1月自作 駒/リンク 「大陸一の技師」2/2
- カテゴリ:自作小説
- 2019/01/27 14:31:49
「うん。それで最後にここを頼ってくれたわけだ。ありがとうな」
俺は卓につっぷす赤毛男の肩をばしばし叩いた。
カーリンは、めちゃかわいくて真面目ないい子だ。
カーリンは、めちゃかわいくて真面目ないい子だ。
あのこわい蛇の王妃様ですら、えらくあの子を気に入っている。「わらわの養女にしたい」って、この前言ってたぐらいである。
でも。たとえカーリンが、超できの悪い、意地悪な娘でも。赤毛男はたぶん、同じように必死にがんばることだろう。 父親とは、そういうもんだ。
「はじめに、ここに駆け込めばよかったかもだけど。でもあんたにはもう、世話になりまくってて、迷惑かけまくりだし。四大神殿の宝物は、大陸的に有名だから……」
「んもう、水くさいなぁ。えっと、死者の声を降ろすってやつね。俺に任せてくれれば、同じもの作れるぜ」
「同じもの……」
「あんたの折れた剣。あれはさ、精霊石の中にある人の御霊が入ってるんだけど、喋る機能もしっかりある。あの機能を、奥さんが入ってる目玉石にちょこちょこっとつければいいんだよ」
いやほんとは初めから、そういう機能の石にこいつの奥さんを入れられれば問題はなかったんだ。
でも奥さんの御霊が天から帰ってきたとき、手持ちの石にそこまでのレベルのものはなかったから、無声の石で妥協するしかなかった。
技師にとって素材の枯渇は死活問題だ。最近つとに在庫切れが慢性化してて、工房的には大変よろしくない状況だったりする。ここ、早急に改善しないといけないところだよな。
「あんた、大陸を半年めぐって、最後に行った風の神殿の大神官から、おみやげもらってきてるだろ」
「ああ……ええと……宝物狙いで住み込みでしばらく、食堂の手伝いをしたんだ。でも宝物は貸せないからって、たしかに、巡礼者を守るお守りというのをいただいた。何の変哲もない、金属のお札だけど」
「それ、俺に預けなよ。もらったのって、大神官の護符だろ? それって聖所にある特殊な金属岩から作られるんだぜ。技師的には、かなり貴重な素材なんだよね」
「え……!?」
「んもう、水くさいなぁ。えっと、死者の声を降ろすってやつね。俺に任せてくれれば、同じもの作れるぜ」
「同じもの……」
「あんたの折れた剣。あれはさ、精霊石の中にある人の御霊が入ってるんだけど、喋る機能もしっかりある。あの機能を、奥さんが入ってる目玉石にちょこちょこっとつければいいんだよ」
いやほんとは初めから、そういう機能の石にこいつの奥さんを入れられれば問題はなかったんだ。
でも奥さんの御霊が天から帰ってきたとき、手持ちの石にそこまでのレベルのものはなかったから、無声の石で妥協するしかなかった。
技師にとって素材の枯渇は死活問題だ。最近つとに在庫切れが慢性化してて、工房的には大変よろしくない状況だったりする。ここ、早急に改善しないといけないところだよな。
「あんた、大陸を半年めぐって、最後に行った風の神殿の大神官から、おみやげもらってきてるだろ」
「ああ……ええと……宝物狙いで住み込みでしばらく、食堂の手伝いをしたんだ。でも宝物は貸せないからって、たしかに、巡礼者を守るお守りというのをいただいた。何の変哲もない、金属のお札だけど」
「それ、俺に預けなよ。もらったのって、大神官の護符だろ? それって聖所にある特殊な金属岩から作られるんだぜ。技師的には、かなり貴重な素材なんだよね」
「え……!?」
俺は赤毛男のくたびれたリュックをごそごそ漁って、がっしりとした板状のお札を取り出した。
「へへ、これこれ。やっぱそうだ、メタニカクロニウム。こいつは情報集積とか半導体乗せるのに最適で、膜のように超薄くしても、その機能を発揮できるっていうやつでさ。義眼の機能膜って普通は有機体を培養させて作るんだけど、これは唯一例外で、膜として使える金属なんだよね」
うん。だからつまりさ。
俺はにっこり、赤毛男に微笑んでやった。
俺はにっこり、赤毛男に微笑んでやった。
「おばちゃん代理。あんたの半年は、無駄じゃなかったんだよ。あんたはしっかり、望みをかなえるために必要な材料を、手に入れてきたんだ」
「ピピ……さま……」
「ほんとだよ。これってすんごく珍しくて、手に入れるの苦労するんだからー」
「ピピ……さま……」
「ほんとだよ。これってすんごく珍しくて、手に入れるの苦労するんだからー」
へへへ、これ一枚でどんだけ、魔導からくり時計作れるかな。うへへ……
あっと、今の本音、ないしょないしょ。
ぼろぼろ涙こぼして感動してるこいつには、秘密にしとかないとね。
さあ、カーリンがこっちに来たらぬいぐるみを借りて。あの青い目にちょちょっと、細工を施してやろう。
材料さえあれば、すぐにできるさ。
材料さえあればね。神獣の霊核だってちょちょいと造れるのさ。
だって俺、大陸一の技師だもの。
猫目さんてば、素材探すために星船に乗って、別の星まで行ってくれてるけど。
いつ帰ってくるかな。早く帰ってくるといいな。
カーリンが、大人になるまでに……。
あっと、今の本音、ないしょないしょ。
ぼろぼろ涙こぼして感動してるこいつには、秘密にしとかないとね。
さあ、カーリンがこっちに来たらぬいぐるみを借りて。あの青い目にちょちょっと、細工を施してやろう。
材料さえあれば、すぐにできるさ。
材料さえあればね。神獣の霊核だってちょちょいと造れるのさ。
だって俺、大陸一の技師だもの。
猫目さんてば、素材探すために星船に乗って、別の星まで行ってくれてるけど。
いつ帰ってくるかな。早く帰ってくるといいな。
カーリンが、大人になるまでに……。
「パパ!!」
あ。ワカタケちゃんに連れられて、噂の娘さん登場だ。
「あ……カーリン……えっと、背が、伸びた?」
「うん! あたし大きくなったでしょ? ああパパ、会いたかったわ……!!」
「えっとあの、うわ!」
「パパったら絵葉書二回しかくれなくて、ひどい」
「ご、ごめ……」
「ねえ、蛇の王子さまと王女さまの話、聞いて。ほんとあの子たち、元気すぎて大変なんだから」
「あ、あの」
「わかってる。ピピさまが言ってたのよ。パパは絶対、ママの声を聞かせてくれる材料を持って帰るからって。何も心配いらないって。そうでしょ? 持って帰ってきたんでしょ?」
「う、う、うん、なんとか……」
「わあ! さすがパパね!」
「うん! あたし大きくなったでしょ? ああパパ、会いたかったわ……!!」
「えっとあの、うわ!」
「パパったら絵葉書二回しかくれなくて、ひどい」
「ご、ごめ……」
「ねえ、蛇の王子さまと王女さまの話、聞いて。ほんとあの子たち、元気すぎて大変なんだから」
「あ、あの」
「わかってる。ピピさまが言ってたのよ。パパは絶対、ママの声を聞かせてくれる材料を持って帰るからって。何も心配いらないって。そうでしょ? 持って帰ってきたんでしょ?」
「う、う、うん、なんとか……」
「わあ! さすがパパね!」
あわあわしてる赤毛男に、金髪の美少女がにこにこ迫ってる。
ほほえましい光景にうなずきながら、ごつい護符を抱えた俺はそうっと食堂を出た。
「えへ。えへ。お仕事済ませたら何作ろうかなー。えへへ。奥さんと俺が一緒に飛び出てくるラブラブ時計とか? えへへへ……」
「ピピさん」
ほほえましい光景にうなずきながら、ごつい護符を抱えた俺はそうっと食堂を出た。
「えへ。えへ。お仕事済ませたら何作ろうかなー。えへへ。奥さんと俺が一緒に飛び出てくるラブラブ時計とか? えへへへ……」
「ピピさん」
あ、奥さん。ねえ見てよー、すごい金属、もらっちゃったよ。
「あらそれって。おばちゃん代理さんのおみやげですか?」
「うんうん、メタニカクロニ……」
「まあ、すてき」
「あらそれって。おばちゃん代理さんのおみやげですか?」
「うんうん、メタニカクロニ……」
「まあ、すてき」
あ。ちょ。奥さん、ま……
「これでカーリンさんのぬいぐるみの目に細工をするのですね。でもそれに使ってもこれ、だいぶ余りますよね」
奥さん、ちょっと、それ俺がもらったのー。取り上げないでー。うう、手を伸ばしても届かない―。
あ、やばい。奥さんの目、キラキラきらめいてる。やばい。
やばい。
やば……
あ、やばい。奥さんの目、キラキラきらめいてる。やばい。
やばい。
やば……
「ピピさん、余った分、くださいな」
ひ。
「義眼も魔導器も作り放題ですね! ああ、何を作ろうかしら。こんなにたくさん材料が。うふふ、すてきです」
お、奥さんあの。それ、俺が魔法時計をですね、造……
「久々に、|愛打《アイダ》の打銘を打てる逸品を作ることができます。ありがとう、ピピさん」
あうあ……その板、ぎっちり抱きしめて言うですか、奥さん。しかもその、無邪気でとてつもなく美しい笑顔で……うう、も、も、も……
「もってけ泥棒! 板の一枚や二枚、ちょこざいな! 俺とおんなじ、一級技能導師の奥さんのお望みとあらば、さらに十枚二十枚、取り揃えてみせやしょう!」
「まあピピさんたら。けけんって、手を突き出して。カッコいいですよ」
「まあピピさんたら。けけんって、手を突き出して。カッコいいですよ」
だ、だめだ勝てない……無理です。
俺、大陸一の技師だけど、奥さんだけは永遠に越えられません。
人間に戻っても、背丈足りないよ。あの長い腕、上にあげられたらきっと届かない――
俺、大陸一の技師だけど、奥さんだけは永遠に越えられません。
人間に戻っても、背丈足りないよ。あの長い腕、上にあげられたらきっと届かない――
――「それじゃあ、余ったの半分こしましょうね」
「……!!!!」
「……!!!!」
うわ。お、お、お、俺溶けた。今脳みそ溶けた。
もう。奥さんったら……なにその、神々しい女神のような微笑み。
輝いてるよ。ほんとに、きらきらきれいだよ。わあ、最高……!
もう。奥さんったら……なにその、神々しい女神のような微笑み。
輝いてるよ。ほんとに、きらきらきれいだよ。わあ、最高……!
「アイダさん……! あのね、俺ね、えっとね、時計つくる! それからね、かわいい時計とね、つよい時計とね……すんごい時計つくる!」
「はいはい。ピピさんは、全部時計に使うんですね」
「うん! そしてね、全部君にあげるから!」
「あら、それは楽しみです。では私も、できたものをあなたに差し上げましょう」
「はいはい。ピピさんは、全部時計に使うんですね」
「うん! そしてね、全部君にあげるから!」
「あら、それは楽しみです。では私も、できたものをあなたに差し上げましょう」
作りっこですねと、奥さんが笑う。
ああ、奥さん何作ってくれるんだろう。楽しみだな。すごく楽しみだな。
えへへと笑って、俺は奥さんに飛びついた。
ああ、奥さん何作ってくれるんだろう。楽しみだな。すごく楽しみだな。
えへへと笑って、俺は奥さんに飛びついた。
「ねえでもその前に、ニンジンクッキー焼いてー!」
「はいはい、わかりました。たくさん焼きましょうね」
「はいはい、わかりました。たくさん焼きましょうね」
今日も俺はとても幸せだ。だから赤毛男とその娘も、幸せにしてやりたい。
できればもっと多くの人たちのことも、幸せにしたいと思ってる。
俺みたいなのに、どこまでできるか、わかんないけど。俺は今日も、何かを作る。
はるかな未来の自分に言われた、その通りに。これからも、幾久しく。
作って、作って、作りまくるんだ。
だれかの、笑顔のために。
「大陸一の技師」――了――
ピピ様って本当に可愛いわ〜^^
すっごい素材を手に入れて舞い上がってる感じがよく出てますね。
すごい素材 + 超一流の技師 = なんでもできちゃう
そこへ、誰かの幸せのため、誰かの笑顔のために作り続けるという
使命が加わったら、世の中幸せになるしかありませんね^^
誰もがピピさんのように使命に生きられたら、どんなに良いでしょう。
楽しいお話をありがとうございます^^
ほのぼの……^^
本筋は次回ですね
おばちゃん代理一家も幸せに向かいつつある様子ですね