Nicotto Town


こはるびより ⁰㉦⁰๑ 


永遠と死の定義

大崎善生 著。

「アジアンタムブルー」完読しました。



愛への思いの馳せ方や
永遠と無限の概念の定義、
幸せのありよう

このあたりの表現技法があたし好みだったし、
とても共感できました。

あたしたちが逃れようもなく通って来た道、
人が人として知性の目覚める多感な時期に
自分とは何か、宇宙はどこまで無限なのか
人は死ぬとどうなるのか、そんな思いに
捉われて、夜も眠れなくなるくらい苦悩する
時期があります。

哲学とまでいかなくても、あたしたちは
自分がどこから来て、どこへ行こうとしているのか
生きている過程でその存在事由(レーゾンディーティル)を
限りなく求めようとする。人によってその差異は
あると思うけど、きっと誰もが同じように考えて
きたこと。大人になると日常の瑣末な出来事で
ふとそれらのものを忘れがちになるけれど、
そして考えても答えの出ない課題にそのうち
諦めてしまうけれど・・・。

考えること。無限について、死について考えること、
それはすなわち対極にある生や”永遠ではない自分”に
ついて考えることにもつながる。

本書の中でも多感な時期に自分の娘が死に怯え
眠れなくなった時に、父親があるコラムを書く。
無限とか永遠とか死とかいう概念の恐怖は
何も君だけではなく、誰にでもあって、
同じように皆が悩んでいることなんだと知らせたくて。
「無限や死が怖いのはそれを君が分からないからだ」
という前提に基づき、父親は「永遠」について
中国の言い伝えを引用しこういう説明を付けた。


  天女が千年に一度舞い降りてきて

  3000畳敷きの岩を羽衣で一掃きする。

  その岩が摩滅してなくなるまでの時間。

  それを永遠と言う。


永遠の定義が分かれば、永遠について悩む必要は
なくなる。便宜的にこんな風になにもかもに定義を
つけて行くことは大事なのかもと思いました。
同じように、死に対しても。

あたしたちは死が分からないから死に対して恐怖を抱く。
本書でも癌に侵されて余命1ヶ月と宣告された
恋人の側にいて苦悩する主人公の姿が描かれていた。
だけど二人は限りなく幸せだったのだ、死の間際に
おいてもなお。。。。


それはきっと彼が、彼の彼女に対する愛が、
その思いの全てで、
あたしたちが死について考える時に必ずぶち当たる壁、
 「死というものがどんなものか分からない」
という問題に必死に定義付けをしようとしていたから
だと思う。そして彼が最終的に彼女に出した答えは
こういうものだった。


 君は僕の中に引越しをする。ただそれだけなんだ。

僕が生きている限りは僕たちはいつまでも一緒だし、
僕が君の事を覚えている限り君は僕の心の中で生き続ける。

二人が愛を求めあう過程でずっと追い続けてきたもの。
どんなにきつく抱きあっても埋められることがなかった隙間。
どこか不安定で、いつも1枚の薄い粘膜で隔てられていた
二人の間に今はもう何の隙間もない。埋めるべきものは
もう何もないのだと、最後に彼は彼女に言う。

そして彼女も彼に言う。
「子供の頃は、胸が押し潰されるように死ぬことが怖かった
のに、不思議なくらい今は平静なの。きっと死ぬことって
わからないことだから怖かったのね。でも今の私にとっては
そんなに分からないことでもないから」

「私、幸せ。生まれてきて、きっと今が一番幸せ。」

あたしが死について考える時
誰かがこんな風に定義を差し出してくれるんだろうか
まだ死ぬことは怖くて、分からなくて怖くて、
死について思うときっと無念な気持ちでいっぱいになると思う。
それでもなお、こんな風に幸せだと思えるだろうか。
明日死んでいく時に「僕たちは何かに勝っている」と
確信し、思うことができるだろうか。
明日は死んでいるかもしれない。だけど今日は生きている。
その事に感謝することが出来るだろうか。

正直言って自信はない。おそらくは
実際にその身を置いてみないと
見えて来ないものなのかもしれない、本当の意味では。

秒速4000キロのスピードで膨張を続けている宇宙の
中に含まれるあたしたち。
「無限」が「膨張し続ける」ことだとすれば、
そこへ含まれるあたしたちもまた同じように無限に
存在し続けることは出来るはず。

この一冊の重み、意味。存在事由。

あたしにとっての永遠とは?
死とは?

そういう定義を少し考えてみようかなと
思えるような、そんな本でした。


#日記広場:小説/詩

アバター
2008/10/08 20:08
すごい本ですね~(*´∀`*)
僕も死ぬことはよく考えます。

「死の壁」とか読んだけど
まだ払拭できない恐怖があります♪

真の意味で命かけられるものをみつけたいっすね。
アバター
2008/10/08 19:20
本を読むことによって自らが感じ、考え、到った結論を言語化する作業は、
非常にエネルギーが必要だったと思います。
お疲れ様でした。
昔読んだ現象主義という本を思い出しました。
アバター
2008/10/08 18:37
なげーwww




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