【石物語】聖夜の邂逅
- カテゴリ:自作小説
- 2017/12/25 11:58:03
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
その日、まっしろな鳩が羽ばたききて、あなたのてのひらに、紙製の薔薇を咥えおとした。
薔薇の茎からひとひらだけ分かれた葉には金文字で、アルファベットと数字が書かれている。
書庫の区画名だ。
輝石の館には書庫がある。
このような場所だ。
両開きの扉をあければ、上方は、深い濃い青さ。
星々を模した、金銀の灯またたく、夜色硝子の巨大な円天井である。
内壁はすべて書架であり、ゆるやかな勾配の螺旋階段が蔦のごとく這いつたう。
古風な鳥籠状の昇降機が、ごく静かにあがりさがりする。
底しれない深さ。蔵書数はどれほどだろうか。
その知の地下坑を、通路はめぐる。あるいは橋梁となってよこぎる。
かくれがのような小さな閲覧室が処々に口をあける。
示された区画にいけば、あなたのために用意された本がある。
書物は発光してみずから知らせるだろう。
題名はあなた(宝石)の名であり、一頁目には、走り書きのメッセージがあるだろう。
あなたのたましいの道行きをえがいた物語がそこにあり、けれど、結末はどこにもみつからない。
はてしない物語さながら、
ひとつを終えて、またひとつがはじまり、終わり、はじまる、
絶えず生まれ、死にゆく風や、うちよせてはひく波にも似た、
変わりてとどまらぬ、それらをおさめた本であるから。
みたこともない風景、おぼえたことのない感情、かわしたことのない言葉をつづった頁が現れることもある。
そうして、ひらくべき頁をすべてひらいた瞬間、
その本は、光の鳥になって、真昼の青さに様変わりした天井へと羽ばたき去ってしまうのである。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆ じょうはり 浄玻璃
法性寺流の静謐で剛毅な筆で、だれかの心穏やかな日常をしるした草子。
その日、まっしろな鳩が羽ばたききて、あなたのてのひらに、紙製の薔薇を咥えおとした。
薔薇の茎からひとひらだけ分かれた葉には金文字で、アルファベットと数字が書かれている。
書庫の区画名だ。
輝石の館には書庫がある。
このような場所だ。
両開きの扉をあければ、上方は、深い濃い青さ。
星々を模した、金銀の灯またたく、夜色硝子の巨大な円天井である。
内壁はすべて書架であり、ゆるやかな勾配の螺旋階段が蔦のごとく這いつたう。
古風な鳥籠状の昇降機が、ごく静かにあがりさがりする。
底しれない深さ。蔵書数はどれほどだろうか。
その知の地下坑を、通路はめぐる。あるいは橋梁となってよこぎる。
かくれがのような小さな閲覧室が処々に口をあける。
示された区画にいけば、あなたのために用意された本がある。
書物は発光してみずから知らせるだろう。
題名はあなた(宝石)の名であり、一頁目には、走り書きのメッセージがあるだろう。
あなたのたましいの道行きをえがいた物語がそこにあり、けれど、結末はどこにもみつからない。
はてしない物語さながら、
ひとつを終えて、またひとつがはじまり、終わり、はじまる、
絶えず生まれ、死にゆく風や、うちよせてはひく波にも似た、
変わりてとどまらぬ、それらをおさめた本であるから。
みたこともない風景、おぼえたことのない感情、かわしたことのない言葉をつづった頁が現れることもある。
そうして、ひらくべき頁をすべてひらいた瞬間、
その本は、光の鳥になって、真昼の青さに様変わりした天井へと羽ばたき去ってしまうのである。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆ じょうはり 浄玻璃
法性寺流の静謐で剛毅な筆で、だれかの心穏やかな日常をしるした草子。
略画式風、漫画風の書絵が散見されるが、書にくらべてあまりよい腕前ではないようだ。
比喩なのか、飼い猫のほか、飼いたぬき、飼い鬼火、こうるさい人面鴉といった、
面妖な存在へのぼやきや観察もしばしば綴られている。
メッセージは、「君は君のゆくすえを予見するだろうか、ハリー」
Copyright ロワゾー氏
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ひっそりと書庫を訪れた浄玻璃が、自分の名を冠する和綴じの冊子を見出すのに然程時間は掛からなかった。
それはそうだろう、届けられた薔薇の葉にはしっかりと記されていたのだから、手掛かりが。
「何とも手の込んだ仕掛けを考えるものよな」
ぼんやりと光る本に手を伸ばしながら、恐らく、いや、間違いなく仕掛け人だろう人物を思って呟いた。
冊子の表に墨痕黒々と書かれた己の名を見ると、一瞬躊躇しながらも中を検める。
中身はと言えば、誰か(多分陰陽師あたりか?)の日記の様なものだった。
時には観察記録の様に見えるのは、人ならざる存在について書き記してある為か。
「絵心は・・・あまり無いようだ」
どうやら文を書いた本人が描いたと思われる絵は、鳥獣戯画を意識した様子はあるものの上手いとは言えず。
それでも、説明書きと一緒にすれば何とか見られる程度のもので。
中ほどまで読み進めた所で、手の中の冊子は変容し、輝く一羽の鳥となって飛び去っていった。
そして眼前には、表紙を開けた最初の頁に書かれていた文字だけが浮かび上がり残されていた。
『君は君のゆくすえを予見するだろうか、ハリー』
「いいや、しないよ。君だって、私がそうするとは思っていないだろう?」
そう言いながらゆっくりと振り返った浄玻璃の視線の先には、彼を彼たらしめている真紅の影があった。
~心をもつ宝石たちの軌跡をえがく物語群~
サークル幻想断片 創作企画
石物語 Les Histoires des Pierres
石物語 第二期 公式サイト
http://cherspierres.blogspot.jp/
サークル幻想断片 創作企画
石物語 Les Histoires des Pierres
石物語 第二期 公式サイト
http://cherspierres.blogspot.jp/
シェーンがハリーになついてるので 3回くらいは登場してるはず。
そしてこれ束帯ですね。
もしよろしかったらこの画像をいただきたいです。
他のに着替えていただいてももちろんいいですし
是非是非お願いいたします。
お返事待ってます。
メリークリスマス、seiyaさん。
ってリュンヌ癇癪起こしそうなんですけど
やっぱり鳥になっちゃう?
もう本は閉じて読まないでおこうかな(。•ˇ‸ˇ•。)