Nicotto Town


ヤツフサの妄想


異世界で本当の魔法使いになる 5

~ そして釈放 ~

尋問管は続けて言う。

「尋問はあと少しで終わらせるから、もう少し我慢して聞いてほしい。」

「はい、すみません。」

「突然殊勝な態度だね。えっ、おほん。 それでは幾つかの質問を続けさせて頂く。 最初の尋問管の資料によると、奴隷となって地獄の様な修行をさせられたとあるのだが、これは本当かね?」

「それに近いです。 入った会社の社員の扱いが酷かったのですが、転職もままならずに10年過ごしました。 それから心の病になって退職して、新しい会社に入っても心の病のせいで長続きせず、家で一人過ごしていました。」

「今はその心の病は良くなったのか?」

「わかりませんが、以前よりはとても楽に過ごせるようになりました。」


今までの自分の八つ当たりから、なんだか負い目が出て来た感じで素直に答える事した。

「それは良かった。 もう一つ質問なんだが、これだけの魔法の適性を君は知らなかったの様に、以前の尋問管にこたえていると書かれている。 こちらでは5歳になる頃には魔法の適性を測るのだが、君は30過ぎても彼女が居ないと魔法使いになると言っていたそうだね、これは本当なのかい?」

「この世界はわかりませんが、僕の住んでいた世界には魔法なんてモノはありませんでしたし、30過ぎても彼女が居ないと魔法使いと呼ばれるのは、世間の嫌味です。」

「すると君は異世界からここに来たことになるんだが、だからこの世界の常識がわからず自暴自棄になっていた・・・ そう言う結論で良いのかね?」

「はい。 今は反省してます。」

「うむ。 それでは最後の質問だ。 君はどうやってこの世界に来たのか経緯を聞かせて頂きたい。」

これが一番困る質問なんだよな、どうやら剣と魔法の世界みたいだし、PCとか言っても通じないだろう。
ましてやそれでゲームなんてどうやって説明したらいいんだ?

「聞かれたくない質問だったか?」

「いいえ、どう説明していい物かと・・・」

「なるほど、異世界の魔法の無い文化からこのに来た。 確かに答え辛いだろう。 だが出来るだけ異世界の事も含めて、私たちがわかるように説明してくれないか? これでも役人だからね、これだけの大事件となると、領主様にも報告しなくてはならない。 答えて頂だけねば、ここから出す事もままならない。 とは言え魔法適正は賢者クラス、ここに何時までも居て頂くのは忍びない。 出来るだけ、いや直ぐにでも身分証を発行して、少しでも魔法の技を磨き世の為に使って欲しいのだ。 まぁ、個人的な意見で話あるのだけどもな。」

この尋問管、出来る人だな。 ここは何とかわかりやすいように・・・ と言ってもそのままを噛み砕くだけだが、出来るだけ心象よく対応しなくちゃ、心苦しいってもんだよね。


「まず、僕の住んでいた世界には魔法が無いと言いましたよね? でも魔法がない代わりに科学と言うものが発展している世界だったんです。 PCって言う人か考えるよりも早く計算のできる道具や、それを使ったインターネットと言う世界中に情報を一瞬で共有できるものや、個人通話が世界中で出来ていつも持ち歩ける小型のスマートフォンと言うのもあります。」

「な、なんと! 魔法よりも凄いじゃないか! そんな世界から科学の力でここに来たと?」

「いいえ、そのPCって物とインターネットをつないで、無料で遊べるゲームをしようとしたら、知らない間にここに来ていたのです。 いきなりだったし、目が悪いのを矯正してくれる眼鏡も取られちゃうしで、目も見辛い中での生活で・・・」

「後半はわかる、それで"むりょうのげーむ"と言うのは何か? 賭博の様なものか?」

「いいえ、PCには綺麗な絵を出せる装置が備わって居るんです。 そして人よりも早く計算し、綺麗な絵を描きながら、自分が主人公になった物語を作っていく、なんて言ったらいいのかな? 英雄になった人の様に自分が体験する事が出来る遊びです。 以前はとても高い値段で売られていたんですけれど、そう言った業界も競争が激しくなり、ゲームの途中で強くなりたいアイテムをお金を払って買ったり、企業の広告を入れる事で広告費からゲーム代を稼いで、無料で配布されている物も沢山あるんです。 まぁ、一種の英雄物語の本の主人公になれる本が無料で手に入るような感じでしょうか?」

尋問管が渋い顔をして周りの物と話し合う。 隠す気はないようだ。

「これをどう領主に伝えればよいのか・・・ 領主の館に招いたところで理解して頂けるのすらわからん。
それにこの方は賢者クラスの魔法適正。 国で保護して魔法を学んでいただければ、魔法大臣にすらなれるレベルだ。 絶対他の国にとられる訳にいかん。 それこそ国同士のいさかいの原因にもなろう。」

「えーっと、そんなに凄い事なんですか? 僕はただのニートですよ? 無職のダメ人間ですよ?」

「すまぬ、先ほど最後の質問と言ったが、もう一つだけ聞かせてほしいことが有る。 その"げーむ"とやらで遊べば、誰でもこちらの世界に自由に行き来できるものなのか?」

「そんな話は聞いたことありません。 それこそ物語の中だけの話で実際に起こる事を知って居たら、僕だってこんなにビックリしないです。」

尋問管は「うーん」とうなると「それもそうだな」と自己解決したようだ。




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