月下の幻視者-その5
- カテゴリ:日記
- 2009/10/08 01:08:04
少し過ぎてしまいましたが10月6日は朱雀の好きな
日本の幻想小説家・久生十蘭(ひさおじゅうらん)の
命日でした。
十蘭は『鈴木主水』で直木賞を受賞していますが
ルートヴィヒ二世の死に拘ったり、上田秋成の
『雨月物語』をもじった『無月物語』という小説を
書いたりと、かなりルナティックな人です。(笑)
その十蘭の小説の中に『月光と硫酸』という短編小説が
あります。
面白いのであらすじを紹介しますね。
パリの日本人留学生・十蘭が猛勉強の所為で神経衰弱に
かかり、コートダジュールに静養に行きます。
医者の「庭の蟻でも見てのんびりしていなさい」と言う
忠告にそのまま従い、一日中庭の蟻を見続け、仕舞には
蟻を苛めるのに精を出すようになります。
そんなある日、隣の別荘からオートバイのもの凄い排気音が
聞こえてきて、いい加減怒りが込み上げた頃、排気音に
混じり銃声が聞こえたような気がしました。
確かめるでもなく気になったまま一夜を過ごし、翌日、
いつものように蟻を苛めようと庭に出ると、どうした事か
蟻が一匹もいません。
その夜、見事な月が出ていてそれに惹かれた十蘭が庭に
出ると、石垣のそばで奇妙なものを見つけます。
そこには青白い輝きを放つ一坪ほどの月が落ちていました。
大急ぎで母屋の老婆に知らせると、町中の人が集まってきます。
皆で感嘆の声を上げながら見ていると、知ったかぶりの先生が
これは月ではなく濃硫酸が零れたのだといいます。
すると村人が、月なら話が解るが濃硫酸がこんな所に落ちて
いる訳がないと反論します。
先生曰く、隣の別荘で捨てた硫酸がこちらに染み出して
きたのだ」と返します。
村人も負けじと、死骸を溶かす訳でもないのになぜ硫酸を
隣の別荘で使うんだ!とやり返します。
それを聞いていた警部が「えっ」と叫んで飛び上がり・・・
翌日の新聞に隣の別荘の持ち主が、売り別荘の広告を出しては
手続きのあと買主を庭で銃殺し、湯船の濃硫酸で死体を
溶かしていたという記事が載ります。
この小説はテンポがよく、家主の老婆と十蘭の会話がとても
面白いんですね。
月が落ちていると報告した後「あなたが私の所へ来て、まともな
事を言ったのはこれが初めてだ」と言うくだりは笑えます。
興味のある人は読んでみて下さいね。
で、十蘭を真似たわけではないですが、月と水銀を題材にして
書いた詩があるのでそれをUP!
ちなみにタイトルにある「ヘルメス」は某有名ブランドではなく
神秘思想、錬金術の文脈に登場する神人であり、伝説的な
錬金術師であるヘルメス・トリスメギストスに帰せられた教説に
発する秘教的思想伝統のことです。(笑)
ヘルメスの月
音もなく
無窮の果ては闇に落ち
虚空の下で
貪婪(どんらん)な渇きは癒えず
玲瓏たる
銀の雫に月は盈ち
秤の上で
静謐な焔(ほむら)を煽る
魂(たま)が振れ
産霊(むすひ)は解(ほど)け 月を欠き
器を返し
潺湲(せんかん)と 滴る水銀
海(あま)は凪ぎ
底方(そこい)に宿るあらたまは
昇華を成して
悠然と 朱に染め上がる
――瓏銀の水面に惑うエトランゼ
バーミリオンの月はかくれて――
【産霊】天地・万物を生み、または成長させる霊妙な力。
【潺湲】水が清くさらさらと流れる様。またその音を表す語。涙がしきりに流れる様。
【底方】至りきわまるところ。きわめて深い底。奥底。はて。
【瓏銀】あざやかな銀色。明るい銀色。
【エトランゼ】その土地に溶け込もうとしてもできない疎外された感じ。異邦人。
【バーミリオン】顔料名。硫化水銀を成分とする朱色の顔料。絵の具の色。朱色。

























おおっ、リラダンの「未来のイブ」いいですね~♪
勿論大好きですよ~。(笑)
東京創元社から発行されたリラダン全集は今でも朱雀の宝物です。
では椋さんも、ユイスマンスやバタイユ、ラディゲ、ロートレアモン、
シュペルヴィエルにラフォルグなんか読み漁ったクチですか?(笑)
「月光と硫酸」…面白い話ですねww一回読んでみましょうかね…。
私のお勧めは…知っているかもしれませんが…『未來のイヴ』ですね♪
有名なお話で、「ヴィエ・ド・リラダン」…だっけかな…読んだの随分前だからなあ…。
「スカイ・クロラ」の作者やアーティストのアリプロジェクトなどが読んでいて、
それを元にした歌もあります。一度聞いてみてはいかがでしょうか??
URL↓
http://www.youtube.com/watch?v=Ry93IFdvBUg
それではノシ
わ~まるるさん!もしかして夢野久作好きですか~?
久生十蘭・夢野久作・小栗虫太郎、この三人は朱雀の
好きな幻想小説家なんです~♪
ドグラマグラをこんなところで聞けるとは!(笑)
ちょっと興奮しましたよ。
眠れなくなったらどうしよう~。(爆)