お父さん、ありがとう
- カテゴリ:日記
- 2019/09/12 19:49:25
病院に早く来い、というメールが携帯に届いたのは、10日の夜でした。
仕事中で、しかも2人体制だったのですが、休みだった上司に電話して早退の許可をもらい、急いで近くの駅前に行きました。
客待ちのタクシーに乗り込み、市民病院へ向かう間、なんだかドラマの1シーンみたいだな…と思いながら、車に揺られておりました。
病院入り口の警備員に事情を話して、病室へ向かいました。
母と妹が、父のそばにいました。まだ息はしていました。
でも血圧が上75、下55にまで下がっており、本当に危険な状態でした。
母が、父が末期の苦しみを訴えだしたら、鎮静を打ってもらうから、と私に告げました。私に異論はありませんでした。
苦痛で息絶えるより、眠りながら逝ってもらう方がいいに決まってます。
しかし、家族が決意しても、病院側はなかなか鎮静を打たないのですね。
父はもう意思表示ができないので、力の入らない両手で自分の両脇を上下になでて、かすれた声で苦痛を訴えていました。
そのたびに母がナースコールを押しましたが、看護師は鎮痛剤とモルヒネの量を増やすだけです。しびれを切らした母が、穏やかにキレながら「こんなに苦しんでいるんだから、眠らせる薬を早く打ってください」と言いました。
長い夜でした。いつ父の息が止まるんだろうと、時計や心拍計を見ながら考えていました。
時々父の手や足をさすりながら、母や妹とテレビを眺め、番組の感想を言い合ったりして、不思議と穏やかな時間でした。
そのときはやたらと喉が渇いて、水ばかり飲んでいました。
今思えば、まったく水を口にできなかった父の思いが乗り移っていたのかもしれません。
母と妹が席を外したとき、私は父の手を取って言いました。
「お父さん、ありがとう。お父さんの子供で、よかった」
泣かないで言えました。自分でも驚くくらい、優しく自然に言えました。
父の手から、うれしい感じが伝わってきました。私もいとおしい気持ちでした。
鎮静剤がモルヒネの上にセットされたのは、翌日11頃でした。
その頃には、血圧は上下とも10ずつ下がっていて、父の苦痛の訴えも頻発していました。
今まで流量2.5だったのですが、現時点で7.5になっていました。
それでも緩和できない苦痛とは、どれほどつらいのでしょう。
鎮静剤が投与されると、父の呼吸は少しずつ回数が減っていきました。
私たちは、「大丈夫だよ」「もう十分頑張ったから、楽になっていいよ」「みんないるからね」と声を掛け続けました。
ゴロゴロと痰がからんだ息が続いたあと、いびきのような呼吸をして、やがて突然止まりました。
心電図の波形が棒線になり、私はすぐにナースコールを押しました。
父をよく見てくれた看護師と、いまいち感受性の薄い主治医が駆けつけました。
主治医が時計を見て臨終を告げたとき、心電図が急に動きました。
「お父さん、もう少し頑張るか?」涙を流した母と妹が、笑って父に呼びかけました。2秒ほどで、また心電図が棒線になりました。
「行っちゃったね」
「お父さん、ありがとう」
「よく頑張ったね」
私たちは、動かなくなった父に声を掛けました。看護師さんも涙ぐんで、「よく頑張りましたね」と言いました。母や妹は目を真っ赤にして泣いていましたが、私はぐっとこらえて泣かないでいました。
看護師さんの涙で、つられて泣きそうになりましたが、ここで泣いたら、これからいろいろやることに立ち向かえないので、こらえました。
霊安室で主治医と看護師長、担当看護師(さっき泣いてくれた女性看護師です)とともに、父の遺体に焼香しました。
しかしこんな時に、主治医はスマホをマナーモードにしていなかったのです。
しかも出て応対する始末(自分のシフトのことでした)
看護師長に「マナー、マナー」と小声で注意されていました。もっと精進せいよ。
死亡診断書を渡され、葬儀屋が迎えに来て、遺体を斎場に移動させました。
担当の人は中年を過ぎた男性でした。とても優しくて、面白いところもあって、私たちの気もほぐれました。
葬儀屋さんに会ったのは初めてでしたが、真心で接してくれて、こういう職業に就きたいなと真剣に考えました。
しかし、私は接客と車の運転が苦手なので、やっぱ無理か…と断念。
斎場の霊安室の父は、亡くなった時は開きっぱなしだった顎が、葬儀屋がタオルで支えて閉じさせてくれていました。
今すぐ起きそうな、穏やかな顔でした。眉間にしわを寄せて苦しんでいた面影はありませんでした。
それからいろいろ葬儀の段取りなど話し合って、お寺にも行って手続きをし、日が暮れてようやく家に帰りました。
犬たちが腹を減らして待っていました。りんごちゃんは角膜炎をおこしているので、目が真っ赤。くり子はトイレを外にするようにしているので、ずっとおしっこをがまんしていて、こんな事態とはいえ、申し訳なかったです。
父が大変かわいがっていたりんごちゃんは、父のことを知らないためか、ごはんを元気に食べていました。父の代わりに長生きしてほしいです。
12日の今日は、1日に見舞いに来てくれた叔母夫婦と、父方の伯母、私たち家族とで湯灌をしました。
父はとても気持ちよさそうでした。
葬儀屋さんの心遣いが行き届いているので、明るく楽しい儀式になりました。
斎場の仕事…やっぱり憧れます。
激務だそうですが、こんな風に、誰かを元気づけられる仕事をやってみたいです。
父が死んで悲しいはずなのに、まともに涙が出てきません。
心が考えないようにストップをかけているのかもしれません。名義変更手続きなど、やることがたくさんあるから。
しっかりしないと。母と妹は、そのへん少し頼りないので。
頑張ります。
返信遅れてすみません。
父ももっと生きたかっただろうに、思うようにいかなくて悔しかったと思います。
でも、寝たきりのまま長い時間を過ごすより、短期間で済んだと考えるなら、まだ救いはあったのかな…。
天国では、先に逝った家族と仲良く過ごしていてほしいです。
昨日仕事に戻りましたが、何かやっていると、つらいことを忘れていられますね。
母も、今は父の交流のあった訪問客の相手で忙しいですが、終わった後がちょっと心配だったりします。
まったく味方がいないわけではないですが、過去、町内会の何人かに嫌な目に遭わされたことがあったので、それ以来なじめずにいるんです。
最悪、本当に引っ越しを考えております。
葬儀社に転職も考えましたが、求人を見たら、できそうなのがなくて^^;
(チラシ配りの互助会普及バイトとかです)
それに、まだ今の職場でも私を必要としてくれているようなので、もう少し現状頑張ってみるつもりです。
うちのわんこたちは、気づいているのかいないのか、毎日無邪気です。
落ち込んでぐったりされるより、私も助かりますし、父も安心していると思います。
あとは各種手続きが完了したら、ひとまず安心です。
でも父が契約している何やかやが煩雑でして、ちょっと厄介です。ひとつずつ片付けなくては。
お悔やみのお言葉、ありがとうございます。
早すぎます…
心よりご冥福をお祈りします
父上はもう痛くないし苦しくないんですよね…
家族皆に見守られながら生を全うできるなんて、こんなしあわせはないと思いますよ
自分のために皆が腐心してくれてることは分かっていたでしょうし、苦しい時に愛する家族が側にいてくれる心強さは何ものにも代え難いものですよ
蒼雪さんやご家族も、一生懸命看護して、心配して、お疲れになったでしょう…
しばらくはバタバタと事務的なことが多くあって忙しいと思いますが、時々甘いものを口にしながら、無理をし過ぎないようにしてくださいね
少し忙しくしている方が、気持ちは楽かもしれません
母上はそんなに町内会やご近所さんとの交流を気になさるとは…過去に何かあったのかもしれませんね
それほど拒否反応があるなら、どこかにお引っ越しするのも手だと思いますよ
思い出のあるおうちを離れるのは寂しいと思いますが…
葬儀社のお仕事は忙しそうですが、裏方の仕事でもあるし、そんなにコミュ力はいらないかもしれませんよ
それもこれも、ゆっくり考えればいいと思いますよ
(*´ω`*)
しばらく入院してておうちにいなかったから、りんごちゃんやくり子ちゃんは父上がいないことにまだ気づいてないのが、なんとも哀れなようで、無垢なようで…
本当に、父上の分まで元気に長生きしてもらいたいですね
私は蒼雪さんにも元気で楽しく生きてほしいです
きっと父上は見守ってくれていますよ
実のところ、本当にこちらの声が聞こえているのかなと疑ってもいたのですが、きっと伝わっていたと信じています。
脱水のためか、父の右目尻にしか涙が浮かばなかったのですが、わずかな涙が悔しさや悲しさを表しているようで、見ていてつらかったです。
主治医はですね…もう少し人の痛みに寄り添ってほしかったです。
経験が浅く若いせいもあるでしょうが、医師として反省してもらいたいです。
周りを頼るにも、なかなか^^;
仕事の方でも、長く休んで迷惑かけてますし、人を頼るのも難しいですね。
でも、こうして皆さんに気持ちを知ってもらえるだけでほっとします。
お悔やみのお言葉、ありがとうございます。
このような苦しい病にかかる家族と介護する家族にとって、一日一日がとても長く、それでいてあっという間でした。
じゅらさんのおっしゃる通り、父の死に立ち会えたことは幸運だったと思います。
私が席を外している間に逝ってしまわないかと、一瞬が心配でした。
13日は一人になる時間があったので、その時に涙が出ました。
少し泣けたので、今日は気持ちが落ち着いています。ちゃんと見送ってあげようと思います。
そして目の前のことを、一個ずつ、ですね^^
お悔やみのお言葉、ありがとうございます。
お父様のご冥福を心からお祈りいたします。ご愁傷様でした。
ご家族でお父様の最後を見守ることができ、また蒼雪さんがお父様に気持ちを伝える時間があってよかったです。きっとお父様に伝わったと思います。
主治医の先生には他人の自分ですら、不信と不満を感じずにはいられませんが、
(もちろんよい看護師さんもいらっしゃったのでしょうが、でも…)
せめて葬儀の方がよい方々で、お式も良いものになったみたいでほっとしました。
しばらくは手続きなどで落ち着かない日々が続かれるようですが、どうか、ご無理なさらず。
一人で頑張りすぎないで、周りを頼ってくださいね。
抱え込みすぎて蒼雪さんが倒れてしまわないか心配です。
くれぐれもご自愛くださいね。
ご冥福 こころより お祈り申し上げます。
蒼雪さまも ご家族の皆さまもご愁傷様です。そして
おつかれさまでした。。。
家族を見送るって 筆舌に尽くせぬほど悲しく辛いことですけど
でも きちんと「ありがとう」を伝え お見送りできたってことは
幸せなことだってわたしは 思ってます。
そして ほんとうに悲しくて辛いときには涙が出ない・気持ちをさらけ出せない
ってことも よくわかります。
時間が経ってひとりになったとき 急に涙が出たりすると思います。
その時は こころのまま 泣いてくださいね。
とにかく 今は いろいろと忙しくなると思いますので
落ち着いて ひとつひとつ いちにちいちにち ご無理せず
過ごしてください。
いつもこちらを気にかけてくださって、ありがとうございます。優しい気遣いと言葉にたくさん救われました。
泣いてくださったことにも、感謝いたします。
火葬が明日なので、本来なら、安置所の父のそばにいなければならないのですが、今朝がたに軽いめまいがしまして、昼近くまで眠っておりました。泣けないかわりに、心が休息を求めているようです。
こんな状態ですので、ゲームをやっても気持ち半分で楽しめなくて。無理やりクエストを一個ずつこなしていますが、皆さんよりずいぶん遅れを取っています^^;
今日は参加できませんが、もう少ししたら合流できると思います。皆さんは楽しんでくださいね。
お悔やみのお言葉、ありがとうございます。
ごめんなさい。この日記を読んで泣いてしまいました。
蒼雪さんが泣けずにいるというのに。
お父様は一瞬でも生きようと頑張ったのですね。
それでも家族に見守られながらで幸せだったと思います。
これからお忙しくなるでしょうから、お身体には気をつけて下さいね。
心からご冥福をお祈り申し上げます。
淡々と…そうですね、自分でも驚くほど冷静に様子を見ていました。
それでも、父の状態が悪化するたびに、体から力が抜ける感覚を味わいました。
こんな場所で悪口は言いたくないですが、わが街の市民病院の医師および医療体制は本当にダメです。
看護師さんの中には、大変親切な方もいて、それだけが救いでした。
末期とはいえ、場当たり的な治療しかされなかった父は、半ば見殺しにされたも同然なので、訴訟を起こしたいくらいです。
しかし、ともかくは、私や父が一番恐れていた、窒息による苦痛死はかろうじて免れたので、本当にそれだけでもよかったなと…。
安置している父は、とても穏やかな顔です。あとは私たち家族が、父の分まで生きないといけませんね。
涙、小出しににじみ出ては来るのですが、母や妹のように泣けません。この後の反動が自分でも心配です。
全部終わったら、泣けるんでしょうかね…。
お悔やみのお言葉、ありがとうございます。
親が死ぬとき、どういう言葉をかけていいか、ずっと考えていました。
ありがとう、という言葉を、もっと早く言うべきだったかもしれません。
でもそれを言ったら、父の死期を早めてしまいそうで、しかし、救いようがなくこのまま長引くなら、いっそ早く連れて行ってくださいと神様にお願いしていました。
私はまだ本当に実感が湧かないから、泣けないのかな…。
パミタンさんも同じようなご経験をされているのですね。ならば、私も後からどっと感情が来るのでしょう。
身内が欠けると、家が静かになりますね。親しい親族の近くに身を寄せるのも、良い方法と思います。
お悔やみのお言葉、ありがとうございます。
ここしばらく、お父様の病状や、ご自身、ご家族の様子を淡々と冷静に
記されている様子を、ただただ受け止め、勝手に見守るような気持ちで
読ませていただいていました。
本当に辛く苦しい気持ちの中、ご家族、ご親戚のみなさんで支え合い
最後までよく頑張られましたね。
お父様も回復の望みを捨てず、最期まで頑張られ、今はすべての痛みや
苦しみから解放されて楽になられたことと思います。
心からご冥福をお祈りいたします。
蒼雪さんには、まだいろいろな手続きなどが残っていて、ホッとする余裕は
ないのだろうと思います。そうやって気を張っている時はきっと悲しみもどこか
別の場所にあるのでしょう。
でも、後から襲ってくる喪失感が大きすぎるものにならないよう、りんごちゃんや
くり子ちゃんの前だけでも、少し心を楽にして癒してもらってください。
季節の変わり目でもありますから、どうぞお体を大切に。
私も母が逝く時 もう頑張らなくてもいいよゆっくりしてって言ったんですよ
そうしたらすーっと眠るように・・
すぐには泣けず気持ちが落ち着いて後からさみしさが来るんですよ
私 母がいなくなったのがきっかけで仕事辞めてUターン姉の近くに引越しと
大きな転機にw
蒼雪さん しばらくは色々大変でしょうが
お気を落とされることなくご自愛され 皆さんでしっかりとお父様送ってあげてください
只々 お父様のご冥福をお祈り申し上げております