Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


井上靖「氷壁」感想ネタバレあり・2

井上靖「氷壁」感想ネタバレあり・1 あらすじの続き

あまりに会社を休むので、常盤のはからいで嘱託として再就職した魚津。
暇になった時間を利用して、小坂の実家におくやみのあいさつに行ったり、美那子やかおると会ったりする。
小坂の遺体から見つかったザイルの再検証が行われた。切れたのはショックで伸び切って耐えられなかったという結論が出た。麻とナイロン、どちらが優れているかという論争には決着はつかず。どちらにも一長一短があるということ。

小坂やザイルの件を引き合いに魚津と会う美那子。魚津は、相手が人妻でなければくどくのにと思っていた。小坂の苦しみを自分も実感していた。
気持ちに区切りをつけるべく、美那子を呼び出して、好きだからこそ、もう会わないと告げる。氷壁を見せたいと言っていた小坂と同じ気持ちだと。
魚津から会いたいと言われて、誘われたら拒まない気持ちで浮かれていた美那子だが、魚津の愛の告白兼別れの言葉を、まだ望みがあると信じて喜ぶ。その後偶然にかおるに会う。かおるの若さに嫉妬する美那子、婚約者と思っていた魚津が美那子と会っていたという事実を知ってショックを受けるかおる。女同士の嫉妬の火花が散った。

かおるは魚津の自称婚約者として、魚津の下宿に勝手に押し掛け、さすがに魚津も引く。しかしかおるは、魚津の顔色を見て、嫌なら無理強いはしないという。美那子に惹かれているのも察していて、美那子が好きなら身を引くと泣きながら言う。
かおるは、「魚津を諦めるのがつらくて泣いているのではない、自分が兄のようにやりたいことをやって生きられないのがつらい」と言った。
その時、魚津はかおると結婚すべきだと悟った。同情ではなく、かおると結婚したいのだと言い、キスをする。もう美那子とは二度と会わないと自分に誓い、疑うかおるも、まだ魚津の心が美那子にあると知りながら、それでもかおるを愛そうと努力するのだと納得する。
魚津は、かおると一緒に山へ行こうと誘う。喜ぶかおる。
魚津が先に、穂高の難しいルートから登り、途中の山小屋で落ち合おうということになった。初めてのデートにはしゃぐかおる。一方魚津は、美那子への執着をこの山行でそぎ落とし、心機一転するための登山行であった。

魚津の穂高登山。途中までは順調だった。登りながら、魚津は落石の音を聞く。複数の大きな石が転がる、明らかに危険な音だった。普段なら引き返すところだが、かおるが待っていると思うと、急がねばならない気がした。
だが巨大な落石の音がして、さすがに危険を覚えた。引き返そうとしたとき、美那子のもとへ返るのだと思った。前へ進まなければならない、と魚津は思った。戻っても進んでも危険な状態なので、登ることを決め、前に進む魚津。大小の石が雨のように降り注いできた。

魚津との打ち合わせにはなかったが、一刻も早く魚津に会いたいかおるは、荷揚げの人と共に落ち合う予定の山小屋へ向かう。しかし予定の時間になっても魚津が来ないので、不審に思った。様子を知った山小屋の人々や居合わせた登山グループが探しに行った結果、魚津が落石に巻き込まれて死んだことを知る。
魚津は落石が脚に刺さり、出血多量で意識混濁し、亡くなっていた。彼自身が書き残したメモで、かおるはそれを知る。

魚津の死を知り、悲しむ常盤。美那子は生きがいを失い、もう恋をする気力もなくなった。かおるは、なぜか悲しまなかった。魚津の死によって、かえって魚津が身近に感じられ、今もずっと自分の方へ向かっているような気持ちになっていた。
遺品を整理したら、穂高に上ってケルンを作り、兄と魚津のピッケルをそこに差し込むと誓う。


以上、あらすじ。600ページを超える大作なので、あらすじと言いつつ長くなった。しかし、本の感想を書くために、自分でも内容を確認しなければならないので、この作業は大事である。
感想、考察は3に書くとする。







月別アーカイブ

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010


Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.