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将門って本当はどんな人だったの? その14

天慶二年十二月十五日、上野国府で新皇に即位した平将門は、武蔵権守興世王が主催者となって新皇の宣旨として諸国の除目を勝手におこなった。

「物語の舞台を歩く 将門記」村上春樹著によると。
”下野守に将門の弟の平将頼を任命し、上野守に常羽御厩別当の多治経明、常陸介に藤原玄茂、上総介に武蔵権守興世王、安房守に文屋好立、相模守に平将文、伊豆守に平将武、下総守に平将為を任命した。こうして、諸国の受領を決定し、同時に、王城(皇居)を建てようとする議決を行なった。その記録文書には「皇居を下総国の亭(石井営所か)の南に建てよ。重ねて、檥橋をもって京の山崎にあて、相馬郡大井の津を京の大津となそう」とある。そこで、左右大臣、納言、参議、文武百官、六弁八史などをすべて決定し、内印(天皇の印)・外印(太政官の官印)を鋳造する寸法と古文・正字を定めた。ただし、暦博士だけは、決められなかった。”

*受領ー前任者から任国の施設・財産などの管理責任を受け継いだ諸国の長官。国司のなかで、現地の支配を行う最高責任者。登場は、守あるいは介を指す。平安時代のよく知られている受領に、『今昔物語集』に登場する信濃(現、長野県)守藤原陳忠や、任国の郡司・百姓らに暴政を意訴えられた尾張(現、愛知県)守藤原元命らがいる。
*納言ー納言とは、上への奏上と下への伝達を行う官で、大納言・中納言・少納言の総称。
*参議ー参議は、奈良時代に設けられた政策を議する官。令外の官。三位以上の者から任ぜられた。
*文武百官ー文武百官は、朝廷の文官と武官の総称。
*六弁八史ー六弁八史の六弁とは左右の大・中・小弁のことで、文書を受け、命令を下達する官。八史は、左右の大史、少史各2人のことで、文書を取り扱う官。
*古文・正字ー古文は、秦以来の古い文字、俗字に対して隷書をいう。正字は、俗字や略字に対する正しい体の字。
*暦博士ー暦博士とは、暦道を教え、暦をつくった教官のこと。

除目は諸司や諸国の官職を任命する儀式で天皇の専権事項で、もちろん勝手に他の人間が行なうことは重大犯罪にあたる。今でいうと、現政権に対して勝手に内閣を作り財務大臣や外務大臣を決めて、なおかつ政治を行なうことで、事実上国が分裂することになる。もちろん、朝廷がこの暴挙を許すはずもなく、都は大混乱に陥った。

つづく。





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