現在、コロナウイルスに感染しているかどうかの判断は、臨床所見もさることながらPCR検査法にゆだねられている。

PCR検査法の欠点は、検体採取時の感染リスクが大きく、予防対策が面倒な事。

判定に時間と手間がかかり、何処でも誰でもできるものではないので、検査数が限られる。

偽陽性と、偽陰性の問題（前回説明）はシミュレーションを東京都に実際の感染者が1万人とした場合、1000万人を検査すれば、本来の陽性7千人に対して偽陽性が10万人出現する可能性が考えられる。

このシミュレーションでは陽性判定者の中で、本当の感染者は1割に満たない。

医療現場は混乱に陥ってしまうことは容易に想像できる。

それだから、現在日本で行われている、感染疑いのある選択者に対しての検査実施は、ランダムに大人数の検査を行うよりは評価しても良いと考えられる。

但し、その為、現状では実際の感染者の把握は困難であり、その先の対策ができにくい。

そこで期待されているのが、簡便であり、症状が無くなった既感染者でも把握できる抗体検査である。

抗体検査は、キットさえあれば、何処の医療機関であっても、採血するだけで15分ぐらいあれば結果が出せる。

抗体は大まかに5種類あり、IgA、IgM、IgG、IgD、IgEが知られているが、主に局所免疫に関与するIgAとアレルギーに関与するIgE、役割が良く分かっていない IgDはこの際置いておいて、抗原を認知すると初期に現れるIgM、遅れて現れるIgGは獲得抗体として暫く体内に存在することになって、「○○に免疫がある。」と言われるのは○○に対応するIgGが存在するという事である。

さて、待ち望んだ新型コロナウイルスに対する抗体キットは、一回でIgM、IgG両方測定できることが期待される。

IgMが陽性であれば、最近感染の機会があった事になりウイルスが体内に存在している可能性を示す。一方IgGが陽性の場合はそのウイルスに対しての免疫を獲得している可能性を示す。

そこでIgM陽性、IgG陰性ならば、現在体内にウイルスが存在している可能性を示す。PCRよりも遥かに簡単で、短時間で判定ができる。

それと反対にIgM陰性で、IgG陽性の場合は、近くない以前にウイルス感染があって症状が治まっている、あるいは症状のない状態が続いている場合は、新型コロナウイルスでは確認されてないが、一般のウイルス感染では、体内のウイルスは無い（他人に感染させる可能性は無い）、さらに自らも、獲得した抗体により患者からうつされる可能性はほぼ無いと考えられる。

それを確認するには、IgG陽性者に対しPCR検査を行い陰性であることが確認されれば、一定数検査で後のPCR検査は不要になる。そうであれば抗体検査だけで感染者であるかどうかが判定できる。

そうなることを願っている。

と言うのは、IgG陽性で、PCRも陽性の場合が多く判定された場合であり、大変大きな問題を抱えることになる。

 

新型コロナウイルスの抗体検査法が確立されようとしているが、現状では無症状の抗体獲得者が必ずしもウイルス保有者ではないと言う保証が無い。

IgG抗体陽性者のほぼ全員がPCR陰性であれば、その懸念は晴れるだろうし、抗体陽性の医療従事者は感染症ユニットで患者と接するのに大げさな装備は必要なくなる。

更に、そうであれば（IgG抗体陽性者のほぼ全員がPCR陰性）ワクチンの開発は早いに違いない。

ワクチンが一般に適用できれば、このウイルスとの戦いに勝利宣言が下せることになる。

抗体で判定する場合の問題点は、ウインドウピリオドすなわち、感染エピソードがあってから抗体が検知できるまでのタイムラグ、IgMで一般に数日、IgGはおよそ2週間と一般に言われているが、今回のウイルスは発現が一般より長いような気がする。

だが、上記のようであれば、ウインドウピリオドなど大した問題ではないかもしれない。

ところが、

前出の、IgG陽性で、PCRも陽性の場合が多く判定された場合大変大きな問題と言うのは、抗体を獲得していることが持続感染者である証明になる可能性が大きい。

C型肝炎や、HIV（エイズ）などがこれに該当し、抗体陽性者は感染者と判断される。

それは、ウイルスのトランスフォーム（変異）が活発に行われるため獲得した抗体は変異したウイルスを鎮めることは出来ない。

その事はワクチンの完成を非常に難しくする。

現に前世紀に治療法の目途がついたHIV感染も、究極の予防策であるワクチンは研究を始めてから30年経った今でも目途が付いていない。

殆どの機関が絶望宣言の中で、まだあきらめずに頑張っている人たちもいる。

その人達・組織にはエールを送りたい。

それでも、HIVやC型肝炎ウイルスの感染力は大きくなく、知識を持って対策すれば感染を避けることができるので、通常の接触の中で感染を恐れることは殆ど必要ない。

それに対し、この度の新型コロナウイルスが抗体獲得でも持続感染である場合には、感染力が大きいので、通常の生活の中での防御は困難である。

最近の都市部での厳戒令のような状況で人々の接触を極限まで減らすことにより、爆発的感染は防ぐことが出来るかも知れない。

そして感染者が人口の過半数を超えたところから感染力は弱まっていく。

症状があって、入院の必要のある患者数を増やさないためには、感染伝播を遅くするのは懸命の様であるが、それだけ収束が遅くなると考えられる。

続く