究を実現すれば。わが祖国は、きっと次回の戦でエルドラシアに勝てる。
どきどきするじゃない?
機霊を、もっと進化させたものにするなんて。
新しい時代に、再び古きものが輝くのよ。
帝都から来るお迎えに、きっと「目標」も観念してくださるはずだわ。
だって「目標」は――伝説の技師の祖国は、私の祖国。私たち、同じ国に生まれた者同士なんですもの……。
「ふふふっ。私、小さいころから、あなたのファンだったのよ。もう逃げられませんわ、太・上・老・君・様♪」
私はにっこりしながら、シングジャンク店の扉を押して中へ入った。
片手で、黒縁めがねをかけながら。
「ごめんくださぁーい」
一オクターブ高い声を出せば、一秒も経たずに反応が来る。
「うひょおお! メイ姉さん! 今日はどんな御用でええ?」
「あのねえ、新型のメケメケをねえ……」
「えっ、もうどっか調子悪くなったの?」
店の奥からさっそく出てきた少年に私はにっこり。
ふふふっ。
この子、本当にかわいいんだから。
後ろについてきた目つき悪い新米助手がちょっと気になるけれど、まあ、たいしたことないわよね。
子どもなんか、私の敵じゃないわ。
「ううん、海底神殿にまた調査しにいくことになったから。だからぁ」
「おおおー! 潜水機能つけてほしいんっすね! 任せろおおお!」
「くわしく依頼の内容を説明してもいいかしらー?」
「どーぞどーぞ、さああ、うちの台所にぃっ」
黒髪の少年が背を向けたすきに、私はまた上唇をなめた。
ふふふふ。
逃さないわ。
この黒髪少年も。この子のおじいさまも。そして、祖国も。
近い将来、すべて私のものになるのよ。
すべて……
そう、未来は。
私の未来は。きっと明るい――。
機霊戦記Ⅰ 黄金の女神編 ――了――
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最後までおつきあいくださいまして、ありがとうございました(感謝)
推奨4万字ものの少年漫画雑誌原作のストーリーコンテスト用に書いてみたお話です。選考には残らなかったのですが、期間内に中編をひとつ書き上げる、という自分のノルマは達成出来ました。
内容的にロッテさん×ミッくんがなんだかBLっぽくなってるので、少年漫画的にはそこが微妙?というのと、更新が遅く宣伝もあまりできずで、ネットサイト更新に不可欠な「営業努力」が足りなかったかなと^^;
ちなみに総文字数は五万六千字ほどになりました。テルとアムル二視点交換ですすめたので、もし一視点だけの描写だったら四万ぐらいにおさまったと思います。
あるいはプロローグ、との題字のとおり、つづき=戦記Ⅱの構想があります(メイ姉さん編)が、続きを書き始める前に、これからなろうさんにて改稿・移植連載して反応を見てみるつもりでおります。
ていうか執筆中、原作コンテストに出すより自分でこの話のマンガを描いた方が手っ取り早くないかい……とちらっと思っちゃったり…^^;
ジャンク街とかメケメケ・テケテケとか、自分がビジュアルで見たい物体なので……。時間があったら、この世界のイラストを描いてみたいです。
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ご高覧ありがとうございます><
おつきあいくださいまして本当に感謝です。
マンガ原作ということでビジュアル的にどうなるのかなといろいろ考えたお話です。
別のところでメケメケ・テケテケは東南アジア風のイメージ、というご感想をいただいたので
そのテイストも入れこみつつ、いつかほんとにマンガで描いてみたいです^^
ご高覧ありがとうございます><
少年漫画的な展開を考えたらメイ姉さんはなぜかこうなりました@@;
ジャ○プ的に次の話につなげる、余韻をひかせるということを考えたからです。
ということで二話目はメイ姉さんがメインのお話になっていきます^^
黄金の女神編の完了、お疲れ様でした^^
マンガ!
見たいです。そして自分の描いたイメージと
比べて見たいです^^