ある神が死に、その記憶と想念は 無数の宝石となって砕け散り…。
やがて人の手で掘り出され、磨かれ、さまざまな持ち主の手から手へと渡っていった。

さらに時を経て、宝石たちは、多くが人の姿をとり、
抱え持った特性をベースとした人格と感情を持って、この世に存在するようになる。

その、神の記憶と想念を受け継いだ宝石たちは、ある宝石泥棒によって
時には盗まれ、時には買われ、輝石の館に集められた。

これはそのうちの１つ、カーネリアンとも、蛇の紅玉髄とも呼ばれる
コルナリーヌ・ド・ラ・ピトーヌ の物語である。

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趣味は、と聞かれたら、夜の散歩と答える。

私、コルナリーヌは、カーネリアン （和名･紅玉髄）。
クォーツの一種には違いないが… 水晶などが太陽光を浴びてパワーを補充をするのに対し、
太陽光を長時間浴びると色褪せるという極めてデリケートな体質を持っている。

浴びるなら月光だ。満月はパワーを補充してくれ、新月は身にまとわりつく穢れなども浄化してくれる。
力を使い過ぎて倒れそうになっても、月夜ならば回復は早い。

ただ人工的な灯りには紫外線が多く含まれているので、昨今は夜もあまり快適とは言えず、
本当ならば、広大な砂漠地帯にでも出向いたほうが月光浴には適しているが、
それでも多くの人が行き交う街の、夜という世界は…。
どれほどの歳月が経っても愛おしいと思う。

私の最後の持ち主の、懐かしい顔を思い出させてくれる。

私の最後の持ち主となったのはドゥミモンデーヌ、俗に高級娼婦と揶揄される種類の人間だった。
父親がそれなりの階級の出であったらしく、教養を持っていたが、
母親の身分が低かったがために、あまり幸福な子ども時代を過ごしたとはいえなかったようで、
いつしか複数の後援者を持つ裏社交界の住人となっていた。

私が彼女と初めて出会ったのも、その頃だ。

ファーストコンタクトは、修羅場だった。
彼女に愛を伝える若い男に対し、見下した目をして、冷ややかに、そして静かに悪口を浴びせかけ、
贈り物であるはずの私を、安い石と言い放ったのだ。
若い男は激高し、さらには手にしていたステッキを振り回し、周辺にあったモノを破壊し、
最後は、とても上流階級の人間とは思えない 捨て台詞を残して出て行った。

私を置き去りにして。

ほっと安堵のため息をついた彼女は、私を拾い上げ、何度か謝罪を繰り返し、
私を贈り物にしようとした若い男が どれほど卑劣な男であるか、自分がどれほど嫌っているか を語り、
また謝罪の言葉を口にし、最後に、よろしくね、と。

石に対して、まるで友だちのように親し気に、でも丁寧な口調を崩さない彼女を
ヘンなオンナだと正直、思った。

それから彼女とは長いこと、ほぼ人の一生とも言える時間をともに過ごした。
その長い時は石である私の人格形成に、多少なりとも影響を与えていると、時折思う。

カーネリアン （和名･紅玉髄） は、勇気を与え活力を与え、勝利･成功に導く石とされているが、
やる気のない者、やろうともしない者に、与えられる勇気も活力もない。

石のチカラを引き出すのは、持ち主本人の心構えによるところが大きいのではないか。
それは彼女と暮らして感じたことの１つだ。

… どこか遠くで0時を告げる鐘がなり、同時に人の悲鳴が聞こえたような気がしたが、
すぐに小さくなり、喧騒に掻き消された。

夜の世界には昼の世界とは異なる深みがある。
夜の世界には、昼とは異なる人間が、人格が、感情が渦巻いている。
そんな世界を時々、散策して歩くのが好きになったのも、彼女の影響がまったくない
とは 言えないだろうと思う。

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コルナリーヌ・ド・ラ・ピトーヌ Cornaline de la Pythone  （蛇の紅玉髄： 愛称コルナリーヌ、ピト）

あたたかみのある朱色のカーネリアン。小さな蛇を模している。
あるべき熱と心地よい力を所有者に保たせる石。
ジャイプルの藩王家から、英国人貴族の手に渡り、ある混血の女性のものとなる。
女性はドゥミモンデーヌとして一世を風靡したが、やがて石とともに失踪し、
名を変えて平凡で静かな生活を送り、僻地で没した。
仕掛けのある隠し箱とともに古物商に売却され、宝石泥棒に購入される。


～心をもつ宝石たちの軌跡をえがく物語群～
サークル幻想断片　創作企画

　　石物語　Les Histoires des Pierres

石物語 第二期 公式サイト
http://cherspierres.blogspot.jp/


(((o≧▽≦)ノ彡

幻想断片、石物語。神を基とした石 （とキャラ設定） を１コ頂戴しましたｗｗｗ
カーネリアン、もっと朱色なイメージですが、(*´-ω-｀)・・・ ニコ にカーネリアンのイメージに合う色って ないのよね。
なので、オレンジと赤を組み合わせて誤魔化してみました。

もっと しっくりと来るアイテム、無かったかなぁ (￣～￣lll)
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