Nicotto Town



楠木正成は怨霊となったのか? その13

楠木正成が大忠臣として評価されるのは、江戸時代水戸学によって見直されてからで、それまでは南朝の悪党のひとりでしかなかった。位が低いというのは名を残せないということで、水戸学と明治以降の皇国史観がなければ、湊川で足利尊氏に敗れた一武将だったに違いない。

後醍醐に対して、勝利をえるためのすばらしい献策を二度に渡って退けられ、50万とも言われる足利尊氏の軍を追討してこいと言われたのだ。坊門清忠は「今までも味方が少数のときも敵の大軍を打ち破ってきた。それは武略がすぐれていたわけではなく、聖運の天に通じたからだ」と「死ね」と言わんばかりに正成を送り出した。

ここで正成は「もはやこれまで」と後醍醐と公家たちを見限ったのではないか。

「軍神の血脈」高田崇史著によると。

”『多からぬ御方を、初度の軍に打たれなば、後日の軍に誰か力を合わせん。「良将は戦はずして勝つ」と申す事あり』ー
そして、またこうも言ってる。
『死すること武道ならば、誰か武芸を習はん』
とね。つまり、いかにして味方の被害を少なく抑えるかということが、正成の信念だったと思う。沢史生も、『兵を殺さぬ美学』が、正成にはあったのではないか、と言っているしね。つまり正成は、『葉隠』とは真逆の考え方を持っていた。ゆえに湊川の戦法は、それまでの正成からすると、全く有り得ない作戦だった。”

湊川は楠木一族の地盤に近いところで、戦上手の彼らにとってみれば敵が大軍であろうともいなしながら逃げようと思えばいつでも逃げられるところだった。

太平記にも
『されば、その勢次第に減じて、わづかに七十余騎にぞなりにける。この勢にても打ち破つて落ちば、落つべかりけるを』
とあって、自害の前でも落ちようと思えば落ちられたと書かれている。

それでも、正成は落ち延びる道ではなく、自害を選んだ。なぜなら、落ち延びて後醍醐のもとへ戻っても、また無理難題を押しつけられる。最良の策はダメだと言われる。そして勝っても天皇の徳だと言われる。天皇の後醍醐は世の中がまったくわかっていない自己中の人間だった。

だからこそ、正成は死んだことにして落ち延びた。尊氏との連携があったのか、それとも賭けたのか。尊氏は正成が南朝から北朝へ寝返ったとしても厚遇で迎えただる。赤松円心の功績を評価して室町幕府で四職として高い地位につけたように。

尊氏が正成の首を、正成の故郷に届けているように、楠木一族を根絶やしにする動きには出てはいない。正行は間違いなく強敵になり、平家にとっての頼朝にもなる存在だったのだが。おそらく尊氏は気にもしていなかったに違いない。正成が南朝を見限ったと知っているならね。

つづく。

アバター
2019/10/04 19:10
>ゆりかさん
こんばんは^^
楠木正成は悪党ではあるけれども、武士ではないから何度も死んだふりをして敵を欺く戦術は得意でした。
騎馬でまっすぐに突っ込むしかない鎌倉武士には数が違っていても負けることはなかったでしょう。

尊氏と正成は陣営こそ違っていても、味方を大切にして、戦いをできるならしないで、という考え方が似ています。事前の打ち合わせはなかったでしょうが、後醍醐の非道はよく知っていたでしょうから、正成自ら大森彦七の首を持って尊氏の前に出れば、見逃したと思います。

尊氏にとっては、南朝でもっとも怖いのが楠木正成なので、離脱してくれるのなら諸手をあげて歓迎でしょうね。のちのち、大森彦七に対して南朝と戦えとなんどか命令がでているのですが、大森彦七はほとんどなにもせず、尊氏も咎めてないのは不思議なところですね。

正成だから南朝とは戦いたくなかったのでしょうね。
アバター
2019/10/03 21:49
こんばんは、kiriさん。

その12から読ませて頂きました^^
楠木正成の最後には、そんな謎が隠されていたのですね。
確かに、一族もろとも自害したというのに、大森彦七が正成の首だけ献じたのは不思議です。

え?えぇΣ(・・)!
楠木正成と尊氏が、組んでいたのですか?!何のために?
大森彦七と入れ替わりって…予想もしなかった説です。

なるほど。
楠木正成は、この時すでに後醍醐天皇を見限っていたのですね。
自害したことにするしか、辞表も受理されないということでしょうか^^;
前回のお返事で教えて頂いた通り、後醍醐天皇がダメですね。

それにしても、正成と尊氏が連携していたとしたら…
尊氏にはどんなメリットがあったのでしょう?
それほど正成の能力を買っていて、味方に加えたかったのでしょうか??
だとしたら、こっそり名を変えて尊氏の参謀とかになってたら、面白いですね(さすがにそれはないかな^^;)

あ、でも大森彦七と入れ替わって伊予国の住人になるのでしたっけ。
次回も楽しみにしてます(*^^*)




Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.