Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


人は死ぬと愛だけになる

11日は父の月命日でした。


11日の午後、眠くて仮眠を摂ったのですが、妙な夢を見ました。
夢で見た家の近所は夕方のように薄暗く、何かに迷った初老の男性が、今は取り壊されてない家屋にいました。それは父ではありませんでしたが、場所の雰囲気からして、この世とあの世のはざまであったと思います。
犬の散歩で通りかかる見慣れたしげみには白い猫がいて、私を見下ろしていました。
私は猫を取ろうとしましたが、いけないことのような気がして、やめました。

こんな夢を見たので、父はまだ現世に心残りがあるのか、自分が死んだことを受け入れていないのかと思っていました。
その日の夜、父が成仏していないのではと、母と話をしました。亡くなった日から母も私も父を夢に見ないので、まだ天国へ行けていないんだろうと。
私は父の遺骨が安置してある祭壇に線香をあげて合掌し、言いました。
「お父さん、もう全部終わったから。もう苦しくないし、楽になっていいんだよ」
こういうのって、なんのてらいもなく言えてしまうものなんですね。

翌朝、一度目が覚めたあと、眠くてうとうとしていたら、こんな夢を見ました。
私と母は、昔住んでいた県営住宅の部屋にいました。私は床に座っている母に背を向けて立ち、何かをしていました。
するとふいに、背後から父の声が聞こえました。
ずっと夢に出てきてほしいと願っていたので、思わず「お父さん、いた?!」と叫んで振り向きました。
床にうつむき加減で座る母の左側に、父が、私の方を向いてあぐらをかいて座っていました。
黒いジャンパーを着て、白いズボンをはき、髪は黒く、30~40代くらいに若返っていました。がんでげっそりとやつれていた面影がなかったので、顔が横に伸びて見えました。
顔色は血の気がなく真っ白だったのですが、満面の笑みを浮かべていて、母の左肩に手を置いて、体を左右に揺らし、幸せそうに歌詞のない歌を歌っていました。
父が歌う声を始めて聞きました。
それまで薄暗かった壁は明るく白くなり、何かの白っぽい花がたくさん飾られていました。
「お父さん今いるよ」と夢の中の母に教えると、母は「手だけ出て見えた」と言ったところで目が覚めました。

ああ、父は成仏できたんだ。夢の中で、父が出た途端に明るくなった雰囲気を思い出して、納得しました。祖父が亡くなる時に見た夢で、同じような白い光と雰囲気だったからです。あれはたぶんあの世の、明るい方の光なんですね。

私はさっそく母に教えに行きました。アイロンをかけている母に、夢の内容を話すと、とても驚いていました。
「お母さんに、大丈夫だよ、ありがとうって伝えたかったんだよ」と言うと、喜んでいたようでした。
それからは、母の表情が少し明るくなったようです。

父が歌っていた姿は、愛そのものでした。
亡くなる前は、自分が病に倒れた運命や不運を嘆いていたようでしたが、死後1か月間、魂だけになって自分の会いたい人に会ったり、彼らを家に呼んだり、私たちが父の後処理などを手続きしているのを見守ったりして、だんだんと吹っ切れたのだと思います。
あと、普段酒を飲まない私の体を使って、モツ鍋とビールを飲んだりとか(笑)

そうやって未練をなくすと、あとは、残していった家族らへの愛情しか残らないのですね。
具体的な言葉を発することはなく、ただ、愛のかたまりになる。それが魂というものなのでしょう。

もっと長生きしてほしかった気持ちはありますが、父の死を通じて、たくさん大事なことを学んだ気がします。
改めて、ありがとう、お父さん。





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