Nicotto Town



自作12月 ケーキ 「鋼の神」エピローグ4/4

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「おはようございます、赤猫さん」

 あ。猫目の技師さん。おはようございます。

「いよいよ、判決が出ますね」 

 眠っていた私はゆっくりゆっくり、赤い心臓をスリープモードから戻しました。
 うすぐらい地下留置所の壁が見えてきます。
 裁判所の地下にあるここは、春たけなわだというのに真冬のようにひんやりしています。

『審議、ずいぶんかかりましたね。ここに入れられて、三日と十一時間四十五分経過しました』
「ええ、長くかかりました。陪審員たちは、だいぶもめたみたいです」

 猫目の技師は、私に銀の鎖を巻きつけ始めました。

「あまりきつくは縛りません。形だけです。それにしても先日のあれは、すばらしい演説でした」
『む?』
「あなたさまが被告席に置かれましたとき。御みずからご自分の能力を示してみせたでしょう? あれで赤毛の方への悪い心証は、だいぶ払拭されているようです」

 ああ、陪審員たちのまん前に、大きな穴を開けてやったあれのおかげで?
 ごりごり熱線出しながら、一気に大音量でえんえんまくしたててやったから、正直どうかな、と思いましたけど。
 でも思いの丈を思いっきり叫ばせてもらいましたよ。

 主人がいなくても、私はこのとおり、自由自在に力を行使できるって。

 メニスの甘露にあてられたゆえに、私こそが主人を無視して暴走してましたって。
 
「代わりに、あなたへの印象が最悪になっておりますが……」
『ご心配には及びません。私は嘘は申しておりませんよ。私は我が思考を止めて、主人だけでなく、この世界を完全に無視したのですから』
「さあ……判決を聞きに参りましょう」

 裁判所に入った日、私たちはひとりひとり個別に被告席に立ちました。
 そのため殿下のゆきだるまケーキがどんな反応を得たのかは、のちほど猫目の技師から教えてもらいました。
 王弟殿下とともにしずしずと運び込まれた、寄りそう二つの白い塊を見た瞬間。
 兄王陛下は両手で顔を覆い、肩を震わせて、王弟殿下のお名前を叫ばれたそうです。
 きっと涙を、必死におさえていらしたのでしょう……。  

「どのような結果になるかわかりませんが。王弟殿下の御心は、陛下に届いたと思います」

 猫目の技師は私を抱え、留置所を出ました。
 彼は暗い階段をゆっくりゆっくり、登っていきます。
 はたからみればそれはまるで断頭台にのぼるような光景であったでしょう。
 でも私の中にはふしぎと、不安や焦りはありませんでした。
 階段の先が、とても明るかったからでしょうか。 
 私は柄にはまっている赤い心臓をまばたきさせました。

『ネコメさん。まぶしいです』
「そうですね。今日は、よいお天気ですよ」

 技師の声が陽気に聞こえるのは、気のせいでしょうか。
 階段の先にある狭い戸口からは、日の光が燦燦とさしこんでおりました。
 我が心臓の目が潰れるほどに、それはあまりにもまばゆく。
 金剛石の煌めきのように輝いておりました。



――鋼の神 了――


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2017/01/31 22:28
もはや心残りが無く心も澄んでいるのでしょうか?
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2017/01/23 10:55
E.Greyさま

お読みくださりありがとうございます><
猫が多くて本当にすみません@@;
赤猫剣はエクス剣と呼び変えた方がいいかもしれないですね。
(もともとはエクス○リバーですし、赤猫の本名はエクステルですし)

主人公、活躍させないといけませんよね。
おばちゃん代理、これからがんがん、がんばります・ω・
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2017/01/23 10:51
ミコさま

お読みくださりありがとうございます><
たしかにー^^
王弟殿下の剣は赤猫剣みたいにはっきりとはしゃべれないでしょうが、
ご主人様のことをはらはらと心配していそうです。
ご主人様の性格にもかなり影響されそうですよね。
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2017/01/23 10:47
紅之蘭さま

お読みくださりありがとうございます><
刀身はすぐぼろっぼろになるので、今まで何度も打ちなおされているみたいです・ω・
最新版は、隕鉄鉱を加工した金属で刀身を作ってもらっています。
魂が宿っているのは柄についてる赤い宝石の部分で、その中に一万年以上もの情報が蓄積されています。
この本体はルビー(鋼玉)がベース。そこにいろいろな情報膜を貼られています。

二十四代目はほんとどうなるのでしょう^^;
第一話の状態にいきつけるようがんばります・ω・>
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2017/01/23 10:34
kobitoさま

お読みくださり、ありがとうございます><
東洋と西洋の折衷というか、文化思想のメルティングワールドに独自性を感じていただけましたこと、
とても嬉しいです^^
東洋西洋どちらの文化も大好きなので、私の脳内では混じりあってしまっているみたいです^^
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2017/01/23 10:24
スイーツマンさま

牙王たんは神獣になってしまったので、もう完全におばちゃん代理の「守護神」です。
なので将来、第一話にでてきたエピソード、
「人間の奥さん探し」(普通の子孫を残すために)ということになってしまうのだと思われます@@;
しかしほんとにこれからどうやって王様になるのでしょう。
仰る通り、牙王たんが大活躍してくれそうな気がします^^
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2017/01/23 10:20
カズマサさま

お読みくださり、ありがとうございます><
3頁目でちょうど区切りがついてますが、判決の結果を入れないと、と思いました。
長くなってしまいごめんなさいなのです。

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2017/01/18 03:20
最初、猫目さんと赤猫さんで混乱しましたが少し理解しました
物語がだんだん深化していますね
おばちゃん代理の活躍がもっとみたいです^^
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2017/01/14 18:06
おばちゃん代理の剣と王弟殿下の剣はまた違うのだろうなあと想像して読みました
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2017/01/13 15:48
一万年の命をもった剣
いったい素材はなにでできているのだろう
二十四台めさんの運命やいかに
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2017/01/08 23:12
物に魂が宿る、というのは、付喪神(つくもがみ)に通じる面白さがありますよね。
転生というのも、仏教的だから、Sianさんのお話は、西洋的でいて日本を感じる、ユニークさがあるな、と思います。
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2017/01/05 20:31
狼御前がいるので、剣のシステムが稼働する前に噛まれてしまい、おばちゃん代理は晴れて、統一大陸帝国という大輪の花を咲かせるのであった。しかし祝賀パーティーでかの王弟殿下のケーキにあたってあえなく……。鯛の天婦羅にあたった家康みたいな。――読後妄想文
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2016/12/28 03:29
まだこのお話は続くのですね。

3回目で読んだ時、一件落着かと思いました。




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