重要会議の名目で近場の温泉旅館を利用。

秘密会議でもないので院内の会議室でもできる内容なのだが、幹部の慰安会みたいなもんだ。

幹部の会合なので、おじさんとオバサンばかりで、若いといえば私だけ。
と思ったら、事務の若い女性が2人、書記と雑用の名目で事務長が連れてきた。

会議の後は宴会になるので、お酌のためであることは明白ながら、彼女らも
勤務時間に温泉に入って美味しいもののご褒美ということで、2つ返事で応じたらしい。

その会議は「今年度の本部方針と支部における改革案」と大そうな内容みたいだが、本部方針の伝達みたいなもの。
改革案は、早い話が昨年と大差なし。

本来の目的と思われる宴会には、早めに仕事を終えた肩書のあるドクター達も加わり、当然乾杯から始まったが、風呂上がりの美味しいビールを一気に飲み干す。

「いやあ、風呂上がりのビールは美味しいですからなぁ。」後ろ脇に院長がビールを持って注ぎに来ていた。

なんという素早さ、私の隣にいた副院長が席を立った。
そこに院長が何事もなく座って私に話しかける。

私としては、そんなつもりはないが、本部の大目付（回し者）という立場らしい。

忖度なんて最近の流行語だが、日常茶飯事どこでもある行為だ。

そういうことはともかく、宴会に出た特別料理は最近手に入るようになった2倍体岩魚のお刺身（生け造り）とムニエル（一切れだけ）確かに岩魚は美味しい。しかも普通にはない大きなな魚体。

釣り仲間の情報で何とか手に入れたもので、私たち以外にはこの料理は出ていない。

さて、翌朝、朝食後早めに病院移動のはずだったが、その時2人が腹痛と吐き気でダウンしていたが、食べ過ぎとか飲みすぎと思われ、病院に帰って点滴で休ませるとかなんとかそそくさ宿を後に。

その後が大変で、帰ってから始めの2人にもう一人加わってトイレの住人になってしまった。

これはおかしい、殆ど酒を飲まない人まで。

症状は単独なら感染性胃腸炎だが、集団となると食中毒の可能性が大きい。

止まった宿では大人数に同じ食材の料理を出していたが、以上の訴えは皆無とのこと。

そうなると、特別料理の岩魚か？

生で食べたから原虫に取りつかれた可能性もあるが、養殖でないと存在しない2倍体岩場でこれまで事故はなかったはず。

身内だけのノロウイルスかもとか疑いは続くが、とにかく感染を広げてはならない。

昨晩の参加者は会議室に隔離し、触ったものや、使用したトイレは次亜塩素酸消毒を徹底。

念のため全員マスクと、手指消毒を徹底。患者さんには近づかないで、他の職員とも極力接触をさせること。

幸い、3人以外には症状が出なかったが、潜伏期と考えられる24時間、つまり夜9時まで経過観察。
念のため抗菌剤服用。

解散後は各自、自覚症状に注意することとして経過観察。

結局ノロウイルスではなく、それらしい最近は同定できずで、何らかのウイルス性胃腸炎ということになったが、幹部がろくに仕事できなかったので、何とも迷惑な事件ではあった。

目の前の人に指示を出すのに、メールかスマホでは何ともじれったい。

周りがいら立っているのが良く分かる。
しかしながら、病院の中で患者さんに感染させるようなことがあったら、その原因が幹部の宴会だったなんてことになったら報道されること間違いない。

それに対する危機管理は良くできていると、褒められたたもんでもないが。