Nicotto Town



コミュニケーションがいろんなものをつなげていく

「ルポ 中年童貞」中村淳彦著 

著者の中村淳彦氏は一時期高齢者デイサービスの経営に関わっていて、当時未婚中年男性が人間関係のトラブルをくりかえして起こすことが多く、トラブルを解決するために、彼らがやっていることがいかによくないことか注意してもまったく理解してもらえない。彼らのものの考え方や行動が決定的に周囲とはズレていることに気づいて中年童貞の定義をしたという。すべてが著者の経験に基づくレポートで、中年だからとか未婚だからとか女性経験がないから、すべてが問題を起こすわけではない。すべてはコミュニケーションスキルの問題なのだが。

第三章でネット右翼で高学歴の宮田氏(仮名)が紹介されている。 

名古屋大学院修士課程修了で、セドリで生活費を稼いでいる。警備会社に就職したときは

”「警備業界はコンプライアンスなんて誰も考えていないブラックな業界で、でも本来は、警備業法で決まっている様々なことがある。会社に入ったばかりでなにもわからないから、あれとこれがコンプライアンス違反って経営陣に噛みついた。今思えば若気の至りだけど、当時は心から許せなくて警察と税務署に内部告発して新聞沙汰になって倒産しちゃった。警備会社はあぶれ者とかドロップアウトした人たちのセーフティーネットとして機能している業界で、社会に本音と建て前があるっていうことが当時はわからなかった。自己満足な正義感だけで暴走して、たくさんの人に迷惑をかけた」”

という正義感は子どもの頃から強かったとのこと。 

彼は39歳まで強度のコミュニケーション障害で引きこもって本ばかり読んでいたという。そんな彼が岡田斗司夫氏の著書を取り上げた読書会に参加することで普通の人としゃべれるようにまでリハビリができた。が、そこまでも問題が多かったという。

”「初めて女性と普通に会話して、世界が変わった。引きこもって誰とも話してこなかったから、対人関係とかコミュニケーション能力は成長していないわけです。読書会で女性たちに”宮田さん凄い!”って言われて、俺のことが好きなんだって勘違いが始まっちゃったわけです」

 読書会で3人の女性を好きになり、しかもその3人全員が自分のことが好きと勘違いしてしまった。普通に考えれば、同じサークルの中にいる3人の女性と同時期に相思相愛になることは常識的、確率的にありえない事態だが、宮田氏は本気でそう思ったそうだ。

「異常な妄想ですよね。僕は3人とも好きだからどれも捨てられないって、悩みに悩んだ。責任者の人に『ありえない、妄想だ』って長い時間をかけて説教されてね。すぐには理解できなくて、何十回も注意されて、やっと現実に気づいたみたいな。毎月読書会に参加して、なんだかんだで100人くらいの女性と接触して、人と多少なりともコミュニケーションがとれるようになりました」

 誰よりも本を読んでいるので、博学である。読書会で持論を展開すると、女性たちから褒められる。それはあくまでも知識や考え方への賞賛であり、恋愛感情とはまったく別の者であるが、人間関係を築いたことのない宮田氏は、そのニュアンスがわからずモテていると勘違いしてしまった。

 読書会では毎回、懇親会がある。そこでも博学を褒められ、たくさんの女性に好かれていると舞い上がった。働いていないので時間はたっぷりとある。家に帰って会話した女性たちを思いだし、エクセルで表を作って採点することにした。話しかけた、触った、笑った、褒めてくれたなど項目を作り、一人ひとりに数値を入力する。そこで高得点を叩きだしたのが前出の3人の女性だった。80点を超える数値が弾きだされたとき、彼女たちは「本当に俺のことが好きなんだ、データとして検証したので間違いない」と興奮で震えた。

「今思えば、普通に話しただけです。それで興奮してエクセルで計算までして、異常です。39歳まで本当に誰とも喋らないで生きてきたけど、百八十度意識が変わってしまった。人と話すのって面白いし、女性と話すのは超面白いって、参加した当初は一方的に喋って知識をひけらかすみたいな人間だったけど、だんだん人とはこうやって話せばいいんだって覚えたというか。女性が目の前に現れて変わっていった」“

 宮田氏(仮名)が経験したことは中学生、高校生、遅くても大学生や新社会人になったときに多くは経験する。他人とは違う文化圏で育った人たちで、価値観がまったく違う。読書会ではテーマがあり、そのテーマでつながっている人たちが集まるが、それでも考え方は違う。好きの度合いもそれぞれ違う。そして共通のものが好きだから相性がいいともかぎらない。ってことを告白したり、デートしたり、ふられたりしながら覚えていくのだけれど。

 だれとも話さなかった宮田氏(仮名)は経験できないまま中年になってしまって、こじらせて勘違いが激しくなってしまった。博覧強記は仕事をするには武器だけれども、恋愛では武器にはならない。伝える力がないなら、知識は辞書を引いた方がすんなり入ってくるからね。つまりはコミュニケーションがまともであれば相手もきちんと話をしてくれるってことに気づいて普通に話せるようになったと本人も気づいている。 

とはいえ、社会は本当に厳しい。中年の独身者が悪いわけではないがいろんな不都合がある。学歴があって、定職があって、外見が並以上で普通のコミュニケーションスキルがあっても。まじめなだけでは取っつきにくいと思われる。

“『女性は安心を求めている。告白して断られるのが嫌なの。だから、大前提としてなるべく断られなさそうな男を選ぶ。雌は強い雄を選ぶのかって議論があるけど、俺の意見はそんなことはないね。俺もモテるけど、まず断らない。断られないって安心感があるからモテる。チャラチャラしている男って柔軟だし、なんでも受け入れるし、断らない。どうしてあんなのがモテるの? って男はたくさんいるけど、それは安心感を女性に与えているから。よく観察するとモテない男には柔軟性とか、隙がない。男も女も今は精神的に弱くなっているから、隙がないとさけられちゃうよね』”

と話しているのが小川氏(仮名)で18歳以下お断りの世界で女性を相手にする仕事をしている。たとえばお店でも入りやすい店と入りにくい店があるよね。格式張った店は入れるならよさがよくわかるけど、そこまで入ってくれる人が少ない。

コミュニケーションは経験が必要で、そこからももっと経験が必要って、知らず知らずに学んでいたことがいまではどうにもならないってことが増えてきたってことなのかもしれないね。



アバター
2018/08/02 17:07
>れんげさん
コメントありがとうございます^^
神主さんだと地元の名士としてそれなりの地位もある方だけど、異性へのアプローチの経験が足りなかったのでしょうね。思い通りにならないからといって批判するのは違っているのだけど、おそらく自分のプライドを守るために相手を批判するのかなあ。きつねのすっぱいブドウの理論みたいに。失敗で学んでコミュニケーションを学べれば違った未来もあるはずなのですけどね。
地域の勉強会はいろんな立場の人が出席されるから、楽しくて仕方がないところなのですが、自分の価値判断だけを主張してしまうとむずかしいかもですね。。。
アバター
2018/08/02 17:03
>みくあさん
子どもの時に痛い思いをしながらコミュニケーションを鍛えるのと、大人になってからでは全然違いますね。大人になるとプライドもあるし、いろいろ自我が膨らんでいるからむずかしい気がします。自分をいかに客観視できるかですが、結婚していても定年後にコミュニケーションとれないお年寄りもいるから自覚も必要なのでしょうね。
宮田氏の将来のことはわからないけれど、いつかもっと隙ができてコミュニケーションが楽にとれるようになるといいですね^^
アバター
2018/08/02 16:59
>Lilyさん
文系、理系にかぎらず研究職の場合は毎日同じ人としか顔を合わせないし、興味の対象が同じものなので、いわゆるオタク文化と性向が重なるかもしれません。研究者はフィールドワークに出るタイプでなければ外側の人たちと話さなくても論文が書けますからね。
アスペルガー症候群なのかもしれないし、読書会で変わってきたと自覚があるから、コミュニケーションが苦手だっただけかもしれませんね。

4時間睡眠は体に悪いですから、一杯寝てくださいm(__)m

アバター
2018/08/02 15:13
以前、ある勉強会で知り合った方が まさに宮田氏状態でした。
その方は60代後半、ずっと神主を務めており未婚とのこと、、
話をするときに少々赤面するほかは、人当たりがよく、勉強熱心な方でした。

その勉強会は、妙齢の女性が多かったのですが、その男性は突拍子もない方法で次々にアプローチし、
断られると、その相手を批判し また次の相手に移る、、という状態でした。
当事者たちも、皆、大人の対応で 特に大事にせずにいたところ、いつしか疎遠になった、、
という感じです。

神主ということもあり、地元では顔も広く様々な活動もしていると聞いていますが・・・
今は どうされているのか、、
わたしは なるべく価値判断はしないという考えを指針にしてるのですが
なかなか興味深い方でした^^;



アバター
2018/08/02 10:21
内面もさることながら、自分の外見や肩書、年齢、立場などで相手の態度も変わりますね。
当たり前ですが、相手の出方でコミュニケーションの取り方も変わってくるように思います。
コミュニケーションの経験を積むにしても、人に恵まれないと難しいかも。
でも人に恵まれるためには、そもそもコミュニケーション能力が必要だという・・・(笑)
結局、自分が痛い思いをしながら、成長しないと何も変わらないのかも。
宮田さんはこじらせながらも、きっと気が付いたんですね。隙のある男性になれたかな・・?
アバター
2018/08/01 22:39
勉強ができすぎる、数字にめっちゃやたらに強く、記憶力が半端ないと言う方は
アスペルガーという場合があり、他人とのコミュニケーションを苦手としますね。
読んでいて、宮田氏はそうなんじゃないかと思ってしまいました。

それにしても30代後半まで人とあまり関わらずにきたということ事態が
可能なんだと驚きました。話ても通じないので、宮田氏の周囲から
人がいなっくなっちゃったのかもしれませんね。

睡眠4時間なので、書きながら寝落ちしそうです。おやすみなさい。
素敵な夢を見られますように






Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.