Nicotto Town



能力主義が平等になる理由 その5

グローバル化が進むと富裕層と貧困層の格差は大きくなっていく。

クリントン政権下で労働長官を務めたロバート・B・ライシュは1991年に発表した「ザ・ワーク・オブ・ネーションズ」の中で、アメリカの富の大部分は人口の2割に過ぎないシンボリック・アナリストのものになり、それ以外のインパースン・サービス、ルーティン・プロダクション・サービスとの断絶が起こって、格差社会が不可避であると発表した。

「残酷な世界を生き延びるたったひとつの方法」橘玲著によると。

”ルーティン・プロダクション・サービスというのは、製造業の労働者のことだ。工場に出かけて決められた仕事をするだけなら、世界じゅうどこでもできる。だから彼らは、グローバル化による企業の海外進出によってまたたくまに仕事を失っていく。
インパースン・サービスは、銀行の窓口係やブティックの売り子、飲食店の接客係のような対面で顧客サービスをするひとたちだ。こうした単純労働は移民でもすぐに習得できるので、内なる国際化によって既得権は失われてしまう。
ライシュの推計ではルーティン・プロダクション・サービスとインパースン・サービスに従事するアメリカ人は全労働人口の八割に及び、このひとたちは”ふたつの国際化”によって貧困層に転落していく。これは、移民国家アメリカが世界の縮図である以上、避けられない運命みたいなものだ。
しかしその一方で、グローバリゼーションはアメリカに富をもたらす。ハリウッドやディズニーランドが大成功したのは、世界共通のエンターテインメントを生み出したからだ。マイクロソフトやグーグルは、OSや検索のデファクトスタンダード(事実上の標準)を支配することで、わずか数年で世界有数の企業へと成長した。このような”奇跡”が可能になるのは、アメリカ(ローカル)での成功をそのまま世界(グローバル)に広げることができるからだ。
シンボリック・アナリストは「シンボル(象徴)を操作するひと」で、独創的なアイデアや技術、高度な知識をグローバル展開できる専門家や芸術家のことだ。でもこの名前はわかりにくいから、ここではもっとシンプルにクリエイティブクラスと呼ぶことにしよう。
冷戦以前は、アメリカのクリエイティブクラスは英語圏の一部だけでビジネスをしていた。ところが市場が地球規模に広がったことで、これまでと同じことをやっていても何倍も儲かるようになった。”

グローバリゼーションによってルーティン・プロダクション・サービスとインパースン・サービスの時給はどこの国に発注しても同じに近づいていく。保護主義で発注先を国内に限定することは、リベラルの考え方では差別的で認めることはできない。

どうすればよいかを考えたライシュは「教育」の重要性を主張した。すべてのアメリカ人がクリエイティブクラスを目指して、ルーティン・プロダクション・サービスとインパースン・サービスは貧困国の労働者に任せる方法だ。

だからこそ、先進国とされる国々ではすべての人が能力を伸ばしてクリエイティブクラスになれるように自己啓発が流行するようになった。






Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.