Nicotto Town



サは神様のサ

「古事記異聞ーオロチの郷、奥出雲ー」 高田崇史著 講談社ノベルス

”降らずとも竹植る日は簑と笠

 といいう松尾芭蕉が美濃国大垣で詠んだ句がある。「たとえ雨が降っていなくても(五月十三日に)竹を植える際には、簑笠を身に着けて作業をするのが望ましい」というものだ。竹は、陰暦五月十三日に植えると、良く育つといわれていて、その日が「竹植る日」と呼ばれたらしい。”

竹って何だろう? 簑笠って何だろう?って話だ。

「簑笠を着て人の家に入ってはならない」と言われているが、たいていは「現代でもレインコートを着たまま人の家には入らないでしょう。濡れたものは玄関先で脱いでから上がるのが礼儀ですよ」と説明される。

だけど、そんな話ではないのだ。

簑笠を着たモノが尋ねてくるとその家に災いが起こる。これは素戔嗚尊が神遂(かんやらい)されて簑笠姿で旅したことを表していて、蘇民将来の話へとつながっていく。彼がやってこなければ平和な村だったのに親切だったかそうじゃないかで蘇民将来以外の全員が病でいなくなってしまうのだ。

”竹が、芭蕉の美学にも風雅にも無関係と推察されるのも(これも水野の受け売りだけど)一般的にめでたいとされる「松竹梅」のどれもが実は不吉で、特に竹は松と並んで非常に忌まれていたからだ。
 たとえば、
「竹で家の周りを囲むと家が滅びる」
「屋敷内に竹を植えると誰かが早死にする」
『北側に竹藪を造ると貧乏になる」
「嘘を吐くと腹に竹が生える」
「床下に生えた筍を食べると生まれた子が泥棒になる」
「筍を指差すと指が腐る」
 というような言い伝えはたくさん残っているし、ある書物によれば、
「落語の世界では、与太郎がアホの代名詞として、しばしば使われてきたように、下女・端下女・婢の代表的な名前が『お竹』(あるいはお松)であった」
 とまで書かれてしまっている。
 更に『和訓栞』には、
「禁中ならびに堂上には、門松を飾ることなし」
 と、はっきり書かれている。つまり、正月にそのようなモノを飾るのは、賤しい庶民だけーいわるゆ「賤が門松」なんだと。”

素戔嗚尊が簑笠を着てやってきて災いを起こす。だから、簑笠=神となり、さりゅうの「さ」が神様とか大怨霊を差す言葉になっていったと思われる。記紀の時代からずっと簑笠を着けたものは穢れたもので、家に入れるということは権力に逆らったと見なされていた。鬼に接触したら鬼と見なす=鬼は伝染する。だ。

だから、人々は神を恐れ、さ・おとめを差し出して神の怒りを鎮めようとした。あばれてもらっては困るのだから。


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2018/10/23 14:17
>takeruさん
うちも飾ったことがないです。というか、実家の家系は大昔から鬼の家系と言われているところなので^^
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2018/10/22 16:23
門松は、飾らない方がいいのかな。ちなみに家は、飾りません。
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2018/10/20 16:34
>三日月さん
神様の時代って何世紀だろうってことを民俗学や歴史学では真剣に議論しているんです。
ことわざとか慣用句もきちんと踏まえてとかね。
落語は大昔の故事を踏まえてが多いので、知識があるともっと面白いですね^^
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2018/10/20 05:26
竹にそんな話があったとは。
僕の少ない経験からだと現代ではあまり知られてないことのように思えます。
お竹さんがでてくる落語を聞いたことがなくて調べてみると、後家馬子、悋気の独楽、心眼とでてきました。独楽ではお竹以外にもお松、お清とバリエーションあるみたいですが。気がむいた時にこの話も踏まえて聞いてみます(*´ω`)

それにしても、こんな昔から竹って日本に存在したんですな・・
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2018/10/18 15:34
>Lilyさん
松竹梅が不吉っていうのは実は権力者がプロパガンダで使った騙りなのです。
権力者にとって、松、竹、梅の勢力と民衆が結びついて自分たちの敵対勢力になることが一番怖いので、彼らは鬼で鬼と接触したら鬼と見なすという強権で敵対勢力を民衆から引きはがしたんです。
桃太郎の物語は日本で広く読まれている物語で、子どもの時から鬼は悪いモノって言い含めているのですね。桃太郎で鬼はどんな悪いことをしたかははっきり書かれておらず、いきなり攻められて宝物を奪われてもいい存在だったのか疑問なのに。

門松は松・竹・梅を縛って外に飾るので、私たちはこんなに粗末に扱っていますよってアピールなのです。
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2018/10/17 20:00
「松竹梅」が不吉なものだとは知りませんでした。
数年前に観賞用の小さな竹が流行ったようなのですが、
これを買って家の中に飾った方は、きっと私のように物知らずだったのでしょうね。

kiriさんのブログはいつも勉強になります。教えて下さってありがとうございました。




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