「黒の舞師 壱ノ巻」 第一話試し読み1/2
- カテゴリ:自作小説
- 2018/07/10 20:29:23
えっとなんかうん…・ω・`
通販ページを作ったのはいいけれど……・ω・`
試し読みないから中味分からんですよね…
…と思ったので、お試し読みとして第一話を置きます…
B5版170p イラストカードと五言絶句しおりのご購入特典付きです。
ご購入くださいましたら嬉しいです・ω・`
https://ealielii.booth.pm/items/895356
※ちなみに原価は一冊2千円ぐらいかかってたり…。
てことで半額大出血セールです。
黒の舞師 壱ノ巻
「黒の塔」
********************
第一話 しろがねの夜
********************
肌はほんのり茶色だと、母親は言った。髪の色は黒だとも。
栗皮に墨汁。兄や姉や弟だけでなく、両親も祖父母も、みんな同じ。
「しぶくてとろとろ?」
栗皮は渋い。濃い墨汁はとろりとしている。
「あらまあ、たとえが悪かったね。まあ要するに、おまえはどこもおかしくないわ」
おかしくない。
幼い娘はことあるごとに、そう言い聞かせられて育った。どこもかしこもふつう。けれど……と、母親はきまって残念そうに言うのだった。
「顔は、父さんに似ちゃったわねえ」
娘はいつも、糸をつむぐ母親のそばにいた。
わたくりで綿の種をとったり、糸弓でびんびんはじいてほぐしてかためるのを、手伝った。
母親はからから糸車を回しながら、娘にいろんなことを教えた。
家は小さな村にある。村はお山の中ほどにある。
お山は大地にそびえている。お山の上には、空がある……。
「空に輝いているのは、天照(あめてらし)さま。夜に輝くのは、月女(つきめ)さまとその小さな御子さま。それから無数に輝く瞬き(またたき)さま。御三柱は、おやしろに祀られてるんだよ」
娘は糸つむぎを手伝いながら、いっしょけんめい母親の話を聞いた。
太陽と月の親子と星々。天におわすまばゆい方々が、すめらの帝国の神々であるそうだ。
天照らしさまは、肌焼くあの、熱いもの。娘はすぐにそれを理解したけれど。
月女さまとその御子さまたちはどんなものか、よく分からなかった。
「私とあんたみたいなものだね」
「おかあさんと、こども?」
「そうよ。月女さまは、しろがね色の女神さま。子どもを守ってくださるの」
「しろがね……しろがねって?」
首をかしげる娘の目は、光をとらえない。瞳は宝石のようだと、母親はおおげさに褒めたけれど、まったく用をなさぬものだった。
だから娘は、味やにおいや触れた感覚で色を覚えている。
「しろがね……うーん……」
月の色が分からない娘を、母親はある晩、畑に連れ出した。
きれいな満月の夜。さんさんと白銀の光がふりそそいでいたが、娘は首を傾げるばかり。
「耳を澄まして、よおく聴いてごらん」
すると母親は静かに歌いだした。昼間につむいだ一本の太い糸。そのはじを娘にもたせて、ぴんと張りながら。
『指先触れれば あなたとわかる』
美しく澄んだ歌声に、娘はびっくりした。
その声に、たるみなく張られた糸がふるえる。びんびんとこまやかに、わずかに跳ねながら。
するとあたりに何かぞくぞくする、不思議な気配が降りてきた。
『あなたがそうだと 魂が気づく
ふりそそぐは 白き炎
御子を抱きし しろがねの腕』
おどろいたことに。不思議な気配につつまれたとたん、娘は、前よりもっともっと音がよく聴こえるようになった気がした。鼻や肌の感覚も、なんだかするどくなったよう。
夜のにおいはすっきり涼やか。そのときは冬がまぢかで、空気が澄んでいたからだろうか。すうっと心地よく鼻が通った。
頬や手足に、さらさらした空気がまとわりついているのがわかった。そよ風の流れがはっきりと。
天からは、何かがふりそそいでいる。天照らしさまが放つ陽ざしとそっくりのものだ。しかしあんなに熱くも強くもない。とてもはかなく、焼けた匂いはしない。だがたしかにそれは、燃え輝いているのだろう。静かにちりちりしゃらしゃらと、肌を焼いてきた。
娘はハッと気がついた。
この「ちりちりしゃらしゃら」こそが、月の光でしろがねなのだと。
「しろがねって……しずかなんだ」
「とても静かで美しい色よ」
ささやきあう声が、ふおんふおんと奇妙に響く。
それにしても不思議だった。
歌に震えた糸が出した異様な気配が、すっぽり娘をつつんだその振動が、あたりのものをくっきりはっきり、浮き彫りにしたのだった。
はるか頭上で、月が静かに冴え冴えと輝いているのを、娘は肌で感じた。
体にあたる風は、まるで踊っているよう。くるくる回転している。
母親はまた歌いだした。さらに糸がふるえてびんびん響きだす。
「かあさん。かあさん。なんてきれいなおと! てんのきらめき、おどるかぜ!」
気づけば娘はくるくる。糸のはしを持ってふり、母親の歌に合わせて、はしゃぎ踊っていた。
「かあさんうたって。もっとうたって。ふしぎ。ふしぎ!」
けれども糸の張りがなくなったとたん、不思議な気配は消えてしまった。
耳や鼻や肌に感じた、するどい感覚も。
「あらあら。震わせないといけないのに」
母親は苦笑したが、それからしっとり、恋の歌のようなものを歌ってくれた。あなたが好きですとか、そんな単純な意味のものを。
歌がすっかり気に入った幼い娘は、それからしょっちゅう、母親にねだった。
からから糸車をまわしているときも。米を炊いているときも。風呂釜に薪をくべているときも。母親にずうっとひっついて、せがんだ。
「そんなに歌ったら、声が枯れてしまうわ」
苦笑された末、糸つむぎのときに、何か歌ってくれることが常になった。娘はくるくる糸車をまわしながら、自分もくるくる踊った。
きれいな歌声をきくと、どうにも踊りたくて仕方なくなるのだった。
母親はそんな娘を見て笑った。
「上手だねえ」
上機嫌に歌う母親はしかし、あの夜以来、糸を震わせて不思議な気配をおろすことは、しなかった。
「あれは特別。だれにも内緒よ」
幼い娘は単純に、おかあさんはすごいと思っただけだった。
どこでどうして母親があの技を覚えたのか、それとも自分で編み出したのか、ようやく疑問に思い始めたころ。すなわち娘が十になり、きれいな糸をつむげるようになったころ、母親は突然、病で亡くなった。
それであの気配の秘密はついぞ、聞きそびれてしまった。
娘はいっとき、歌も踊りも忘れてしまうぐらいひどく悲しんで、しばらく泣いて暮らしたけれど。
喪が明けて糸つむぎをしたら、たちどころに思いだした。
月の光を視せてもらった、あの神秘の晩を――。
(あのけはい。あのふしぎなくうきを、もういちどおろせたら……)
ぎゃああああ!
ありがとうございますありがとうございます;ω;`!
さっそく手配しますー! 感謝です……(涙)
ふわおねえさま、ご高覧ありがとうございます♪
引き込まれてくださってめちゃうれしいです♪
1巻購入致しました。
じっくり読ませていただきますねっ❤
愛してるよー、みうみさん♪
お試し読みさせて頂き有難うございますぅ❤○┓ペコ